カタヤマヒロキのコラム「食べロック2」
■カタヤマヒロキ(Dudes、Lüstzöe)のコラム「食べロック2」
A級やB級といったカテゴリーを超え、食へこだわり、食べまくるロッカー、カタヤマヒロキがお送りする食のコラム「食べロック2」。ほぼ月1で「食」を投下!
●プロフィール:カタヤマヒロキ/ボーカリスト。Dudes、LüstZöe、地獄ヘルズ ボーカル担当。ラジオのDJも担当。Droogは無期限活動休止中。公式サイト:dudes-official.com/katayama
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第9回:「大森の布恒更科で“粋”な蕎麦」
2020.11.10 upload
「蕎麦屋で呑めるような大人になりたい」
呑兵衛の誰もが一度は思ったことがあるだろう。
蕎麦を利き、一献を酌み交わす。
なんて魅力的で魅惑のある響きだろう。
そう、ひと言でいうならば「粋」なのだ。
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自分も気が付けば29歳になっていた。
30歳を前に蕎麦屋で「粋」に呑んでみたい。
そんな願いが叶ったのは、大森にある「布恒更科(ぬのつねさらしな)」。
住宅街にひっそりと佇む老舗の蕎麦屋さん。
木造造りで、やや広めの店内と薄暗く落ち着いた電球。
BGMがかかっておらず、無音というのも蕎麦屋独自のゆったりとした時間を感じられて非常に心地よかった。
目の前にドンッ! と大人の階段が現れて、これからその階段を登ることに気分が高揚し、ブルッと身震いがした。
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連れて行ってくれた常連である東京の兄貴が席に座ると、
「瓶ビールと蕎麦味噌をください」
とさらっとオーダーをしてくれる。
瓶ビールと蕎麦味噌、そしてお通しである切り干しがやってきた。
瓶ビールもアサヒの“熟撰”。
切り干しも上品だし、蕎麦味噌もアルコールに合う完成された味だった。
ビールと蕎麦味噌の写真を撮ってないことからも自分がどれだけ高揚して動揺してたかが、わかる。
許してほしい。
次に、オーダーしたのは「煮かき」。
季節のメニューでこの時期になると登場するらしい。
甘辛く味付けされた煮かきは噛むたびに旨みが、あふれ出ていた。うますぎるよ……。
お次は「季節のおつまみ三種盛り合わせ」
右から「ほっき貝のぬた、小肌の酢締め、数の子」
酒を呑ませる粋なおつまみ。ちびちびやるのに最適。この辺からビールから日本酒に。澤の井を常温でいただいた。
大人の階段を恐る恐るも登りつつある、その時。
「これが旨いのよ……」と常連である兄貴にとあるメニューを指差された。
「し、島…くわ焼き?……」
「…………鳥だよ……」
ズコーッ。登りかけていた階段から地下50階くらいに急降下した。とほほ。
島ならぬ「鳥くわ焼き」
この照りを見てほしい。
『もきゅ……もきゅ……もきゅ……』
抜群の弾力で、まるで一夜干しであるかのような味の凝縮具合。
すだちと山椒をかけると、爽やかな風が吹く。
つまみの種類が豊富で、日本酒がくいくい進む。味付けも全てがちょうど良かった。
極め付けはこちらも季節のメニュー「白子の天ぷら」
サクッ、トロ~……
ふふふ、と思わず笑いが出た。
本当は「うっ……んまっ!!」と叫びたかったが、周りを見ると品のある落ち着いた方々しかおらず、我慢した。
最後は蕎麦で〆る。
蕎麦屋で長居をしすぎるのも不粋ということなのだろう。
もり蕎麦はキュッと締まっていて、コシがあり、みずみずしかった。
ツユは味がしっかりとしているので、じゃぶじゃぶとはつけない。刺身のようにちょんちょんと少しだけつけて一気に啜るのだと。至福の時間とはこのこと。
最後に蕎麦湯も飲み干して、ごちそうさまでした。
こころなしか肌ツヤも良くなった気がした。
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美味しさのオンパレードが過ぎ去り、脳がぼーっとしてるなか考えた。
「こういうお店って食べれば食べるほど更に舌と味が近づいてって、どんどんと美味しいレベルが上がっていくタイプのお店なんだろうなあ」
そう思いながら、また来ようと誓ったのであった。
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口に入れた瞬間BGM
ザ・フラテリス「Six Days in june」
(2021年4月9日リリースのアルバム『Half Drunk Under A Full Moon』からの先行シングル)
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©2020 DONUT
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