DONUT

SHERBETS
少々頭悪くてもだめなとこがあってもいいんだわ、ただ純粋さがないとだめなんだよね
――浅井健一

前身バンドSHERBETを経て1998年に結成。メンバーは浅井健一(vo>)、福士久美子(key&cho)、仲田憲市(ba)、外村公敏(dr)。浅井がBLANKEY JET CITY活動中に始動したこのバンドは、激しくも繊細な情感に光を灯しながら、見たことのない色彩を音楽で描いてきた。活動期、冬眠期、そして解散発表後すぐの撤回という出来事を乗り越え、今年は結成20周年。10月24日にリリースしたベスト・アルバム『8色目の虹』には、いくつもの季節を過ごしながら4人が起こしてきたミラクルが詰まっている。その物語を浅井と福士に訊いた。ここでは、DONUT FREE 13に掲載したインタビューの完全版をお届けします。

―― まずは20周年おめでとうございます。SHERBETSは活動期、冬眠期、一時期は解散発表してすぐ撤回、というようなこともありましたが、20年経ったからこそ思うことなどありますか?

浅井健一 いつの日かこういうときがくるなとは思ってたんだけど、みんなで始めた頃はたぶんそんなこと考えずにやっとって。でも、いつの間にか歳はとるから。50代とか60代に突入した頃には何をやってるのかなっていうのは、漠然とは頭のどっかで思っとったけどね。

福士久美子 私は何十周年とかあまり考えてなかったんだけど、人に言われてそうか、20周年なんだな。20周年ってすごいなと思って。一生懸命やってたことがたまたま20年続いていて。続けるってすごいな、という印象かな。

浅井 うん。何回も言ってるけど、みんなで集まって曲作りし始めると、何でか知らんけど「おおっ」っていう曲ができあがる連続だった。いつまでこれが続くんだろうな、ずっと続けばいいな、って思っとった覚えはあるね。河口湖でいつもレコーディングしてたんだけど、スタジオの近くにレストランがあって、毎回そこに行ってたんだよね。で、初日にそこで夕食を食べるとレコーディングが成功するっていうジンクスがあって(笑)。それをよく覚えてる。でもその河口湖スタジオもなくなってしまって。

―― なくなったんですか?

浅井 なくなったんだよね。だからバンドは続いてるんだけどスタジオがなくなっちゃった。時代が変わったって証拠だよね。

―― よく合宿に行かれてたスタジオですよね。

浅井 うん。それこそ今回の限定盤に入ってるDVDにその河口湖スタジオも出てくるけど。夢のようにきれいな場所でさ。なくなってから何年か前に、その場所に行ってみたんだよね。

福士 どうなってた?

浅井 でっかい白い建物が二つあったじゃん? それも全くなくて草原になっとって。駐車場のど真ん中に1本、木が立ってたの覚えてる? その木だけが残ってた。なんとも言えん感じだったよ。

―― そこは偶然通りかかったんですか?

浅井 ううん。見に行ったんだわ。

―― 木だけでも残ってると聞くと、少し安心しますね。

浅井 いや、逆にさみしい感じ。感慨深いというか。過ぎ去りし日々を思い浮かべる感じで。

福士 なくなっちゃったんだ……。

浅井 ああいう大きいスタジオはなくなっていってるよね。逆にSTUDIO HIPPO(福士が運営するレコーディングスタジオ)は最近、流行ってない?

福士 すいません(笑)。

浅井 今は規模が小さいスタジオがいいのかもね。

福士 使いやすいのかもね。大きいところは予算もかかるから。あと今はプロトゥールスにもなってるから、大きい卓がなくてもいろんなことができちゃう。

―― 音楽の作り方の時代性もありますね。

福士 前は大きいコンソールで、規模が大きかった。今もそういうところはあるけど。でもあの時代はよかったよね。富士山が近すぎるくらいのところにあって。気分転換もできて、外に出ると緑があって、気がいいというか。あの頃は毎日レコーディングして、終わったら自分たちで「かっこいいよね」とか言いながら朝まで飲んで。次の日もあるのに、どうして毎晩そんなに飲むんだろうってくらい(笑)。

