DONUT

2020.07.08 upload

SA インタビュー

強いアルバムを作りたかったけど、どうしてもそこに到達できなかった。だけど、MATCHANが入って強いアルバムが作れた。そこが理想だったんだよね
―― TAISEI

SAがニューアルバムをリリースした。タイトルは『CALL UP MY COMRADES』。COMRADES(コムレイズ)とはSAのファンの総称。SAは去年、ドラムが脱退。新メンバーMATCHAN(dr)が加入した。いわば新生SAのスタートであり、MATCHANを受け入れるかどうかが鍵だったわけだが、コムレイズは歓迎。MATCANお披露目となった昨年のロングツアーはめちゃくちゃ盛り上がったという。今作はメンバーチェンジ後、初めてのフルアルバム。『CALL UP MY COMRADES』というタイトルには「バンドの危機を支えてくれたコムレイズにまずは届けたい作品」という気持ちがこめられているように思う。そしてこのアルバムでSAが提示した10曲のロックンロールは新生SAにしかできない新しいサウンドで彩られている。その核となるのがMATCHANのドラム。インタビュー中にも出てくるがSAの王道ソングまでも多彩なドラミングによって違う色に染めている。TAISEI(vo)の歌詞は変わらぬファイト・ソングだが、NAOKI(gt)が語るように。MATCHANを中心にしたサウンドによって楽曲に「ブライト」な手触りが生まれた。日常との苦闘よりもその先に見える希望やその苦闘をも楽しんでいるような余裕の表情すら垣間見える。KEN(ba)のベースは未知の領域に到達し、NAOKIのギターは今まで以上に炸裂。喉の不調で再レコーディングしたTAISEIのボーカルも勇ましさが増した。『CALL UP MY COMRADES』は屈強なロックンロール・アルバムだ。この作品に至った経緯をメンバー全員に訊いた。

●取材・文=森内淳

―― ニューアルバム『CALL UP MY COMRADES』が完成しました。レコーディングはいつ頃から始めたんですか?

NAOKI 去年の12月からかな。アップしたのが今年の2月。TAISEIの喉の調子が悪かったんで。

TAISEI 本当は3月発売で一回は完パケたんだけど、喉のせいでレコーディングが延びて。

―― それで3月からツアーをやる予定だったんですね?

NAOKI そうそう。

―― 喉は相当やばかったんですか?

TAISEI やばかったね、今回は。去年MATCHANが入って、新生SAのグルーヴと新しいSAを全国のコムレイズの連中に見せることをしゃにむにやって。だからライブの本数もすごくやったんだよね。それもあって、ちょっと喉を酷使したっていうのがあって。その流れでツアーが終わってレコーディングっていう感じでやったから、ちょっと喉にきたかな。

KEN ずーっとライブをやって、そのあとを曲作って、レコーディングしてって感じだったからね。

TAISEI いよいよ歌入れっていうときに喉がぶっ壊れちゃったから。だったら一ヶ月くらい休もうってことになって。その間は歌わず。……歌入れを再開したのが2月かな。

NAOKI そう。2月の頭ぐらいから再開した。

TAISEI そしたら録れるのよ、ばーっと。1日で3〜4曲、録っちゃうわけ。やっぱり休むって大事だなっていう(笑)。

―― 今はコロナのせいで休みすぎてますけど。

TAISEI そう。休みすぎて、逆に声が出ないっていう(笑)。喉が閉まってっちゃう。ヴォーカリストはみんな言ってるよ、「声を出してないと、かえって出ない」って。

NAOKI 喉も筋肉やからね。使ってないとね。

―― で、素晴らしいアルバムができたんですが、やっぱすごいですね、こちらの方が(笑)。

MATCHAN いえいえいえ。

NAOKI MATCHANでしょ?

