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2020.11.17 upload

ザ・コレクターズ インタビュー

自分の還暦を歌うんじゃなくて、2020年に思ったことや感じたことを歌おうって思ったんだよ(加藤ひさし)
今こそこういうロックンロールが必要だと思うのね。そんなアルバムだと思う(古市コータロー)

ザ・コレクターズの24枚目のオリジナル・アルバム『別世界旅行』がリリースされた。コロナ禍という特殊な状況の中で録音されたこのアルバムはコレクターズの真骨頂といっていい作品に仕上がった。コンポーザー加藤ひさしのオリジナリティが100%発揮され、コレクターズにしかできないロックンロールとポップな世界が展開されている。84年のカーズような「お願いマーシー」。77年のレインボウのようなヘヴィ・ロック「全部やれ」。67年のビートルズを思わせる「ダ・ヴィンチ オペラ」。としまえんをテーマにした「夢見る回転木馬」なんて曲もある。何をやれば大衆に寄れるかということよりも、今、コレクターズが歌わずにはいられないこと、やりたいことにフォーカスされた傑作だ。『UFO CLUV』や『東京虫BUGS』に匹敵する内容だが、メンバー自身は混乱と戸惑いの中でアルバムを制作したという。このアルバムが完成するまでの経緯と加藤ひさしが歌わずにはいられなかったことを訊いた。

●取材・文=森内淳/秋元美乃

――新作『別世界旅行』が完成しました。コレクターズにとって24枚めのオリジナル・アルバムです。

加藤ひさし コータロー君さぁ。東京大家族とかで子供が15人いる人がテレビに出てくるじゃない?

古市コータロー うん。

加藤 6人めくらいからわかんなくなっちゃってるんだよね(笑)。「あれ、うち、子供何人なんだっけ?」って。産んだお母さんが「15人よ!」なんて言ってね。それと同じ感覚で何枚作ったかわかんないよね。

―― 24枚はすごいですよね。

加藤 バンドを続けていくために少なくとも2年に1枚とか早ければ1年半に1枚ずつくらいアルバムをリリースしていかないと、それを中心にツアーも組まれるし、レコード会社だってリリースものがなければ疎遠になってくるしね。出版社もそうだし。そこにスタッフがいる連中と仕事ができなくなる。そうやってリリースしていくと、来年で35周年だから、まぁ24枚めになっちゃうかなという。

―― ただ1枚ごとに達成感が違うと思うんですが、24枚めに関してはどうですか?

古市 今回は作品に集中できたね。

加藤 ライブがなかったからね。

古市 かもしれないね。ずっと曲のことを考えていられたね。

加藤 集中できたってところは俺もそうなんだよ。それは(コロナ禍で)ライブがなかったからっていうのが一番なのね。コレクターズは3ヵ月とか4ヵ月でアルバムを完成させるんだけど、その間に必ずライブが1本か2本入ってくるから。そうなるとライブの頭になって2週間くらいはレコーディングのことがまったくできないっていう状況になるんだけど、今回はライブをやりたくてもやれないような状況だったんで、歌詞も10曲の収録曲に対して12曲から13曲分作っちゃったしね。

―― いつも歌詞ができなくて悩んでいる加藤さんとは全然違いますね。

加藤 歌ってみて駄目だって言って、全部ゼロから作り直すっていうような作業もやったのね。

―― それは今までになかったことですね。

加藤 やっぱりライブがあるとそこまではいかないんだよ。ちょっと歌詞を改良して歌い直そうとか、ひっくり返すまではいかない。今回、それがやれたっていうことはそれだけ集中できていたのかなって思う。

―― ただコロナ禍のレコーディングによる弊害もあったと思うんですが。

加藤 元々このアルバムは9月にリリースするつもりで話が進んでいたんだけど、コロナの影響でスタジオもリハーサルスタジオも閉まり、人に会えないっていうところで2ヵ月ずれたっていうことかな。自分の中でプランニングしていたことがずれ始めてから、いつレコーディングをスタートしていつ終わればいいのかが全く見えなくなった。そうこうしているうちに「来週やれそうだからやろうか?」とか、そんな状況でレコーディングが始まったもんだから、いつ始まっていつ終わったのかがわからない。そんな不思議なアルバムなんだよね。

―― 終わりもわからなかった?