浅井 一番いい時代だった。今もだけど。

福士 みんなで「最高だね」とか言って。

浅井 「俺んたちってすごいね」って朝まで自画自賛して(笑)。

―― いろんなものがなくなったり変わったりしていくなかで、バンドが続くことって奇跡ですね。

福士 今は30周年とか40周年とかのバンドもよく聞くけど、やっぱり続くものはすごいなあと思う。

―― SHERBETSもいろいろな時期がありましたが、今があるのは、やっぱり4人の関係性が深く築けているからこそなのかな、と。

浅井 やっぱり才能のある人って難しかったりするんだよね。きっと。ビートルズとかでも、バンドの中でいろんな問題が起こったりしてたでしょう? いい音楽が飛び出てくるバンドって、そういう側面があったりするから、普通のよくある話だよね。特別なことじゃなくて、その都度、乗り越えていく。乗り越えられるか乗り越えられないか。そういうことだと思うよ。

―― 気づいたら20年だった、ということなんですね。

浅井 うん。ベスト盤を出すにあたって今までの曲を改めて聴いたんだけど、相当の数の曲があるなと思って。20年続けられたのは、いい曲をずっと作ってこられたからだと思うよ。いっとき、もうミラクル、奇跡が起こらなくなったのかなって感じたときがあって。それがちょうど解散騒動があった『FREE』のときかな?

―― そうですね。

浅井 『FREE』を作ってるときに、「今までずっと続いてきたけど、とうとうここで、かっこいいのができなくなり始めてるのかな」って感じたんだよね。でも実際いいアルバムになったし、あそこで踏みとどまって、あの後も3作できた。で、今回のベスト盤は初期・中期・後期に分かれてるんだけど、後期のが一番好きなんだよね。最近作った曲たちが好き。そう思えるのがすごいと思った。

―― 今回のベスト盤を初期・中期・後期の3枚組にしようというアイデアはどこから?

浅井 俺からかな? 最初、限定盤は2枚組で通常盤を1枚にしようって話になってたんだけど、冷静に聴き直してみたら「これは2枚にはおさまらんわ」ってなって。で、思いついたアイデア。

―― 選曲はどうやって決めたんですか?

浅井 みんなで意見を出し合って、最終的には俺が判断して。

―― みんなからセレクトを募ったんですね。

浅井 うん。

―― 福士さん、20年分を聴き直していかがでしたか?

福士 いろんな時代があったなあって。だんだん変化していることもあるし、成長していることもあるし。でも良さっていろいろあるから、その時々を一生懸命やれたことがよかったんだと思う。時々、若気の至りで後悔することってあるんだけど、古い曲を聴いても新しい曲を聴いても、それを超えて「よかったな」って思えたからマルかな? 20年、ベストを尽くしてこれたと思う。思い出もいっぱいありすぎるから、どの曲を選ぶかは人によって違うんだろうけど。

―― 選曲は大変だったかと思いますが、最終的な判断基準はどこにあったのでしょうか?

浅井 流れと思い入れとバランスだよね。

―― ベスト盤というと、発表年順に曲を並べるパターンもありますが、あえて曲順をバラバラにしたのは?

浅井 そういう風に並べてたときもあったんだけど、聴きづらいことがあって。同じ感じが続いちゃうというか。だからそれよりも1枚の流れで聴くときに、入ってきやすいようにしたんだよね。

―― この流れがすごくいいですね。

浅井 いいよね。

―― 1枚ずつ、新しいアルバムのように聴くことができるというか。

浅井 それは一番いいかも。

―― 曲順もかなり練られたんですか?

浅井 通常盤は「Michelle」始まりだもんね。

―― 意表を突かれました。限定盤と通常盤に、新曲が1曲ずつ入っていますが、久々のレコーディングはいかがでしたか?

浅井 いつもと同じくやれてよかったよ。アルバムを作りたくなったよね。

―― 新曲の「愛が起きてる」は<Across the Universe>という歌詞から始まって、もう1曲の新曲は「Yesterday」というタイトルで。

浅井 あ、ビートルズだね(笑)。いま気がついた。

―― 今回ベスト盤を通して聴いてみて、ビートルズのように普遍性のある音楽という部分で、通じるところがあるなと思いました。

浅井 それは嬉しい。たまたま一緒だったね。

―― 新曲には新しい感じもして。

浅井 「愛が起きてる」? そうだよね。「Yesterday」はちょっと落ち着いた感じだと思うんだけど。

―― 限定盤のDVDもヒストリーがあっていいですね。

浅井 いいよね、あれ。始まり方もかっこいいよね。

―― 新しいファンの人たちにはバンドのヒストリーが伝わって、ずっとファンの人たちには、一緒に20年を辿るような感じがありました。最後に「A BABY」が流れるのもいいですね。

福士 いいよね。

浅井 いい曲たくさんあるね。

―― 初期、中期、後期、それぞれの時期で思い出深いエピソードがあれば教えていただけますか?

