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2020.12.18 upload

THE BOYS&GIRLSインタビュー

誰もやってないけど、そんなのどうでもよかった。俺たちはそれでやりましょうって感じでした
――ワタナベシンゴ

配信ツアーという形でTHE BOYS&GIRLSが8月23日からスタートした全国ワンマンツアー「少年少女の灯火」が、札幌、福岡、旭川、広島、大阪、高松、根室、釧路、名古屋、東京、函館、仙台編を経ていよいよ12月19日(土)にファイナルを迎える。このツアーは全て札幌から生配信されてきたもので実際に各地へ赴いてライブを行ったわけではない。しかし開催地から寄せられた映像で編集されたオープニングではまるでその土地を歩いているような感覚が生まれ、ステージのバックにはその日のライブハウスを模した手作り看板が。そしてライブが終わると毎回、各会場の店長やスタッフとリモートでつながるアフタートークを配信。札幌からだけど、ツアーに参加した人たちはそれぞれがあの日は福岡で、あの日は広島で、あの日はたしかに東京公演だった、という体験をしたと思う。ニューアルバム『大切にしたいこと』のリリースツアーや自主イベントなどが中止となり、コロナ禍において以前のようにライブができない中で「じゃあこんな方法でやってみよう」と光を灯すこの熱量こそTHE BOYS&GIRLSそのものだ。今回DONUTでは、ファイナルを前にワタナベシンゴのメールインタビューをお届け。本気で回ってきた“ツアー”のファイナルはなんと無料配信。12月19日はぜひ、オープニング映像から見てください。

●取材・文=秋元美乃

―― 生配信で全国ツアーを開催しようと思ったのには、何かきっかけがあったのでしょうか。

ワタナベシンゴ きっかけとして挙げるなら、5月から8月にかけて予定していた全国ワンマンツアー『少年少女の星屑』を中止に決めたことです。あの瞬間に、「じゃあ別の方法を探さなきゃ」となりました。

―― 全国ツアーの発表は6月だったかと思います。今でこそ増えてはいますが、その時点で「配信ツアー」という形を発表したのはTHE BOYS&GIRLSがかなり早かったと記憶しています。手探りの活動が続く中、大きなことへの挑戦に不安はありませんでしたか?

ワタナべ 不安はなかったけど、どうなるかは正直わからなかったです。あの時期は色んなアーティストのイベントやツアーが延期や中止になっていって、その度に代替案として配信で1本ワンマンをやったりとかが増えてきていた時で、「配信ワンマンツアー」をやると動き始めていたアーティストは、僕の知る限りではいなかったので。ただ漠然と「これならやれる」という気持ちでした。苦肉の策ではなく、どうなるかはわからないけどこれならやれるという気持ち。スタッフ陣と話し合っている時も、例えば「ワンマン1本でいいんじゃないか?」と言われたりもしましたけど、僕は“ツアー”をやりたかったので。だからといって、各地に行くことは勿論のことお客さんを入れることもできなさそうだし、6月頭の時点でできる最大限の判断は「ライブを伝えるとしたら配信しかない」ということだったので、だったらそれで全国に“行く”という一択でした。誰もやってないけど、そんなのどうでもよかった。俺たちはそれでやりましょうって感じでした。

―― 各地ごとのオープニング映像や、ステージのバックに掲げるライブハウスの看板など、見る度に本当に各地のライブに参加しているようでした。あれは誰の発案だったんでしょうか。また、毎回準備が大変だったかと思いますが、そうしようと思った経緯や、込めた思いなどもあれば聞かせてください。

ワタナべ 大変か大変じゃないかで言ったら、大変でした。ツアーは大体週イチくらいのペースで公演があって、毎回同じ場所(札幌mole)からの配信で、でも気持ちは全国を飛び回っていて。やることも、考えることも、もしかしたら普通にツアー回るより多かった気がします。でも、「普通」なんてそもそもないから、これまでの「普通」と今回を比べたところで何にもならないなという気持ちもあったので、大変だったけどキツくはなかったです。オープニング映像や看板とかは大体自分の発案だったとは思うけど、そこから派生してライブ中の演出だったり細かいところとかは、どんどんチームのみんなからも出てきて、それをみんなで構築していった感じでした。あとは何より、ただ見るだけに留まらず実際に行動してくれたお客さんの力もでかかった。ツアーってそういうものなので、限りなく“ツアーやってる”っていうところに持っていきたくて、自然とそういうアイデアが出たり、みんなの気持ちも動いていったように思います。

―― 「1人だけどちゃんとバンドだ」と話していましたが、回を重ねるごとにツアー中のバンド感がステージにも現れているように感じました。先日のセミファイナルまで12公演を経て、手応えはいかがですか?

ワタナべ どんどん面白く、かっこよく、そして馬鹿馬鹿しくなっていくメンバーたちが誇らしいです。やる度に僕以外の3人が褒められていくのが、すごく嬉しかった。だけど家に帰って一人で毎回泣いてます、もっと俺を褒めてくれって。なんであいつらばっかりって。冗談ですけど。

―― こういう形のツアーをしてみて、自分たちにとって大切な場所が各地に増えていたことを実感できたのでは?