加藤 音を詰め込んでいってたら締切がきたので、音を整理して作りましたっていう。「レコーディング、お疲れさまでした!」みたいな印象がまったくないアルバムなんだよ。1曲1曲はすごく集中して作ってるんだけど、アルバム全体を見渡す余裕がないというか。(プロデューサーの)吉田仁さんも他のアーティストを抱えてたから、そっちもスケジュールがずれていって、ミックスダウンをするのにものすごく時間がかかったからね。ミックスダウンに入ってからどんなことをやろうとしていたのか忘れることもあって、何かどこかで宙ぶらりんのまま仕上がったというか。そうやって翻弄されながら作ったアルバムかな。

―― 古市さんも同じ印象なんですか?

古市 やっぱり今、リーダーが言っていたような感覚に似てて、知らないうちに終わってたっていうところに今もまだいるんだよ。

加藤 コータロー君は特にそうだと思う。なぜかと言うと(コロナ禍で)いつものようにスタジオに来てないし、スタジオに呼んでないから。いつもだったら何か試したいことがあったら、コータロー君を呼んで、「ここのギターをもうちょっとやってみたいんだけど」っていうふうになるんだけど、今回はコロナのせいでよっぽどじゃない限り呼ばないようにしたの。キーボーディストとも会ってないしね。そういう世界で始まって終わったから、仕事した感があんまりないんだよね。だから、一番仕事をした感じがするのが(ザ・クロマニヨンズの)マーシー(真島昌利)にミュージック・ビデオに出てもらったことくらいなんだよね。

古市 そうね。

―― そんなことないでしょ(笑)。

古市 いや、本当にそうなんだよ。

加藤 それぐらい人に会わないレコーディングだったんだよ。メンバーにも会ってないわけだから。でね、ライブがなくなってバンドが集まれる時間がなくなるでしょ? そうなるとちょっとしたリズムのズレが生まれるんだよね。たった数ヶ月会わなかっただけでね。しかもレコーディングのためのリハーサルもそんなにできなかったし。マスクをしながら歌ってたこともあったからね。リハはいつもの半分くらい?

古市 いや、もうちょい少ないかもね。

加藤 演奏を合わせるとかじゃなくて、曲を覚えたっていう時点でレコーディングがスタートしたんだよ。覚えただけじゃ駄目なんだよ。馴染まなきゃ。どんなに頭の中に曲のパターンが入ってても、身体がピタッてこないんだよ。その辺はアスリートと一緒だと思う。アスリートの人たちは今活動ができていないから、次のオリンピックがあったとしても新記録は出ないと思うんだよね。それにすごく近い。

―― 曲には集中できたけど、バンドのグルーヴを出すところで弊害があったわけですね。

加藤 だからレコーディングに入ってからがすごく大変で、いつもだったら3回録ればOKなところを6回録ってもOKが出なかったりね。そうなってくるとメンバー間もピリピリしてくるから、よくないよね。

古市 俺は心配性だから家でものすごくギターの練習はしたんだよね。個人的にはちゃんと準備はできていたんだけどね。だけど、最後はメンバー間のバランスだからさ。

加藤 本当にそう。バランスなんだよね。

古市 スタジオで合わせてないからね。それぞれが準備OKでも同じに仕上がっていってないからさ。

加藤 家でそれぞれが仕上げててもバンドとしての走り込みが足りないというかさ。

古市 そうなんだよねぇ。

加藤 みんなが「せーの!」で走った時にバラついてくるんだよね。これがいつものようにライブをやっている状況だったら、少し間が空いてレコーディングに入ったとしても、息が合うんだよ。ここまで空くと急にバラバラ感が出てくる。そういうことを今まであまり経験してなかったから「こんなに合わないんだ?」って感じになっちゃって。一番難しかったのはボーカルとドラム。身体を使って表現するパートだからね。体力が落ちたら体力が落ちた分が歌や演奏に出るからね。だけど、予算もあるし限られた日程でしかできない。そうしたらやりきれないといけない。仁さんがさすがだなと思ったのは「これでいいよ」って言うんだよね。「あとはどうにかしましょう」って。メンバーが集まれないっていうのがこんなに大変だとは思わなかった。

古市 アルバムとしては好きだよ。だけど自分のギターの音色とかね、「うーん」っていうところもある。

加藤 コータロー君が言いたいこともよくわかる。いつもだったら俺が歌った後にもう一回ギターを弾いてもらうんだよね。バラードの最後にギターを入れたりね。そうするとコータロー君は歌を聴いて一番いいギターを弾いてくれるわけ。そういうことが今回はできなかったりしたんだよ。ただ、果たしてそうした方がよかったのか、今のままの方がよかったのかはわからないけどね。