福士 いろんな場面が思い浮かぶけど、初期の頃はサンフランシスコに行ったり。

浅井 「HIGH SCHOOL」「アンドロイドルーシー」あたりはサンフランシスコかな。

―― SHERBETSの初ライブはサンフランシスコでしたっけ?

浅井 そう。やっぱりそれぞれの歌のレコーディングスタジオは、頭にポンと浮かんでくるね。「38 Special」は新大久保のフリーダムスタジオだった。あそこももうないんだよね。

福士 あと「三輪バギー」のPVで三輪バギーを運転したよね。

浅井 「三輪バギー」も「グレープジュース」も福ちゃん(福士昌明/映像)だね。「グレープジュース」は霧ヶ峰に行って撮ったんだけど、かっこいいよね。

福士 「HIGH SCHOOL」はベンジーと高尾くん(高尾知之)で作ったよね。あのPV、ベンジーがめちゃくちゃかっこよくて。

浅井 俺が監督で高尾くんにいろいろ助けてもらった。あの映像の場所、六本木の中国大使館跡地なんだよね。スージーっていうクレイジーなダンサーに出てもらって。

福士 最近、全然会ってないね。

浅井 何やっとんだろうね、あの人。

―― 中期はいかがでしょう?

浅井 「わらのバッグ」の撮影で千葉に行って……面白かったね(笑)。

福士 笑い話があったんだけど、それを言ったら怒られるから。私、たいがいのこと忘れてるんだけど、いま思い出しちゃった(笑)。あと『Natural』のアルバムのレコーディングで、ベンジーが40度近い高熱で。

浅井 そうだ。俺うなされとって、熱あったんだけどレコーディングはやったんだわ。そんときに「Baby Revolution」とか歌ってて。

福士 普通の人だったら寝込んでるのに、ベンジー、弾いて歌うの。

浅井 途中で点滴打ちに行ったよ。

福士 そう、普通は絶対に起きられないような状態なのに、自分の分を録ったら少し休んで、また録って休んで、みたいな。

浅井 最終的にすごくいい音源が録れて、最終日に「やったね! 頑張ったよね!」みたいな感じで、でも俺はもう疲れたから部屋で寝とって。そのときのエンジニアが中野っていう、酔っ払うと声が裏返ってノリのいい人で。で、夜中じゅう部屋の向こうから大騒ぎしてるのが聴こえてくるんだよね。「Baby Revolution」とかを流して「この歌詞はないよなー」みたいなことを言ってるのが聞こえてきてさ、俺あったまきて「お前らうるせえんだ」って怒鳴り込んでった覚えがある(笑)。

福士 あの曲でエンジニアが踊るの。ニコニコして踊るのが面白くて(笑)。動画に撮っておけばよかったな。

―― 「Baby Revolution」は、赤ちゃんがハイハイしているイメージが浮かびますもんね。

浅井 あれは名作だもん。演奏もすごくいいんだよね。

福士 『Natural』のアルバムは、そういう意味では本当に奇跡みたい。出来上がって後から聴いたら、あまり派手じゃないけど、そうとうな名盤かなって思った。人間、元気だと頑張りすぎることができるんだけど、ある程度元気じゃないときって、頑張ろうとしても力が入らない。でも頑張る気持ちはいっぱいあって。そういうバランスがうまく出たんじゃないかな。これは私の勝手な見解だけど、元気すぎなくてもいいときもあるのかなって。

浅井 気分的にはすごい暗かったんだよね。暗かったから、暗い曲に嘘がないというか。

―― そんな状況だったんですね。

浅井 うん。曲に合ってるかも。

福士 新しい心持ちの、いいパターンだったかも。結果としてはすごくよかった。ミックスもよかったしマスタリングも合ってたし。全部が奇跡的に神様が助けてくれた、くらいのアルバムになったと思う。

浅井 『MAD DISCO』のレコーディングでは、また『Natural』と同じベルボトムスタジオに行ったんだけど、そしたら福士さんの部屋にかまどうまが出たんだよね。「ギャー!」ってすごい声が聞こえてきて。

―― かまどうまってどんな虫でしたっけ?

