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2021.03.05 upload

THEティバ インタビュー

曲の作り方がわかってきたというか、英語の歌詞をのせるのに慣れてきたから、よりマヤ味が出た2作かなと思います
――マヤ

THEティバはマヤ(vo,gt)とサチ(dr)の2ピースのバンドだ。オルタナティブ・サウンドに全編英語詞というスタイルを結成当初から貫いている。コンセプトはPeach PitやDead Ghosts、DOPE LEMONと対バンができるようなバンド。オルタナティブというとUSでありイギリスであるが、彼女たちが心酔しているのはカナダのアーティストがほとんだという。ライブでも「We're from Canada」とMC。カナダのインディーズ・シーンへのリスペクトを忘れない(ちなみにティバはすでにサマーソニック2019に出演している)。そのティバの新作EP『THE PLANET TIVA part.1』と『THE PLANET TIVA part.2』が連続リリースされた。『part.1』ではオルタナティブの衝動に真っ向から向かい、『part.2』はオルタナティブの持つポップな部分をパンキッシュに表現。2枚を通してオルタナティブという音楽ジャンルの持つ魅力を余すことなく体現している。結成当初は日本語ロックの英訳的な部分もあったが、この2作でそれを払拭。ティバのフォーマットが決まった印象がある。今回は初登場ということでTHEティバ結成の経緯から今回の作品に至るまでを訊いた。

●取材・文=秋元美乃/森内淳

―― マヤさんとサチさんは解散した花魁少年のメンバーだったわけですが、2人でまたバンドをやることになった経緯を教えてください。

マヤ 花魁少年を解散するってなって、私は弾き語りをやろうと思って活動してた時に、サチが「もう一回一緒にバンドをやらない?」って言ってくれて「私もバンドをやりたいな」って思って、それで「やるか」って。

―― ということはTHEティバをやるために花魁少年を解散したわけではないんですね。

サチ 花魁少年の解散にはティバは関係ないです。

マヤ 本当に新バンドっていう感じで。

サチ 花魁少年が終わって、いくつかのバンドでサポートをしたり、正式なメンバーとして入ったバンドがあったんですけど、それをやってみたりして曲をつくる人としてやっぱりマヤはいいなと思いました。

―― コンポーザーとしてのマヤさんの魅力にあらためて気づいてしまったわけですね。

サチ やっぱりいいなあ、と思って、「もう一回やらないか」って言ったんです。

―― マヤさんは花魁少年が解散したあと、どういう活動をやっていたんですか?

マヤ フォークをやりたくて花魁少年でやっていたような曲をアコースティックで歌っていたんですけど、何かしんみりしちゃって(笑)。「ハッピーになりたいな」と思ってティバをやろうと思いました。

―― 花魁少年はたしかにハッピーな曲ではなかったですね。

マヤ 「全員、殺す!」みたいな感じでやってたからちょっと疲れちゃって(笑)。しんみりした曲をやるにしても、ハッピーがあってこそのしんみりかな、と。

サチ バンドをやっていたらどっちもできるしね。

マヤ そう。バンドも弾き語りも同時にできるしなあ、と思って。今も弾き語りはいろいろとやっていて、今のほうが楽しいですね。ティバが核としてある上でいろんなことができるので。

―― 花魁少年に限界を感じたのはどうしてなんですか?

マヤ 花魁少年の最後の1年はもうなあなあになっていたというか。みんなの意志がバラバラな感じがして。棘棘した感じになってたので、そこから脱却したかったというのもあります。そういう経緯もあったので、2人でやるんだったら楽しいバンドをやろうって言って今に至る感じです。設定も変えましたからね。

サチ そもそも花魁少年には設定はなかったけど。

マヤ 「花魁少年とは別人だよ」みたいな気持ちでティバは始めたんですよね。

―― ティバはオルタナティブ・バンドで、しかも英語詞という花魁少年とは音楽性も表現も異なるバンドになりました。

サチ 「どういう感じで新しいバンドをやるのか?」ってなった時に、その時に聴いていたバンドをお互いが出して「こういう感じにしよう」みたいな。

マヤ もともとオルタナは好きで、けっこう聴いてたんです。「そういうバンドと対バンしたいね」ってなったんです。

サチ そうそう。聴いてるバンドと対バンしたい!