―― アルバムの内容もコロナの影響が見られていて、終わりゆくものをテーマにした曲、新しく始まることをテーマにした曲とわかれています。

加藤 去年、コータロー君たちと話をしていたのが、今年は俺が還暦になるから加藤ひさし還暦祝いの年にするぞ、と。熊谷の八木橋百貨店にローリング・ストーンズ展でメンバーが住んでいた部屋を再現したように「加藤ひさし中2の部屋」も作るぞって、そんな馬鹿なことをずっと考えてた。だから歌詞の内容だって、昔、「30」っていう曲を書いたでしょ? それの倍の「60」っていう歌を作った方がいいとか、去年の段階ではコロナのことなんか微塵も歌う予定がなかった。ところがこの世の中の変わりようの中で、自分の還暦のことなんかどうでもよくなったんだよ。そんなことを歌っている場合じゃないって。全部をチェンジしなくちゃいけなくなった。歌詞の内容から曲調からね。自分の中で予定していたものがそうじゃない形になったから余計に始まった気もしないし終わった気もしないのかもしれない。

―― このアルバムに着地するまで紆余曲折があったんですね。

加藤 こんなコロナの状態だから、どんな歌詞を書こうか、全然、浮かばなかった。そんな中でコータロー君が大型バイクの免許をとりに行ったんだよ。俺にとってもオートバイって男のロマンだったし、どこまでも連れて行ってくれる道具なんだよね。16歳の時に原付きのオートバイの免許をとった時のことを思い出したんだよね。それで「オートバイ」っていう曲を作ったんだよ。だから自分の還暦を歌うんじゃなくて「2020年に思ったことや感じたことを歌おう」って思ったんだよ。だから「夢見る回転木馬」でとしまえんのことも歌ったしね。そうやって「2020年を歌うんだ」っていうことになってからちょっと楽になったかな。

―― 終わりゆく世界とこれからの世界を歌った曲が混在しているところがとてもいいと思います。

加藤 現状を歌っただけなんだけどね。だけどそこには希望も欲しいしね。「お願いマーシー」だって、「この世の中はどうしようもないから、マーシー、とにかくギターをずっと弾いててくれよ」ってお願いしてるだけの話だからね。「香港の傘」だってそうだしね。ずっとデモをやってて、あれが最後には自由の花になって欲しいなって思って書いた曲だから。だけどそこには希望や願望はあるんだけど明確な答えはどこにもなくて、答えがあるとしたら「チェンジ」っていう歌で歌っているように「これから遠回りするんだよ」っていうことだよね。俺たちは進化や進歩を続けてきたわけだけど、これからはどこかで後ろに下がらなきゃいけない。それは別に恥ずかしいことじゃなくて、それをやらなきゃいけないんだってことがコロナ禍でわかったことなんだよ。遠回りになったとしてもギアを落とす時が来たっていうことだよね。それを覚悟しようよっていう。それが唯一の答えかな。

―― 「お願いマーシー」はまさにロック・ファンの気持ちを代弁してますよね。

加藤 今年は還暦を祝うつもりだったから、「お願いマーシー」は元々「When I was a young boy」って歌ってたの。自分が10歳の頃はトランシーバーが宝物で20歳の時はモッズが好きでっていうのを歌ってて、60になったらこんなになってたよっていう歌にするつもりだったんだよ。

―― それもいい歌ですね。

加藤 それを歌うつもりでずっと作ってたの。だから仮歌も「When I was a young boy♪」って歌ってたんだよ。だけど、そんなことを歌ってる場合じゃないなってことになったわけだよ。緊急事態宣言くらいの時にね。ライブにも行けないしクラブにも行けない。じゃもう音楽を聴くしかない。これはマーシーにギターを弾いてもらう歌しかないだろうって閃いてマーシーに電話して、「マーシー、こんな歌を書きたいんだけど」って言ったら、「光栄です」って言われて(笑)。それで「When I was a young boy」が「お願いマーシー」にチェンジ。で、レコーディングをしている時に、マーシーのことを歌ってるんだったら、マーシーに来てもらったらもっと面白いんじゃないかと思ってオファーしたら快く引き受けてくれて。ギターを弾いてくれたから「ミュージック・ビデオどう?」って言ったら、「いいよ」って言って。で、ビデオまで出てくれることになったんだよね。でもよかったよね。歌詞のコンセプトもよかったし、コレクターズはなかなかそういうコラボとかもやらないし、こういう形で元々知り合いのマーシーとプレイできたしね。