浅井 かまどうま知らん? ぞっとする形しとるんだわ。

福士 バッタみたいな形してるよね。

浅井 バッタのようなクモのような。調べてみたら「うぅっ」ってなると思うよ。それが布団のあたりで消えたって言うから、布団を表まで持って行ってさ、外でバンバンはたいて。

福士 それでどうしたんだっけ?

浅井 もういないってとこまではたいて、寝たんじゃない?

福士 そうだっけ。出てきても絶対に触れないように潜って寝たのかも。

―― どうなったか結果がわかってないとビクビクしますね。では後期のエピソードは?

浅井 後期からSTUDIO HIPPOの音源が入ってくるね。STUDIO HIPPOと言えば中村くんていうエンジニアがおって。よし録るぞっていうときに俺たちが「よろしくお願いします」って言うじゃん。そうしたらトークバックで中村くんが「それではお願いしま〜〜〜す」って、長いんだわ(笑)。「行きま〜〜〜す」とか、毎回言葉の最後が長いもんだから「何も言わなくていい」って伝えた。

福士 そうそう(笑)。

浅井 俺が「回してください」って言ったら、何も言わずにそのまま回してくれればいいから、って(笑)。

―― 浅井さん、そういう口癖を見つけるの得意ですよね(笑)。

浅井 すごいのんびりしとるんだわ、その人。だから「よし行くぞ!」っていう気持ちのときにのんびりエッセンスが入っちゃうと、なんか違う方向に行っちゃいそうな気がして怖いんだわ。

福士 モードが変わる(笑)。自分のテンポがあるのに。

―― キリッと行きたいのに(笑)。

浅井 そう、キリッとしたまま行こう(笑)!

―― 後期は最近の作品ですね。

浅井 「これ以上言ってはいけない」は、深沼くん(深沼元昭)がエンジニアをやってるね。「LADY NEDY」とか「COWBOY」とか「Crashed Sedan Drive」「ひょっとして」「愛が起きてる」は中村くんだね。

―― 新曲はSTUDIO HIPPOで録音したんですね。

浅井 うん。ちなみに外村くん(外村公敏/dr)は「Another World」と「Michelle」が一番好きだって言ってた。

福士 へえー。「Another World」なんだ。

浅井 この間言ってた。20周年祝いをやろうと思ったけど、福士さんがおらんかったときに。

福士 だって、急に朝「今日、20thアニバーサリーパーティをやるから来てね」って連絡があって。

―― “今日”ですか!?

福士 そう、そんな題名のパーティを“今日”言われても(笑)。空いてればもちろん行くけど。

浅井 あのとき、まだ酔っ払ってたんだよね。朝まで飲んでて。そんですーごい空がきれいだったから、今日みんなで鉄板焼きやったらいいんじゃないかなとか思って。

福士 うん、まあいい日だったよね、たしかに。

浅井 だから仲田先輩(仲田憲市/ba)の快気祝いにしておいた。

―― ライブの思い出はいかがですか? 極寒の屋上ライブなどもありましたよね。

浅井 あれは印象に残ってるね。

福士 あれは、できればもうやりたくないなってくらい寒くて。でもその分、印象には残ったな。

浅井 やる方も観る方も、心に残ることをやろうっていう発想だからね。

―― あ、そういう元があったんですね。

浅井 そう。堀くん(マネージャー)が言い出して。やっぱり残ってるよね。まあ、他にもありすぎるけどね。

福士 なんか過去を振り返るとけっこう笑っちゃうというか。めちゃくちゃすぎてなんかすごいよな、みたいな。

―― でも、笑えると思えるのはいいですね。

福士 そうだね。笑えてよかった。なんか、初期の頃はすごい飲んでたりもして。今思えば、あれもベストを尽くしてたのかなという感じ。飲むのにもベストを尽くしてたよね(笑)。

浅井 ああ、そうだね(笑)。

福士 全て燃え尽きるくらいな感じだったかな。

浅井 俺は今は、ライブの前の日は絶対に飲まない。あの頃はおかまいなしに飲んでたけど。

福士 あんなに飲んでて、よく歌詞を忘れないなとか、よく声が出るなとか、いつも横で感心してた。

浅井 最近、アコースティックとかやってるじゃん。で、他人のアコースティックライブを観たりするとけっこう歌詞を見てるよね。

―― 譜面台がありますね。

浅井 あるよね。

福士 あまり気にして見てなかったけど。ベンジーは譜面見ないね。

浅井 うん。それをずっと続けようと思って。

福士 脳トレ?

