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2021.08.25 upload

ザ・クロマニヨンズ インタビュー

本当は全部シングルでいいと思う。クロマニヨンズのアルバムはコンセプトも何もないシングルの寄せ集めだからね
――甲本ヒロト

ザ・クロマニヨンズが8月25日シングル「ドライブ GO!」をリリース。「ドライブ GO!」を皮切りに2022年1月まで6ヵ月連続でシングルをCDと7inchアナログ盤でリリースする。7inchアナログ盤「ドライブ GO!」の限定盤には6枚のシングルを収納できるボックスがついている。1月にはCDでアルバム『SIX KICKS ROCK&ROLL』がリリースされるが、アナログ盤はリリースされない。インタビューにも出てくるが、そもそもレコード・アルバムが「アルバム」と呼ばれるようになったのは収録時間が短いSP盤時代にたくさんの曲をまとめて聴いてもらおうとスクラップブックに収納したのが始まり。つまり今回の「SIX KICKS ROCK&ROLL」という企画は本来のアルバムの姿を示したことになる。甲本ヒロト(vo)も真島昌利(gt)もアナログ・レコード・ファンとして知られている。毎回アナログ盤でクロマニヨンズの音楽を楽しんでいるリスナーも少なくない。サブスクリプション全盛の時代、アルバムからの先行配信がシングルに取って代わっているが、同時にアナログ盤の需要は年々高まっている。新人アーティストのライブ会場で7inchアナログ盤が物販コーナーに並ぶことも珍しくない。一見時間を巻き戻したような企画だが、時代にアジャストした企画でもある。さらにこの企画からクロマニヨンズのアルバムがどうやって成り立っているのかも見えてきた。ドーナツ盤(7inchアナログ盤)に対する興味は尽きない。甲本ヒロトに「SIX KICKS ROCK&ROLL」について訊いた。

●取材・文=森内淳/秋元美乃

―― 今回、クロマニヨンズは「SIX KICKS ROCK&ROLL」と銘打って、7inchアナログ盤を6ヵ月連続でリリースします(CDも同時発売)。甲本さんは最近どういった7inchレコードを買っていますか?

甲本ヒロト ヘンテコなものを見つけたら買うようにはしてる。元々そういう気はあったけどね。欲しいレコードはだいたい買っちゃったっていうこともあるし。

―― 欲しいレコードがなくてもレコード屋さんには行くんですね。

甲本 それはね、楽しいの。ただレコードをこうやってパラパラめくってみたりするのがすごく楽しい。そんで、その日の気分で意外なものにピクンって惹かれて買ったりすることもあるしね。なんかそういうのが楽しい。「あれ、こんなレコードに興味があったかな?」って思いながらも、その日、どうしても聴いてみたくなって買うっていうことがあるよ。

―― ヘンテコな7inchってどんなものを買ってるんですか?

甲本 いろんな企業モノとか買ってるかな。

―― 企業モノ? CMソングってことですか?

甲本 そうじゃなくて社歌みたいなやつとか。

―― 社歌ですか? 社歌のレコードなんて売ってるんですか?

甲本 ある、ある。そういうのは地方で買うことが多いかな。「みーつーびーし、三菱♪」みたいな(笑)。あと「コマツは見つめている~♪」みたいな(笑)。

―― ははははははは。

甲本 社員が歌ってたりするんだよ。

―― 社員が歌ってる!?(笑)。

甲本 「戸籍はちゃんと知っている~♪」っていうのもよかったな。

―― 何ですか、それ?

甲本 戸籍制度100周年記念の歌(笑)。

―― 伊集院光さんのアレコードの世界ですね。

甲本 そうだね(笑)。

―― 今回リリースされるクロマニヨンズの7inchレコードにはボックスに収納できるようになっています(7inchアナログ盤「ドライブ GO!」の完全生産限定盤には6ヵ月連続シングルをすべて収納できる特製BOXが付いている)。今まで買ったシングル・ボックスで印象に残ってる作品ってありますか?