マヤ 対バンしたいバンドに寄せた上で、ハッピーで楽しいやつをやろうって。

―― その時に出たバンドはどういうラインナップだったんですか?

マヤ Peach PitとかDead Ghostsっていうガレージ・バンド、あとはDOPE LEMONとか。そんな感じで。

サチ 私はPUPっていうバンドとAlvvaysを出して。

マヤ 彼らが出演するフェスにティバがいてもいい感じっていうか。

―― それがバンドのコンセプトになるわけですね。

サチ そうです。初期のコンセプトです。

マヤ 聴いてたバンドやアーティストと同じフェスに出たいっていう(笑)。

―― 最初の動機はファン目線というかミーハーな思考なんですね(笑)。

マヤ そうです。「会いたい!」っていう(笑)。

サチ 一緒にいたい(笑)。

マヤ 友達になりたい(笑)。

―― それでティバは「カナダ出身」と名乗っているわけですね。

マヤ そうなんですよ。今、出したバンドはほとんどがカナダなんで。そうなるとうちらもカナダ人になるしかないな、と(笑)。

―― ライブをやる前も「カナダから来ました」って英語で言ってますからね(笑)。

マヤ MCも全部、英語でやりました(笑)。

―― コンセプトに沿ったオリジナル曲をマヤさんはすんなりと作れたんですか? 花魁少年や弾き語りとはまさに別人格の楽曲になりますが。

マヤ 私、いろんなスタイルを真似するのが得意なんですよね。

サチ 花魁少年は日本語のロックで、弾き語りはフォークで、ティバはオルタナで。だけどマヤは他の違うスタイルでやろうと思ったら、他の感じの曲も作れると思うんですよね。マヤはこれだけしか作れないという感じじゃないんですよ。どういう感じのマヤにもなれる。

―― ティバというコンセプトさえ決めれば、あとは何とかなってしまうんですね。

マヤ そうですね。私、曲を作る前に好きな曲でプレイリストを作って延々と聴くんです。それをインプットして排出するっていう。だから、いろんな方向に行ったマヤになれるんだと思います。ただティバを作った当初はちょっと花魁少年っぽかったけど。まぁそれでもすんなり曲ができて。サチも私が書く曲にすごく合わせてくれて。サチのマインドとは合ってるのかな?

サチ そうかな。

マヤ わかんないけど(笑)。でももともとなんでもできるドラムだからね。

サチ ありがとう(笑)。なんでもできるとは言えないけど、ある程度、「こうかな?」っていろいろ試せるくらいはできるから。

―― マヤさんの楽曲はそうやって多岐に渡るんですが、どういう音楽を聴いてきたんですか?

マヤ 両親がいろんな曲を聴く人たちで、両親が聴いてた音楽、ビートルズとかエイティーズ・ポップスとか。それが私のルーツですかね。だからいろいろなことをやりたくなっちゃうのかな。

―― 基本的には洋楽ということですか?

マヤ 洋楽は多いですね。洋楽と、あと映画のサウンドトラックとかめちゃめちゃ聴く家で。あと母親は昭和歌謡とかも好きだし、父親はプログレとか。あと叔父さんも洋楽がめちゃくちゃ好きで。本当にいろんな音楽と共に育ってますね。

―― ちなみに今現在の2人のフェイバリット・アーティストは?

マヤ 今、ダニー・エルフマンにバカハマりしてて。ダニー・エルフマンはよくティム・バートンの映画音楽を作っている人なんです。オインゴ・ボインゴっていうバンドをやってたんですけど、すごいハマってるんですよ。もともと映画音楽が好きで、「そう言えばこの人、バンドをやっていたよね?」って。めちゃくちゃかっこよくて。あとはPeach Pitです。Peach Pitはずっと最高。

サチ 私は、最近、ジェイコブ・コリアーを教えてもらって、すごいです。一人でオーケストラをやる人なんですけど。

―― 2人とも幅広く聴いてますね。マヤさんとサチさんにプレイリストをやってもらいたいですね。そうやって「好きなバンドと共演したい」というコンセプトでティバは始動するんですけど、最初はティバ名義で何曲くらい作ったんですか?

マヤ ライブをやろうって言って5曲くらい作ったかもしれない。でも初期の曲は今のライブではほぼ残ってないですね。

―― 『THE PLANET TIVA part.1』と『part.2』の2作に向かってどんどん楽曲が変わっていったという感じですか?