浅井 脳トレというか、大事だなと思って。

福士 1回見ちゃうともうその世界に行っちゃうんだろうね。

浅井 そうだと思う。楽譜とかも、あると安心なんでしょ?

福士 うん、ただ安心で置いてる。だからなくなったら、何かが足りないような感じになるんだと思う。もう楽譜がセットで脳に入っているから。

浅井 だよね。俺、ピアノをちょっとやってるときに、楽譜を見て曲を覚えるじゃん。でも楽譜がないところで弾いたら全然弾けないの。

―― そういう風にインプットされるんですね。

浅井 そうなんだわ。そういうインプットのされ方すると、脳がもうそういう風にしか反応できないみたい。

福士 私は逆にギターを弾くときは譜面を見ないから、全然譜面は関係なくなるんだけど。ピアノを弾くときはそういう構図になっちゃってるのかな、脳と体が。だからいいよね、ベンジー。体ひとつで行けるって。

浅井 ああ、まあバンドマンはそうだわ。バンドマンはみんなそんなもんだって。頭の中で全部処理してる。はじめっからそうだから、楽譜を書くほうが苦だもん。楽譜はさ、変更するときに消してまた書かなあかんもんだから。頭の中だったら勝手にすぐ作れるし時間がかからない。

福士 譜面のいいところは、何年経っても全く同じ音が出せる。

浅井 それはある。たまにどうやって弾いてたかわからない曲あるもんね。

福士 私の場合は楽譜をとっておけば、いつでも再生してそこから体が思い出せる。

浅井 福士さんがひとり(楽譜を)とっといてくれたら、そのときのコードだとか、聴いたらわかるから一番いいと思う。

福士 記録ってことで(笑)。ライブはフジロックも楽しかったな。

浅井 ああ、一番最近だと代打で出たときね(2016年、The Avalanchesキャンセルを受けて急遽出演)。フジロックはみんな、せっかく来たから楽しもう!っていう空気があっていいよね。すごいやりやすい。とくにレッドマーキーがいい。

福士 レッドマーキーは照明もあるしSHERBETSに合ってるよね。

浅井 うん。昼間の暑い日差しはSHERBETSは……曲調もあるから。

福士 照明があったり、夜のほうがSHERBETSの音楽はいいような気がする。

浅井 炎天下で「おりゃー」って感じじゃないもんね。

福士 うん。もっと繊細なところを伝えたいバンドだと思うから。緑の中はもちろん素敵だけど、できれば照明があったり夜のほうが心に真っ直ぐ入ってくるような感じがする。

―― 話は変わりますが、前に「浅井さんにとってSHERBETSとは?」という質問をしたときに、「すんばらしい!の一言」という答えでしたが。

浅井 ちょっとふざけとるね(笑)。

福士 ふふふ(笑)。

浅井 宝物。SHERBETSは“宝物”だね。

―― 福士さんにとってSHERBETSとは?

福士 それぞれのキャラも知ってるし、自分も含めていいところも悪いところもあって、それをわかったうえで、いい音楽を作りたい思いで続いてきたのかなと思う。バンドってやっぱり、水とかいいものをあげて一生懸命育てないとだめなんだなと、私は途中から思っていて。放っておいても育つかもしれないけど、時々は頑張らないと元気なくなるときもあるから。そういうのがあって乗り越えたから、何かがあっても一緒に心が繋がって、たとえライブ中に沈没しそうになっても立て直して、宇宙のほうまで行けるんだと思う。そういう宇宙船みたいなのがSHERBETS。誰とやってもそうなるわけではなく、上手いからいいとかそういう問題でもなくて。運命の出会いというか。SHERBETSはそういう相互作用が音楽の中でやれてきたことがよかったなって。ありがとうっていう感じかな。ライブで、音楽でそう思えるのは幸せなことだと思う。

―― それがきっと、SHERBETSのミラクルなんでしょうね。

福士 うん。いつも平均点がいいバンドではないと思うんだけど、みんな危ういからこそミラクルが起こるというか、失敗しないように演ることよりも、ひたすら一生懸命に演るのがSHERBETSかなって思う。そういうところにミラクルがくるんじゃないかな。SHERBETSは優等生じゃなくて、一生懸命に演ってる4人が集まった、永遠に大人になれないバンドかも。ベンジーはだいぶ大人になったかもしれないけど(笑)。

浅井 そうかな(笑)。

福士 でも音楽に対する心っていうのはそんなに変わってなくて。私はそういう“心でやる音楽”が好きだからSHERBETSにいるんだと思うし。そんな、大人になれないバンドはかわいいからいいかな(笑)?