甲本 クラッシュのシングル・ボックスを買ったことはよく覚えてる。8枚組で4400円だったかな。出たときすぐには買えなくて、アルバイトをしてお金をためて買いに行った。そのときにはすでにレコード屋さんにはなかったんだよ。でも廃盤にはなってないはずなんだよ。廃盤にするとプレミアが付くから廃盤にしないでって、ジョー・ストラマーがレコード会社と約束したんだ。それでレコード会社に問い合わせてみたら、やっぱり廃盤になってないっていうことがわかって。レコード屋さんに取り寄せてもらって、定価で買った。

―― ジョー・ストラマーっぽい話ですね。

甲本 シングル・ボックスの値段も、当時、ポリスのやつが6枚入って6000円くらいだった。クラッシュは8枚入って4400円。

―― クラッシュは定価の交渉もレコード会社とやってましたからね。ぼくは黄色い箱のシングル・ボックス(『Singles '77-'85』)は持ってるんですけど、それとは違うんですよね。

甲本 あれはだいぶ後に出たやつだね。あれじゃなくてポール・シムノンが箱のデザインをやったやつだよ。

―― 甲本さんが持ってるのは1979年4月にリリースされた『Singles '77-'79』ですよね。

甲本 当時、日本でクラッシュのシングルが出てないっていうことがわかって、そのボックスが出たんだよね。あと日本だと『パールハーバー'79』も出たしね。いい国だよ。

―― 『パールハーバー'79』の内容はUS盤の『白い暴動』なんですよね。

甲本 US盤の『白い暴動』を出すときに既発のUK盤と重複しちゃうから、(7inchアナログ盤の)おまけを付けたり、いろいろ工夫が必要だったんだよね。

―― US盤にはシングル曲が収録されていて、日本盤はそれに独自のスリーブを付けてリリースしました。

甲本 そうそう。最初から出てた『白い暴動』と同じジャケットになっちゃうからね。二重カバーにしてね。あれね、初めてクラッシュのレコードを買うには最適なレコードだと思う。

―― クロマニヨンズも必ずシングル(CDと7inchアナログ盤)をリリースしていますよね。最近ではシングルがアルバムのリードトラックの先行配信に置き換わる傾向にありますが、あえてシングルというフォーマットにこだわる理由はありますか?

甲本 本当はアルバムを出さなくても全部シングルでいいと思うんだ。クロマニヨンズのアルバムってずーっとコンセプトも何もないシングルの寄せ集めだからね。

―― じゃまさに「SIX KICKS ROCK&ROLL」は理想のリリース形態なわけですね。

甲本 思いは全部シングルなんだけど、それをまとめて聴けるお得盤としてアルバムがあってもいいと思うんだ。だから、今回、両方出すんだけど。アルバムも、入ってる曲の全部のシングルも出ますっていうんだったら、いろいろ選べるじゃない? なんかそんなんでいいのかなと思う。だから「SIX KICKS ROCK&ROLL」は絶対に楽しくなると思うよ。とはいえ、ぼくらがやることは同じなんだけどね。年間に発表する曲の数も、レコーディングもいつもと同じペースだし。ただシングルを連続リリースすることで、いつもより発売を前倒しているわけだから、頑張ったのはレコード会社ということになるね。

―― 以前、甲本さんは「そもそもアルバムとは何か?」ということについて説明してくれましたよね。

甲本 うんうん。

―― 昔はたくさんの曲を聴いてもらいたいって思っても、回転数の関係で1枚のレコード盤には入りきれないから、レコードを何枚もパッケージして、それをアルバムと呼ぶようになった、と。

甲本 そういうこと、そういうこと。SPの時代にね。いっぺんにたくさんの曲を聴きたい人のためにそうしたんだよ。そこで例えばSP盤の6枚組だったら「12曲入りのアルバム」っていうことだよね。

―― そのパッケージの形態からアルバムという名前がついたという。

甲本 そうそう。

―― もちろんシングルに対する思いもありつつなんですが、そういった「本来の意味でのアルバム」を形として届けたいという思いも「SIX KICKS ROCK&ROLL」にはあったんでしょうか?