マヤ そうですね。曲の作り方がわかってきたというか、英語の歌詞をのせるのに慣れてきたから、よりマヤ味が出た2作かなと思います。初期はやっぱりマヤ味もあるけど、ちょっとモノマネな感じですね。あと花魁少年が入っている感じがします。

サチ 花魁少年は入っているね。

マヤ 最初に出したEP『we are the tiva』の半分は花魁少年みたいな感じですね。

―― 今回の2作は完全にティバ色で彩られていますが、ライブをやっていくうちにだんだん変化していったとか?

サチ それはあるかもしれない。

マヤ あると思いますね。それからティバをやり始めて、花魁少年時代とは対バンもめっちゃ違くなって、英語で歌っている対バンが圧倒的に増えましたね。

―― 英語詞というのは最初から決めていたんですか?

マヤ 英語詞は最初から決めていました。

―― ただ日本語詞で歌うオルタナティブ・バンドもいますよね。その選択肢はなかったんですか?

マヤ カナダ人になりきりたかったので(笑)。そもそも「新しくバンドをやろう」ってサチに言われた時に「じゃ英語がいい」っていうのは言ってたんです。でもその時はここまで全部を英語の歌詞にするとは思っていなかったんですけど、「カナダ人になる」って決めたので(笑)。

―― 今までは日本語で表現してきたわけですよね。日本語で歌いたいという衝動はないんですか?

マヤ その辺はもう全部フォークというか弾き語りで吐き出して。

―― なるほど。

マヤ もう一個フォーク・バンドみたいなものに入れてもらってて、ゆうらん船の(内村)イタルさんとやってるバンドがあって、それはもう日本語詞で。私の曲もやってくれるし、バンドだし、そっちで日本語は吐き出して、ティバはティバで英語詞でやってって感じで。

―― 英語の歌詞にしたことで歌詞が変わったみたいなことはあるんですか?

マヤ いや、そんなに変わってないですけど、言葉を選ぶニュアンスが私の感性とはまたちょっと違った感性が生まれたっていうのはあります。

―― 引き出しが増えた感じですか?

マヤ それはありますね。

―― 歌詞を書くときには最初に日本語で書くんですか?

マヤ いや、最初から英語で詩みたいのを書いて。

―― あ、いきなり英語で書くんですね?

マヤ 日本語で書くと英語詞ではなくて英訳になっちゃうじゃないですか。それはちょっと嫌だなと思って。メロディに乗らない感じがちょっとある。自己満足の世界ですけどね(笑)。高校生の頃から英語はずっと習ってたんで、ペラペラのペぐらいで(笑)。歌うことが好きだから、歌ってて気持ちいいプラス英語でますます気持ちよくなる、みたいな。そういうことを意識しています。

―― 今回、『THE PLANET TIVA part.1』と『part.2』をリリースしたわけですが、この作品でティバのベーシックな部分が完成したような印象があります。

マヤ それはあります。自己紹介をやっとできるっていう感じですね。

―― ここに至るまで手探り感はありましたけど、この2作で地に足がついた感じはありますよね。

マヤ ありますね。

―― レコーディングにもそういう意気込みというか決意で挑んだんですか?

マヤ 曲はこれまでに作った曲なんですけど、本当に自己紹介ができるようなものを作ろうって。

サチ 今までの曲をアレンジするところからレコーディングは始まったんですけど、プロデューサーに手伝ってもらいながら、やりたいことができた感はありますね。

マヤ めっちゃある。

サチ 頭の中のものをちゃんと表現できた感はあると思います。

マヤ 前の作品はお金もなかったし、ライブと同じ状況で、全部、一発録りだったんです。歌だけ後で録って。ベースアンプをつないでみたいな感じで、すごい粗削りでした。でもそれはそれでかっこいいんですけど、ちょっと「うん?」って思うところもあったんですけど、今回は……

サチ ベースも別で録ったし……

マヤ 気にくわないところは一音とかでも直させてもらったし。すごく有意義なレコーディングでした。

マヤ 自分たちが思うかっこいいを追求できた。やりたいことができてるプラスそれが自分たちの思う中で一番かっこいい状態になったなっていう。

サチ 今、思ってる一番かっこよくて、やりたいことができた。

マヤ できた(笑)。

サチ できた(笑)。

―― 今作をpart.1とpart.2に分けた理由は?