浅井 なかなか、これだけの曲を作り続けることはできないと思う。なんでか知らんけど、尽きないよね。

福士 うん。なんかできるもんね。

浅井 自分で言うのもなんだけど、心に沁みる感じがあるから。それってみんなの演奏なんだよね。それがすごいなと思う。やっぱり音に人間性が出るから。世界観から外れた人が一人でもいると、たぶんそこには到達できないと思うんだよね。マジに。少々頭悪くてもだめなとこがあってもいいんだわ、ただ純粋さがないとだめなんだよね。純粋な何かを持ってるか持ってないかが大事。そういう間柄ではあるなって本当に思う。

―― 友達でもなく、音楽に心で寄り添っている。

浅井 うん。それがバンドマン、バンドメンバーだよね。

―― 今回あらためて、SHERBETSは他に形容できないバンドだなと感じました。本当に心にくる音楽で。

浅井 問題は、世の中がすごい変わってきてるんだよね。音楽をとらえる概念というか、聴き方が変わってる。SHERBETSの音楽を好きな人は心で聴いてくれてると思うんだけど。もちろん、若い世代にも感受性が強くてセンスのいい人いっぱいいると思うんだけど。でも大多数を占めてるのは、軽いノリの世界観でしか音楽を感じてないというか。そういう感覚の人が増えてると思う。

―― どんどん消費されてるような聴き方、ということですよね。

浅井 俺からすれば、そういうのはつまらなくて。そういう人たちのほうが圧倒的に多い世界になったらいやだけど、時代というか実際そうだから。でも、俺んたちは自分の音楽がかっこいいと思うから、それをやり続けるだけだけどね。

―― そういうリスナーが初めてSHERBETSに触れる作品として、このベスト盤はすごくいいですね。ずっと聴いてきたファンにとっても、1枚ずつ新しい世界が楽しめる作品になっていて。

浅井 ほんと? うまい具合にまとまったかな。

福士 だったらいいね。

―― 今後の予定はどうですか?

浅井 俺はアルバムを作りたいけどね。仲田くん、体調悪かったみたいだけど、復活して前より元気になったから。いろいろ悩んだこともあったけど、結局、みんながキーポイントなんだよね。

―― 久しぶりのツアーも、今後のSHERBETSも楽しみにしています。

浅井・福士 ありがとう!

(取材・文/秋元美乃)
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<STAFF> WEB DONUT 4/2018年11月1日発行/発行・編集・WEB制作=DONUT(秋元美乃/森内淳)/カバーデザイン=山﨑将弘/タイトル=三浦巌/編集協力=芳山香

INFORMATION



The Very Best of SHERBETS 『8色目の虹』
◉初回生産限定盤【3CD+DVD】
2018年10月24日Release
¥4,500+税
収録曲: ◎DISC 1 01. HIGH SCHOOL 02. アンドロイドルーシー 03. カミソリソング 04. Black Jenny 05. シェイクシェイクモンキービーチ 06. グレープジュース 07. はくせいのミンク 08. 水 09. 三輪バギー 10. トカゲの赤ちゃん 11. ジョーンジェットの犬 12. 人がわからないよ 13. シベリア 14. 38Special ◎DISC 2 01. Rainbow Surfer 02. トライベッカホテル 03. サリー 04. A GUN 05. わらのバッグ 06. 見知らぬ橋 07. Baby Revolution 08. 夢見るストロベリー 09. Hippy Junky Surfer 10. KODOU 11. Iceland Boy 12. フクロウ 13. Mrs.Sherry Crown 14. 小さな花 ◎DISC 3 01. 愛が起きてる(新曲) 02. ひょっとして 03. STRIPE PANTHER 04. Michelle 05. Crashed Sedan Drive 06. リディアとデイビッド 07. COWBOY 08. Another World 09. LADY NEDY 10. これ以上言ってはいけない 11. GREEN 12. Stealth 13. New Ruby Tuesday 14. 星空の方があったかい

LIVE INFORMATION >>http://sherbets.tokyo/live/

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