甲本 もちろん、それもある。アルバムの最初の形に近いと思う。

―― そういう背景を考えると、さらに面白いですね。

甲本 60年代以降、とくにビートルズがスタジオワークを中心にやり始めた以降に、今でいうアルバムの意味が生まれたと思うんだよ。ビートルズがやってなかったらこうはなってなかったかもしれない。ビートルズがいたからアルバムっていうものの意味がどんどん出てきたと思う。それも大切だと思うんだ。ぼくらがやってきたアルバムにもそういうビートルズ的なところがあったかもしれないしね。ただ、ぼくらがレコーディングをしている最中にひとつのまとまったアルバムとしての考えがあるかと言ったら、ないんだよ。全部の曲がセパレートなんだ。例えば、スローな曲が少ないから1曲増やそうとか絶対ないんだよ。1曲ずつが全部独立していて、それをたまたま12曲集めたのがアルバムになってきた。今までずーっとそうだった。だから今回みたいに全部シングルでもかまわないんだよ。

―― 今回の「SIX KICKS ROCK&ROLL」は一番クロマニヨンズの気分に近いアウトプットの形なんですね。

甲本 うん。何のズレもない。だけどもちろんこの6枚(12曲)をまとめてアルバムで発表することにもズレがあるとは思ってないよ。どっちも特別ではないということだね。もしかしたらみんなにはこの「SIX KICKS ROCK&ROLL」のやり方が特別に見えるかもしれないけど、ぼくらにとってはどっちも特別じゃない。

―― 「SIX KICKS ROCK&ROLL」にはサブスクリプションの時代に、サブスクリプションでは表現できないことをやる面白さもあります。

甲本 そこはいろいろあっていいんじゃないかな。好きな人が乗っかってくれればいいと思う。あとね、シングルって2曲だけだから飛ばさないじゃん。もしかしたら今は何かに取り込んでから聴くからそんなこともないのかもしれないけど、ぼくはシングル盤を1枚ずつレコードプレイヤーに載せてかける。だから「ながら聴き」は絶対にできないよね。レコードをかけたままどこかに行くなんてできない。だからそういうところも楽しいと思う。

―― それからモノを集める楽しさもあります。

甲本 ある。最初は集めるつもりはなくても、6つあるうちの2つを持ってたら、もう1個、もう1個って足していって、5つ集まった時点で、最後の1個は死物狂いで探すっていうね(笑)。

―― ありますね、そういう経験(笑)。

甲本 血眼になって探すという(笑)。多かれ少なかれ、みんな、そういう癖はあるんじゃないかな(笑)。

―― 逆にそれを楽しみたいという欲求もありますしね。

甲本 ある。だってあれでしょ。ときめきゃいいんでしょ?「ときめかないものは要りません」っていうじゃん。これは全部、ときめくもん(笑)。

―― 今は収集も全部デジタルになっていますから、モノを揃える醍醐味を味わってほしいですね。

甲本 デジタルで集めるのも面白いと思うよ。ただひとつ寂しいのはみんなのところに同じものがあるということだね。それは自分だけのものではないっていうことなんだよ。図書館に置いてある本と同じなんだよ。でも買ったレコードってさ、自分のものじゃないか。このシワのひとつにしてもね。レコードをかけたらどこでチリっていったりパチっていうかは1枚ずつ全部違うんだよ。そういう違いって人にとってはどうでもいいのかもしれないけど、どうせ集めるんならそっちのほうが面白いんじゃないかなと思うよね。

―― そういえば、甲本さんは前からNBAのカードとかいろんなものを集めてましたよね。

甲本 そうそう(笑)。NBAのカードは楽しかったな。マイケル・ジョーダンがラストショットを打った床がカードに入ってんだよ。

―― 何ですか、それ?

甲本 床を薄くカンナで削ったやつが入ってるんだよ。

―― マジですか?

甲本 ジョーダンがラストショットを打った写真と一緒に床をカンナで削ったやつが入ってる(笑)。

―― よく当たりましたね。

甲本 当たったんだよ(笑)。

―― それ、今でもとってあるんですか?