ワタナべ まさにその通りです。ただでさえ、オープニング映像やライブ中の気持ちの持っていき方で、その街・そのライブハウスへの思いがドバドバになるんですけど、終演後に毎回やってきているアフタートークでは、ライブハウスの方とリモートでつないでお話をして。それがやっぱり大きい。結局やっぱり、目を見て話ができるってなによりも強いなと思いました。こんな時にこそ、目を見て声を聞ける時間を作れてよかったです。そしてそれをお客さんにも感じてもらえるから、尚更。それはきっと僕だけじゃなくてメンバーは勿論、このツアーに関わっているみんなが思ってるんじゃないかなと思います。

―― 今年7月には3rdアルバム『大切にしたいこと』のリリースがありました。シンゴさん以外サポートメンバーを迎えた新体制のなか、どのようなレコーディングでしたか?

ワタナべ レコーディング自体は2019年の秋頃から始まりました。ツアーや各イベントでドタバタしてる中でも新曲は作り続けて、スタジオでああでもないこうでもない言いながら。サポートメンバーたちに本当に感謝です。曲によってプレイヤーが全然違ったりするので、曲ごとにカラーが違うんですが、それが今のボイガルだし、1番いい形でそれが出せたと思ってます。歌入れは1番最後にやったのですが、ヘッドホンから流れてくるバンドの音を聴きながら、各曲毎回感動しながら歌えました。

―― コロナ禍の前に作られたアルバムですが、タイトルしかり収録曲しかり、聴く人の心に灯りをともしてくれるような、2020年に届くべきアルバムになったと思います。改めて、手応えはいかがですか?

ワタナべ 正直、物理的にもっともっと届いてほしいという一心です。数的にも。でも2020年にしか届かないアルバムとは思っていないので、これから少しずつでもその数が増えるといいなとは思ってます。例えばこの先また新しい作品を出すことになっても、このアルバムはいつになっても同じように新鮮な気持ちで誰かに差し出せるかなと思ってます。

―― 『大切にしたいこと』というタイトルは、どんな思いでつけましたか?

ワタナべ 大切にしたいことを詰め込みたかった、そして詰め込めた、それだけです。

―― いろいろな“大切なもの”が浮き彫りになった1年だと思いますが、シンゴさんにとって音楽への向き合い方や心境の変化などありましたか?

ワタナべ 音楽への向き合い方はそこまで変わってないかもしれないですが、自分にできることは何かな? 大切にしなきゃいけないことって何かな? っていうのは考えるようになりました。結果、それが音楽につながっていったかなという感じです。

―― 色々なことを考え直したり、考え直さざるを得ない状況もあったかと思います。その中で、何か改めて気づいたことや、改めて見えてきたことなどはありましたか?

ワタナべ どんな時でも、挨拶をちゃんとすること。諦めず話してみること。諦めず話を聞くこと。まずはそこからだなということに改めて気づけたし、それがまだまだできていない自分にも気づきました。

―― いま、THE BOYS&GIRLSはどんな道を歩いていますか?

ワタナべ ずっとケモノ道。いつになったらピカピカの平らな綺麗な道を歩けるんですか……。

―― 今後の予定や考えていることなど、可能な範囲で教えてください。

ワタナべ 年が明けてすぐ全てが元に戻るとは思えないので、2021年初旬は、2020年がある程度地続きとなっての動きになると思います。ライブもそんなしないと思う。だけどその分やれること考えられることは山ほどあるので、必死になってようと思います。ライブがないからといって活動休止なわけじゃないので。まずはこの厳しい冬をどう越えるか。そして、どんな顔して春に向かうか。好き勝手やります。

―― では最後に、12月19日(土)札幌KLUB COUNTER ACTIONのファイナルに向けて、メッセージをお願いします。

ワタナべ ツアーファイナルです。無料です。生配信です。ようやくツアーが終わります、はやく終わらせて次に行きたいです。せっかくなので道連れにする人たちを増やしたいです。なので、道連れになってください。よろしくお願いします。

>>ワタナベシンゴのプレイリスト連載「続・ワタナベシンゴの10を持て」

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INFORMATION

THE BOYS&GIRLS 全国配信ワンマンツアー「少年少女の灯火」
ツアーファイナル
札幌CLUB COUNTER ACTION編
2020年12月19日(土)
OPEN 19:30/START 20:00
※THE BOYS&GIRLS公式YouTubeチャンネルにて無料生配信
ファイナル公演特設ページ:https://www.theboysandgirls.net/live00



AL『大切にしたいこと
2020年7月1日(水)リリース
収録曲:1.風花が吹いたら/2.少年と少女/3.卒業証書/4.東京/5.国道恍惚線/6.ロックンロール/7.ミスターラッキーオールド/8.陽炎/9.ビーアライブ/10.カーテンコール/11.朝が来る前に

※LIVE INFORMATION は公式サイトでご確認ください。


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