―― そうやって2020年の状況下でどんどん曲のテーマが変わっていったわけですね。

加藤 「夢見る回転木馬」も全然違う歌詞がついてたんだよ。

―― としまえんの歌ですね。

加藤 ところが歌っててもあんまりしっくりこなくて。「ニーチェを胸に」っていう歌だったんだよ。

―― 全然、違うじゃないですか。

加藤 悩んだ時はニーチェなんだよっていう歌を書いてたのね。歌ってて全く面白くなかった。字面で見ると面白いと思えるんだけどね。ボーカル録りもちゃんとやったんだよ。でも「もう無理」って思ったところで「今年、何が起こった?」と問い返したら「としまえんが終わった」と思って。いきなり「信号曲がればとしまえん♪」って出てきた。「おー、いいな、これ」と思って。「伊東に行くならハトヤ♪」と一緒だと思って(笑)。

―― 加藤さんっぽいユーモアですね(笑)。

加藤 これで歌ってみようって歌ったものをコータロー君に送ったら「本当にとしまえんでいいの?」ってメールが来て(笑)。

古市 俺は個人的にはものすごくいいと思ったんだけど。

加藤 あ、いいと思ったんだ?

古市 リーダーのソングライティングの履歴としていいの?ってことだよ。

加藤 ああ、そういうことね。

古市 俺は全然いいと思うよ。

加藤 コータロー君は「ニーチェを胸に」の時にその場にいたんだよね。歌った時に「いいね」って言葉が返ってこない時にはよくないんだよ(笑)。で、仁さんもいいねって言わないし、コータロー君もいいねって言わないから、この曲はみんなピンと来てないんだなって思ってたんだよね。自分で歌っててもピンと来なかったし。そう思ってた時にいきなりとしまえんにしたからね(笑)。全然、歌詞が変わってるわけだよ。だけどね、「ニーチェを胸に」が「夢見る回転木馬」に変わったことによってアルバムの色も随分変わった感じがするんだよ。「夢見る回転木馬」がなかったら、このアルバムを聴いた時に明るい気持ちにはなれなかったと思う。

―― 「リグレイ・チューイング・ガム」じゃないですけど、架空のCMソングの流れっていうのもありますからね。この曲もひじょうにコレクターズっぽいというかコレクターズにしかできない曲というか。

加藤 そうそう、本当に。でも切ない歌なんだけどね。

―― としまえんは終わりましたからね。

加藤 終わっちゃったからね。だけどこの曲が入ることによって、「さよならソーロング」の子供時代が終わっていく感じがまた余計に響くだろうしね。だからいろんな意味で「夢見る回転木馬」がこのアルバムにとってすごくキーポイントになっているんだなって思うんだよね。

―― たしかにこの曲があるとないとじゃ印象は違いますね。

加藤 としまえんという実在した場所をしっかり歌えたことによって、すごくリアルな感覚をこのアルバムが持てたと思うんだよ。この歌には嘘がないからね。コータロー君はさんざんとしまえんに行ってるし、俺たちがやってるポッドキャストの中でもとしまえんの話題は何度も出てくるし。ビートルズにおける「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」だったり「ペニー・レーン」だったり。そういう立ち位置になってくれればいいなって思う。

―― 歌詞はそうやって「2020年の今」にフォーカスされたわけですが、曲に関してはどうだったんですか?

加藤 例えば「全部やれ!」っていう曲はこのコロナという状況の中で、とにかく鬱憤がたまっているわけだよ。「激しいロックンロールをとにかく歌いたい」「聴きたい」っていう思いで作った。こういう状況じゃなかったら、もしかしたら「全部やれ!」みたいな曲はできなかったかもしれない。「ダ・ヴィンチ オペラ」のようなコンセプチュアルな(ビートルズの)『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 』に影響されたような、自分が一番好きな世界の、もっとミディアム・ロック的なものが増えたかもしれないね。

―― そうやってコロナ禍で紆余曲折はあったものの、リスナーの勝手な印象を言わせてもらうと、コンポーザー加藤ひさしの世界が炸裂した名盤というか、軸足のしっかりした作品に聴こえるんですが、本人はどう思っているんですか?

加藤 曲としてはやっぱり自分の中にたまっているものしか出てこないじゃない? コロナのことを歌おうが自分の還暦のことを歌おうが同じようなメロディの曲しか作れないと思うんだけど、自分の中では予定してたものとは違うんだよね。逆に言うと、加藤ひさしの中に詰まっているものはこういうものなんだっていうのを認識できたけどね。

―― それこそ「全部やれ!」も「ダ・ヴィンチ オペラ」も「夢見る回転木馬」も「オートバイ」もあるという、いわゆる加藤ひさしの世界を臆することなく全開にすることに対して、加藤さんが開き直れたのかな、という印象もありました。