甲本 とってあるよ。

―― 他にもいろいろ集めてましたよね。

甲本 NBAカードでしょ、ニンジャ・タートルズはコンプリートでしょ。

―― あれはコンプリートなんですね?

甲本 あの時代のやつはね。売り出してすぐに回収になったやつもあって、それはほんの少し市場に出回ったやつを探して買ったんだよ。今は昆虫だね。やっぱり収集癖はあるんだね(笑)。

―― 収集癖ありますね(笑)。本当に収集を楽しんでいる甲本さんが6枚連続でシングルを出して、今度はリスナーがそれを収集して楽しむという。面白いですね。

甲本 うんうん。

―― この「SIX KICKS ROCK&ROLL」というタイトルは、そういう背景もあってコンセプチュアルにしたんですね。

甲本 作品にコンセプトがあるわけじゃないんだけど、発表の仕方にコンセプトがあるからね。いつも何もコンセプトがないのに今回はひとつだけあるから、それは盛り込んだほうがいいんじゃないかってことになった。そうなるよね、自然と。

―― 今回、6枚のシングルが出るわけですが、A面B面の楽曲の組み合わせはどうやって考えたんですか?

甲本 わりと適当。適当なんだけど、ぼくとマーシーの曲をA面B面交互にいこうっていうのはなんとなく暗黙の了解で決めてたけどね。1枚のレコードを買うと必ずぼくの曲とマーシーの曲が1曲ずつ入ってる。そういうふうにしようっていうのは決めてた。どっちがA面でもB面でもいいんだけどね。出す順番で交互にいったら面白いんじゃないか、と思ったんだよ。ぼくらがコントロールできないところで起こる2人のバランスを楽しんでもらおうと思った。例えば全部ぼくの曲が並んでたらさ、つまらないじゃん。全部マーシーの曲でも、つまらないとは言わないけど、なんか寂しいじゃない。両方の曲を1枚のレコードで出すことによって、みんなの中でのバランスを楽しんでもらえれば面白いかなと思う。

―― 一気に6枚をリリースする方法もあったと思いますが、6ヵ月に渡ってのリリースとなりました。

甲本 今回はなるべく長引かせたほうがいいと思う。

―― コロナ禍で楽しみが少なくなりましたからね。

甲本 毎月、何か楽しみがあった方がいい。「お、そろそろ次のが出るかな」みたいな。「もうひと月経ったのか?」とかね。

―― ボックスのデザインは凝ってるんですか?

甲本 すげーかっこいいよ! だって菅谷(晋一)くんだもん。

―― 普通の箱じゃないんですね。

甲本 箱は箱だよ。普通の箱と言えばそれまでだけど(笑)、やっぱ菅谷くんはちゃんとしてる。持ったときに「これ、持っててよかった」と思う。

―― そして来年の1月にアルバムが出る、と。

甲本 それはCDでね。全部をまとめたアルバムが出る。CDで出すアルバムにはボーナス・ディスクも入ってるよ。それもけっこう面白いぜ。

© 2021 DONUT

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INFORMATION

■ "SIX KICKS ROCK&ROLL" SINGLES

SG「ドライブ GO! 」
2021年8月25日(水) リリース
収録曲:ドライブ GO!/千円ボウズ


SG「光の魔人」
2021年9月29日(水) リリース
収録曲:光の魔人/ここにある


SG「大空がある」
2021年10月27日(水) リリース
収録曲:大空がある/爆音サイレンサー


SG「もぐらとボンゴ」
2021年11月24日(水) リリース
収録曲:もぐらとボンゴ/冬のくわがた

■ 今後のリリース予定
2021年12月22日発売 「縄文BABY」(SIX KICKS ROCK&ROLL第5弾シングル)
2022年01月19日発売 「ごくつぶし」(SIX KICKS ROCK&ROLL第6弾シングル)


■ "SIX KICKS ROCK&ROLL" ALBUM

AL『SIX KICKS ROCK&ROLL』
2022年1月19日(水) リリース
収録曲:6ヵ月連続シングル収録曲+未発表曲2曲を収録した2CD仕様


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