マヤ もともと自己紹介アルバムを作ろうとしていて……

サチ だけどこのコロナの時期に思うように活動ができなくて。だったら2枚にして少しでも多くの人の目にふれるようにしようと思って、1枚出して、次もあるよっていうふうにして、目にふれる期間が長くなるし、そういう理由で2枚に分けました。

マヤ Part.1はちょっとオルタナ色強めっていうか、ちょっとロックっぽい曲を集めて、Part.2は明るめで……

サチ パンクの色が強い感じで。

マヤ 明るい感じとクールな感じで分けました。

―― ティバは2人でやっているんですが、将来的にはベースやギターを入れたりするんですか?

マヤ 将来、私、ピン・ボーカルになりたいんですけど(笑)。それはもうずっと言ってるんですけど。そもそもベースがいないのもベースが見つからなかっただけで、探すの面倒くさいんで2人でやろうかっていうのが始まりだったんで。

―― あ、そうなんですね。

マヤ ベースはフィーリングがめっちゃ合って、音楽にもいい影響を与えてくれるような人が見つかったら、全然、入ってほしいし。でもなんか2人っていうのを保っていくのもいいなって、最近、思い始めました。

―― というと?

マヤ こないだのライブで最後の2曲だけ5人でやったんですけど、ステージの前の方に私たち2人がいて、後ろに3人いるみたいな感じだったんですけど、3人は主張しないんだけど確実に音があって完璧っていう感じの演奏で。それってめっちゃかっこいいなと思ったんですよ。「私たちが主役!」って感じで(笑)。

サチ たしかに(笑)。

マヤ 見た目としてね、なんか面白いし。だけど、今後、ピン・ボーカルになりたい夢は捨てきれない(笑)。ピン・ボーカルってかっこよくないですか? フレディ・マーキュリーとかジム・モリソンとかになりたい(笑)。ギタリストも入れて大所帯のピン・ボーカル・バンドになってるかも(笑)。

―― 今の話を聞いていると、2人+セッションメンバーというのも面白いですね。

サチ 他のいろんなミュージャンを入れてやるっていうのは楽しいと思う。他の3人なり4人なり増やしたり減らしたりもできるし、ライブごとに違う人ともできたりするし。

マヤ コロナ期間で宅録遊びがすごいブームで、音を重ねまくっちゃうんですよね。重ね放題じゃないですか。それをライブでやるってなった時に、2人じゃできないと思って。それで5人になったんですけど。これから重ねオケが増えたら、メンバーも増えるよね。

―― 作品ごとにフィーチャリングとかもできそうですよね。

サチ できる、できる。これからそういうのをやりたい。

マヤ やりたいよね。

―― 作品に関しての今後のビジョンとうのはありますか?

マヤ やりたいやつをやりたい時にやりたいようにかっこよく(笑)。

―― そこに尽きるわけですね。オルタナティブというフォーマットは貫きつつ?

マヤ 私的にはけっこうガラッと変わるつもりもあるんですけど。

―― あ、そうなんですね。

サチ 結局、マヤが作る楽曲に収まるというか。何をやっても大丈夫な感じがするんで。

―― そこには自信があるんですね。

マヤ いろんなことをやっていきたいなと思ってます。

―― 新しい楽曲はどんどん生まれてるんですか?

マヤ いやー、ちょっと……

サチ のんびりって感じですかね。数としては少ないけど、いい曲はできてます。

マヤ ありがとう(笑)。

© 2021 DONUT

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INFORMATION


『THE PLANET TIVA part.1』
2020年12月16日(水)リリース
収録曲:1.Go back our home 2.Cloud nine 3.Sober 4.If I find my shoe 5.Sweet Liar 全5曲
CD:https://tower.jp/item/5135315/THE-PLANET-TIVA-part-1 <タワーレコード限定>


『THE PLANET TIVA part.2』
2021年2月17日(水)リリース
収録曲:1.I want nothing to do any more 2.Kids1 3.Kids2 4.Monday 5.YOLO 6.Sunny Side 全6曲
CD:https://tower.jp/item/5149958/THE-PLANET-TIVA-part-2 <タワーレコード限定>


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