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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Singer/Songwriter)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/北海道札幌市生まれ。2009年に結成したバンド「Drop’s」のボーカルとして活動し、5枚のフルアルバム、4枚のミニアルバムをリリース。2021年10月にDrop’sの活動を休止後、現在はシンガー、ソングライターとして活動。ギター弾き語り、ベースを弾きながらのサポートピアノとのデュオ編成やドラムを加えてのトリオ編成など、様々な形態で積極的にライブ活動を行なっている。
●公式サイト:https://nakanomiho.tumblr.com
●中野ミホYouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCjvQfnXVg6hTd8C8D6PSQGQ

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第33回「愛がくるしくても、捨てられなかった日記。僕の巡査」

2023.04.25 upload

『僕の巡査』(2022年 イギリス・アメリカ合作)
原題:My Policeman
監督:マイケル・ グランデージ
原作:ベサン・ロバーツ
脚本:ロン・ナイスワーナー
キャスト:ハリー・スタイルズ/エマ・コリン/デビッド・ドーソン ほか
※Amazon Prime Videoにて配信


みなさん、こんにちは。
4月も終わりに近づいてますね。新生活など慣れてきましたか?
といいつつ年度というものに全く縁のない生活なので、4月のドキドキ感が懐かしかったりします。

さて、突然ですが先日ハリー・スタイルズの来日公演に行ってきました!
楽曲やミュージックビデオが大好きでよく聴いていたのですが、初めて生で観る彼はやはり、スーパースター!でした……。
すごくキュートでファンへの愛に溢れていて、素敵な人柄が伝わってきましたー。
時に爆発的でアグレッシブなパフォーマンス、そしてバンドの演奏も最高!
踊りまくったのでした。

そんなハリーの俳優としての主演作品がAmazon Primeにあり、とっても良さそうだったので観てみました。多才だなぁ……。

『僕の巡査』(『My Policeman』)
2022年、イギリス・アメリカの合作。
監督はマイケル・ グランデージ、主演はハリー・スタイルズ、エマ・コリン、デビッド・ドーソン。

舞台は1950年代、ロンドン近郊の海辺の街。
警察官のトム(ハリー・スタイルズ)は、恋人である教師のマリオン(エマ・コリン)と幸せな生活を送っていました。ですが彼には世間には言えないもう一人の恋人、美術館のキュレーターであるパトリック(デビッド・ドーソン)との関係が……。
同性愛が違法とされていた時代に、三人それぞれの愛と葛藤がその後40年に渡って続く様子を描いた作品です。

うー、なんとなく予想はしていましたが、やっぱり切なかったです……じんわりと良かった。40年ってすごい。

まず、60年とか70年くらい前に同性愛が違法だったなんて。
好きな人を好きなだけで罪人として扱われ、暴力を受けるなんて、どんなに辛いことだろう。
トムのようになんとかうまくやろうとする人もいれば、パトリックのような生き方をした人もいたんだろうな。
どちらもそれぞれの苦しさがあって、救われない……。

二人の出会いの美術館でのシーンがとても印象的でした。
荒波の中の船を描いた絵の前で、何を感じたか、その中を泳ぐときのような力強さ、胸が躍る、でも怖くもある、というような言葉を交わすのですが、その言葉や視線が二人のこれからを予感させるようでドキドキ……。
最初にパトリックの部屋に絵のモデルをしにいく前のトムの表情もなんとも言えずぐっときます。

トムが結婚するということをパトリックに告げるシーンも切なかったなぁ。
公に結ばれてはいけないからこそ、感情を荒々しくぶつけ合うような。
『ブロークバック・マウンテン』に通じるものも感じました。

そしてトムの妻マリオンの存在。
トムはパトリックのことを愛していたけれどマリオンのことも大切に思っていて、失いたくないと言います。
パトリックが逮捕された後、彼女に彼のことを愛していたのか聞かれた時の、間があってからの「君を愛してる」というところの苦しさよ……。半分は嘘で半分は本当というか。
一言ではとても言い表せない感情が伝わってきます。
マリオンも彼らのことを知ってからも共に生き続ける選択をしたのは本当にすごい。
もし自分だったら、もしこんな時代に生きていたら、どうしただろうと思うと胸が痛いです。

そんなかなり重厚な物語だったのですが、イギリスの田舎町の風景がとても美しくて少し心が安らぎます。
物語のキーになる海。トムとマリオンが暮らす森の中の家。若き日の三人が出かけた丘の上。
自然はいつの時代でも静かに三人を見守っている感じ。

もちろん50年代の街並みや車、衣装もとても素敵でしたー。
それぞれのキャラクターに合った色づかいが良かったなぁ。
マリオンの瞳の色にとてもよく似合っている緑色の洋服が特に印象的でした。
昔も、そして最後に一人で旅立つ時も緑のジャケット。彼女の唯一のアイデンティティのような。
ラスト、彼女がタクシーから手を出して風を感じるところ。その表情が忘れられません。
40年経ってようやく自分のためだけに生き始めたような、解放されたような表情。
なんとも切ないけど、幸せになってほしい……。

誰も悪くないし、それぞれが辛いんだけど、マリオンの「二人の中を裂いたことを後悔するのに一生を費やしてしまった」という言葉は重かったな……。
愛すること、結婚すること、幸せって一体なんなんだろうと考えてしまいます。

今でこそ少し寛容な世の中にはなっているけれど、そういう歴史があったこと、どこかに本当に三人のような人生があったこと、ずしりと刺さりました。

Amazon Primeで観られますのでよければぜひ観てみてください。
もちろんハリー氏の魅力も存分に味わえます(ハート)。

それではまた!
(写真はハリーのライブに一緒に行った、ギタリスト荒谷さんとわたしのハイテンションな様子です……関係なさすぎてすみません)


© 2023 DONUT



中野ミホ「Breath」インタビューを掲載

LIVE INFORMATION


ワンマンライブ「たてがみ」
2023年4月28日(金)三軒茶屋 GrapeFruitMoon
open 19:15/start 19:45
Adv ¥3,500/Door ¥4,000(+1d)
入場チケット予約URL:https://tiget.net/events/233354

■ ライブ、イベントの最新情報は公式サイトをご確認ください。
https://nakanomiho.tumblr.com

INFORMATION


配信シングル「TAPES」
2023年3月29日(水)リリース
収録曲:01.国境/02.Turn



1stEP『Breath』
2022年8月17日(水)リリース
収録曲:01.My friend/02.不思議なぼくら/03.電源/04.Good morning to you/05.ハウ・アー・ユー/06.Mabataki
販売サイト:https://nakanomihoshop.stores.jp/

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