DONUT

2020.12.23 upload

ザ・クロマニヨンズ 配信ライブ・レビュー

「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 全曲配信ライブ」
2020年12月11日(金)

●撮影=柴田恵理 文=森内淳

2020年12月11日金曜日。ザ・クロマニヨンズは配信ライブのカメラの前に立った。「そろそろやるよー! オーライ、ロックンロール!」という掛け声と共に「VIVA! 自由!!」でライブはスタートした。毎年、ニューアルバムのリリースと同時に全国ツアーを行っているクロマニヨンズ。毎年50本以上のライブをこなしている。今年はコロナ禍でそれも叶わず。かわりにニューアルバム『MUD SHAKES』の収録曲を全曲配信するライブを行った。



なぜ全曲配信ライブなのか。ここ数年のクロマニヨンズのライブは新譜の収録曲すべてを演奏するのが恒例となっている。それはプロモーションというよりも、キャリアを積めば積むほど、楽曲は増え、やがてはライブで演奏されなくなる曲も出てくる。それはどのアーティストにも言えることだ。ならば、新譜のタイミングで一度はライブで披露しようというわけだ。そういう意味でもクロマニヨンズの毎年のツアーは一期一会。去年見たから今年はいいやっていうわけにはいかない。毎年足を運んで一曲一曲を全力で楽しむ。それがクロマニヨンズのライブに行く醍醐味のひとつだ。



「暴動チャイル (BO CHILE)」「浅葱色」……ライブは『MUD SHAKES』の曲順通りに進んでいく。演奏場所は倉庫のようなところ。彼らのスタジオだと思われる。そこにアルバムジャケットの絵画や歌詞カードの裏面のオブジェなどが無造作に置かれている。照明は必要最小限。ステージを照らすライトは派手な色で彩られているものだが、今回は白一色。凝ったカメラワークも、演出もない。ただただロックンロールを解き放つ甲本ヒロト(vo)、真島昌利(gt)、小林勝(ba)、桐田勝治(dr)の姿だけが映し出される。



ロックンロールは楽しい。ロックンロールは面白い。そしてロックンロールは凄まじい。ロックンロールの凄まじさはブルースを聴いたときに感じる凄まじさに通じている。むき身の演奏、むき身の歌が心を鷲掴みにして離さない。そこに高揚感を見いだせたとき、ロックンロールが閉ざされた扉を開け放つ。幼児性に逃げ込むエンターテインメントとは正反対の世界。それを配信ライブで浮かび上がらせた。そこには英国における初期のパンク・ムーヴメントの匂いや、あるいは鬱屈したアメリカの子どもたちがガレージでギターを握ってR&Bから派生した英国製のロックンロールを鳴らした瞬間の景色が浮かび上がる。余計な装飾をすべて削ぎ落とし、演奏する姿・様だけを晒すクロマニヨンズの姿はガレージ・ロックの原点を見ているかのようだ。



とはいえ『MUD SHAKES』はロックンロールの初期衝動だけで彩られた作品ではない。ロックンロールはもちろん、皮肉やユーモアやロマンチックさまでも内包したアルバムだ。それが「演出なき演出」というフィルターを通すことで、それぞれの楽曲の特徴がより際立っていた。激しい曲はより激しく、切ない曲はより切なく響く。「ドンパンロック」「妖怪山エレキ」「ふみきりうどん」のような速い曲ではない曲に、むしろ心の奥底をかき混ぜられるような感覚に陥った。そこにはレコードからは見えなかった『MUD SHAKES』の風景があった。また、「演出なき演出」はモニターの向こうの演者とこちら側の視聴者との距離も縮めていた。配信ライブは画面越し故に見ている側とバンドに距離を生む。しかも甲本もMCで言っていたが配信ライブは何かをやりながら見ることができる。ところが今回の配信ライブは「ながら」さえも許さない緊張感があった。クロマニヨンズは「演出なき演出」を実行することで、配信ライブの弱点を克服していた。



必死で画面に食らいついているとあっという間に最後の曲「かまわないでくださいブルース」まできてしまった。「どうもありがとうございました」という挨拶と共に画面は暗転。「もう終わりなのか」と呆然としていると、4人が再び画面に登場。「よく聞こえないけど、アンコールの声がかかっているような気がします」というMCに続き、シングル「暴動チャイル(BO CHILE)」のカップリング曲「東京ブキズキ」を演奏。つづいてファースト・シングル「タリホー」のカップリング曲「クロマニヨン・ストンプ」を演奏してむき出しのロックンロール・ショウは終了した。本当にあっという間のロックンロール体験だった。こんなライブを見せられると、俄然、生演奏が聴きたくなってしまう。そう思っていたら、最後に2021年2月20日(土)東京ガーデンシアターでの有観客ライブ&生配信決定というテロップが流れた。先の見えないモヤモヤした毎日がつづくが、ぼくたちにはロックンロールがある。そういう気分で2月20日を迎えたい。

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INFORMATION

ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021 ライブ&生配信
2021年2月20日(土)東京ガーデンシアターにて「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021 ライブ&生配信」が決定。チケット発売など詳細は2020年12月24日(木)21:00〜クロマニヨンズの公式サイトにて発表。



ザ・クロマニヨンズ『MUD SHAKES』
2020年12月2日(水)Release
収録曲:1. VIVA! 自由!! 2. 暴動チャイル(BO CHILE) 3. 浅葱色 4. 新オオカミロック 5. カーセイダーZ 6. ドンパンロック 7. 妖怪山エレキ 8. メタリックサマー 9. 空き家 10. 新人 11. ふみきりうどん 12. かまわないでくださいブルース


※ LIVE INFORMATION は公式サイトでご確認ください。


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