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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Singer/Songwriter)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/北海道札幌市生まれ。2009年に結成したバンド「Drop’s」のボーカルとして活動し、5枚のフルアルバム、4枚のミニアルバムをリリース。2021年10月にDrop’sの活動を休止後、現在はシンガー、ソングライターとして活動。ギター弾き語り、ベースを弾きながらのサポートピアノとのデュオ編成やドラムを加えてのトリオ編成など、様々な形態で積極的にライブ活動を行なっている。
●公式サイト:https://nakanomiho.tumblr.com
●中野ミホYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCjvQfnXVg6hTd8C8D6PSQGQ

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第38回「おいしさの秘密は、あったかいハートにある。ウォンカとチョコレート工場のはじまり」

2023.12.14 upload

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(2023年:アメリカ、イギリス)
監督:ポール・キング
脚本:サイモン・ファーナビー/ポール・キング
原作:ロアルド・ダール
キャスト:ティモシー・シャラメ/ヒュー・グラント/オリビア・コールマン/サリー・ホーキンス/ローワン・アトキンソン ほか
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/wonka/index.html
全国順次公開中


みなさん、こんにちはー。お元気ですか?
あっという間に師走……きゃー。信じられん……。

ですが年末年始は集中して映画を観るチャンス!と毎年楽しみ。
今月も観たいものがたくさんあるのですが、その中でもまずはこちらを観に行ってきました。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』(原題:『Wonka』)
2023年、アメリカ・イギリス・カナダの合作。
監督はポール・キング、出演はティモシー・シャラメ、ヒュー・グラント、オリヴィア・コールマン、ローワン・アトキンソンなど。

人びとを幸せにする「魔法のチョコレート」を作り出すチョコ職人のウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ)は、亡き母と約束した世界一のチョコレート店を開くという夢をかなえるため、一流のチョコ職人が集まるチョコレートの街へやってきます。ウォンカのチョコレートはまたたく間に評判となりますが、町を牛耳る「チョコレート組合」からは、その才能を妬まれ目をつけられてしまいます。
さらに、とある因縁からウォンカのチョコレートを盗もうとするウンパルンパというオレンジ色の小さな紳士も現れ、ややこしい事態に。
そんな中でも宿屋で働く仲間たちとともに、夢をかなえるため、みんなをハッピーにするために奮闘する若き日のウォンカの物語です。

いやーとにかく、チョコが食べたくなりました!
映画館を出て即、目の前にあったGODIVAにインしてしまいました。笑

まず、前日に私は2005年の『チャーリーとチョコレート工場』を観直してから行ったのですが、これはもう全くの別物でした。
あのジョニー・デップとティム・バートンの世界観を前提にして観てしまうと、あれ……ってなっちゃうかもなので、観ていない方はまずはそのまま行ってもいいかもです!笑

とはいえシャラメ版のウィリー・ウォンカももちろんとっても魅力的でした。
ジョニー・デップ版のような毒気や狂気はなく、純粋でキラキラしていたけど、それはそれでよかった。笑 前日譚なのかと思っていたけど設定もどうやら違うみたいだし、完全に別物として新たに楽しむのが正解かもです。

物語の舞台は明確には語られませんが、20世紀前半のイギリスのような感じなのかな。
序盤から街並みや、人々の服装がとても素敵でワクワク!
こんなテーマパークがあったら行きたいな。
ウォンカはどの衣装も首巻きがエレガントで印象的でした。

あとこの作品はミュージカル映画でもあって、みんなけっこう歌います。
ティモシー・シャラメの歌声は『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(2019年)で初めて聴いて、なんか切なくてめっちゃいいなぁ……と大好きだったのですが、今作では本格的に歌っていておぉぉとなりました。相変わらずとてもいい声です。
ヒュー・グラントがまさかのウンパルンパに扮していたり、Mr.ビーンのローワン・アトキンソンが神父役だったり、英国ベテラン俳優陣の中にシャラメさんがいるのは個人的にはとても新鮮でグッドでした!

物語はウォンカが自分のチョコレートを広めるために街にやってくるところから始まるのですが、最初の歌でいきなり色んなことでお金がなくなり(靴みがきの子どもに払ったり、貧しい親子に恵んだり、落とした野菜を弁償したり……など)まさかの一文なしになっててえっキビシーってなりました。笑 そして安くて親切な宿に案内してもらったと思ったら、そこは超ぼったくりシステムで、払えないなら一生ここで働け! というこれまたひどい仕打ち……。
(宿の女主人役がオリヴィア・コールマン! このひとは何をやってもハマっていてすごい……)
ですが同じく騙されてそこで働いている仲間たちがとても愉快で頼もしく、彼らの協力を得てウォンカはチョコを売ろうとするわけです。

他にも警察や教会もチョコレート組合に買収されているし(賄賂はチョコだけど)、その組合のやり方が結構えげつなくて、なかなかハードな現実が立ちはだかっていたのがよかったです。
宿屋で働くヌードル(ケイラ・レーン)はとても現実的で、「貧乏人はどうせ救われない」と言うようなことを口にします。
でもウォンカの作り出すチョコレートとその情熱に、少しずつ心を開いていくのがかわいかったなぁ。

彼の作るチョコレートを食べた人たちの様子がとても好きでした。
空を飛んでしまいそうになるような、うっとりするほど美味しいお菓子、とりわけチョコレートはやっぱり大人になっても特別だよなぁと改めて感じました。
買収されちゃう甘党の警察署長や神父の気持ちも痛いほどわかる。笑

そしてチョコレートを作る時の魔術?もなんだか素敵。
空を飛んじゃう「ホバーチョコ」の塩キャラメルの味は「ロシアのピエロの涙」。
初めてヌードルにあげるチョコ「ひとすじの光」には「雷雲と太陽のしずく」が入ってるそう。
そんな繊細で複雑なイメージで生み出されるチョコレートはきっと素晴らしいんだろうな。

チョコ作りに必要なキリンのミルクを調達するために、ヌードルと二人で真夜中の動物園に侵入するシーンがとてもロマンチックでした。
走って、広がっていくような映像と音楽、光にうっとり。

最初は『チャーリーとチョコレート工場』のイメージが頭にあったので正直ちょっと入り込めなかったのですが、途中からウォンカのキラキラ具合と何があっても楽しく、工夫してチョコを売る姿に笑みがこぼれておりました。そして最後の投げキッスには泣けた……。
チョコを分け合うところは『チャーリーと〜』とも繋がっていて嬉しかったな。

原作のロアルド・ダール、他の物語はウェス・アンダーソンも映画化しているし、読んでみたいなと思いました。1971年の『夢のチョコレート工場』も観なくては!

絶対にチョコが食べたくなること必至の、甘くて、なにげに苦くて、でもとってもキラキラの作品でした。 現実の厳しさが割とリアルだったところがさらに好印象。笑
ぜひクリスマス気分で観に行ってみてくださいね。

ではまた。良いお年を〜。


© 2023 DONUT



中野ミホ「Breath」インタビューを掲載

INFORMATION


配信シングル「TAPES」
2023年3月29日(水)リリース
収録曲:01.国境/02.Turn



1stEP『Breath』
2022年8月17日(水)リリース
収録曲:01.My friend/02.不思議なぼくら/03.電源/04.Good morning to you/05.ハウ・アー・ユー/06.Mabataki
販売サイト:https://nakanomihoshop.stores.jp/

■ ライブ、イベントの最新情報は公式サイトをご確認ください。
https://nakanomiho.tumblr.com

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