加藤 今までだったら、その時に流行っている音楽だったり、ちょっと前に夢中で聴いてた曲の影響をすごく受けるわけ。例えばオアシスが流行っていたらオアシスみたいな曲を書いてみたいな、とか。そういうのが全くない中で今回は自分を出したんだよね。開き直れたというよりも、そういうものでしか俺は作られてないんだな、と思った。そうなると昔よく聴いていたウイングスとかの音楽が出てきちゃう。「お願いマーシー」なんかは80年代によく聴いてたカーズっていうバンドだったりね。そういうものしか自分の中に溜まってないんだよね。そういう要素が出てきた感じなのかな。

―― だから大衆を意識しすぎないというか、その辺のバランスがすごくいいように思ったんですが。

加藤 大衆を意識している暇がなかったね。

―― そこが逆にポピュラリティのある作品に着地したように思うんですが。

加藤 そうなのかなぁ。

―― 今作を聴いて、最初に「コレクターズはマニアックになればなるほどポップになるんだな」と思いました。

加藤 ああ、なるほどね。

―― そういう印象がすごくありましたね。

加藤 開き直りということで言うと、このアルバムが出てもプロモーションができないんだよね。いつもだったら俺とコータロー君でラジオ局をまわるんだけど、それもできない。インストア・イベントもできない。ライブ会場でも売ることができない。そうなった時に、「このアルバムってなかったことになるかもしれない」って思った。そう考えた時に売れそうな曲とかそんなことは全く意識しなかったね。

―― 「お願いマーシー」も「夢見る回転木馬」も「ダ・ヴィンチ オペラ」も、このアルバムのあらゆる部分がコレクターズにしかないコレクターズのペルソナを色濃く反映しているんですよね。だからこそこのアルバムはいいと思うんですよね。

加藤 大衆に寄り添う術がまだわかんないっていうのもあるけどね。

―― わからなくてもいいんじゃないですかね。

加藤 本当にその秘訣があるなら教えてほしいくらいわかんない。どうしたら大衆に寄れるのか。

―― 今回のアルバムが答えなんじゃないですか?

加藤 としか言いようがないんだけどね。「ダ・ヴィンチ・オペラ」を作った時にもっとマニアックでもいいな、と思った。もっと深みにはまってもいい部分はあるよなって。

―― タイトルの『別世界旅行』もいいですよね。こんなワードは他のバンドじゃ絶対にありえませんからね。コレクターズならではというか。

加藤 これも最初、どうかなと思って、コータロー君に「これを別世界旅行にしたいんだよね」ってパロディの元になっている『月世界旅行』の画像を送ったら「めっちゃポップ・アートじゃん」って言われたんで、「そう感じるんだ」と思って。「だったらこれは当たりだ!」と思ったんだよ。

古市 タイトルもいいと思ったよ。

加藤 だから迷うことなくそのまま進行したんだよね。

―― コロナ禍で我々は別の世界を生きているという。

加藤 そういうことだよね。全く別の考え方をしなくちゃいけなくなったからね。これからはもっと別のことも考えなきゃいけないだろうし。本当に別の世界を旅行するようなそんな世の中になってる。そういう2020年を刻み込むにはこのタイトルしかないなと思って。ジャケットも『月世界旅行』のパロディなんだけど、ロケット・ギターって言われてるマニアックなギターが実際にあって、それがロケットの代わりにウィルスに突っ込んでるイメージにしようと思ってた。

―― あ、そういうことなんですね。この月はウィルスという見立てもあるんですね。

加藤 そういうことなんだよ。よくテレビに出てくるウィルスがその色なんだよ。ただあんまりウィルスっぽくすると問題になるのかなと思ったんだよ。気持ち悪いと思う人もいるだろうし。だから惑星に見立てたんだよね。そういうジャケットなんだよ。深いんだよ、実は。ロックンロールがウィルスを駆逐するんだよ。

―― だからいろんな意味で攻めてる作品だと思うんですよね。いろんな特殊な状況があったにせよ、このアルバムは名盤だと思います。

古市 こういう時期だから守りに入ることも多いと思うんだよ。それの逆を行ったっていうかね。

―― そうです、そうです。

古市 今こそこういうロックンロールが必要だと思うのね。そんなアルバムだと思う。

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INFORMATION


24thAL『別世界旅行〜A Trip in Any Other World〜
2020年11月18日(水) リリース
収録曲:1.お願いマーシー/ 2.全部やれ!/ 3.ダ・ヴィンチ オペラ/ 4.人間は想い出で出来ている/ 5.さよならソーロング/ 6.夢見る回転木馬/ 7.オートバイ/ 8.香港の雨傘/ 9.旅立ちの讃歌/ 10.チェンジ

※LIVE INFORMATION は公式サイトでご確認ください。


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