―― 見事にバンドの危機を乗り越えたというか、新生SAを見せられたというか。

MATCHAN めっちゃ嬉しい(笑)。

TAISEI やっぱ相当違うんだよね。

―― 驚きました。

TAISEI ずっと同じメンバーでやってきたでしょ、17年とか18年とか。紆余曲折はあったけど、これがSAなんだなっていう、ある意味、それで納得しているところがあったんだよね。で、今回、メンバーが変わって、新しい血というかサウンドが入ったときに、こうも変わるかっていうのは自分でも驚いたね。

―― メンバーチェンジってバンドにとって深刻じゃないですか。最初はどうなるんだろうと思ってました。

TAISEI 音楽人生のなかであんまりメンバーチェンジっていうのをしたことがなくて。そういう意味ではバンドっていうのは4人で一つなんだっていうところを重要視しがちだったんだよね。だけどSAがこういうことになって、新しくなったときにいい方向に転んだというか。サウンドが立体的になったというか。

―― なりましたね。

KEN わりと休みが多かったから、YouTubeとかで前の音源を見ちゃうじゃないですか。たぶん出す音の捉え方が変わったんでしょうね。その立体感の違いとかをすごい感じますね。

TAISEI SAはパンク・バンドのなかではテクニックがあって、すごく表現力があって、いろんなアプローチができるバンドっていうふうに言ってもらえたけど、どこか自分らでは「もっとできるのにな」っていう思いをずっと抱えてて。今回、ドラムというバンドの屋台骨になるところの表現が変わることで、相乗効果で他のメンバーも変わっていくというか。歌もそうだしね。最近、インタビューでよく言うんだけど、ベースとドラムがガチっとしてたら、歌はその上で泳いでればいいんだよ。

NAOKI ギターも(笑)。

KEN それ言ったらね、ベースもそうなの。ドラムがしっかり音を提示してくれるとベースも乗っかれる。

MATCHAN リズム隊で細かく掛け合いはやっていますね。

KEN 新しく音楽ができてるなって感じがする。

―― MATCHANさんが入ってお披露目ツアーをやりましたけど、そこで感じた手応えが、TAISEIさんやNAOKIさんの楽曲作りに影響したことってありますか?

NAOKI そこまでの意識じゃないんだけど、例えば今回の音源のなかにはTAISEIが3〜4年前から寝かせてた曲もあって、かつてのSAではできなかったかもしれないという曲はあるよね。

TAISEI 4〜5年くらい前、俺は走ってたんだよね。もっと先のSAを見せなきゃっていう焦りがあって、そういう曲を書いてた。だけど、そのときには表現できなかったんだよ。それが今はできるんじゃないかって思ったのね。

NAOKI できるね。

TAISEI 例えば「1to10」っていうブルージーな曲だったりするんだけど。

―― いい曲ですね。まさに「1to10」は新生SAを象徴した楽曲ですよね。

TAISEI うん。

KEN かっこいいですよね。

―― リズム隊がガンガンくるという。

NAOKI シンバルとハイハットの音に責任感を感じるよね(笑)。

―― たしかに「1to10」は新しいSAを象徴していますが、実はこういう楽曲ってTAISEIさんの振れ幅のなかには今までもあったような気がするんですが。

TAISEI そうそうそう。

―― そこがついにSAで解放されたという、そういう印象でした。

TAISEI 今まではサウンド的にもパンク・バンドでなければいけないという窮屈さがあって。とくに5年くらい前に日比谷野音のステージに立ったときに、パンクという看板を守らなきゃいけないという使命感があったと思うのね。そこからどこかで脱却しないといけない、脱却したいとずっと思ってた。だけどその方法が何なのかわからなかったんだよ。で、ドラムが変わってわかった。ドラムなのよ。

MATCHAN いやいやいや。いろんなSAの表情のうちの一つを、僕が入ったことでお見せすることができたっていうことなんじゃないですかね。

TAISEI 謙遜しないでいいよ。だってインタビューが始まってずーっとMATCHANのことを褒めてるんだよ。

MATCHAN 嬉しいですけど(笑)。

NAOKI SAでいう鉄板的なファイトソングの「FLY FLY FLY」でも、俺は感動してるんですよ。あの曲もMATCHANじゃなかったらあんなふうにはなっていないです。

―― たしかにそうですね。

NAOKI すっごいですよ、あれ。破壊力が。MATCHANは破壊力も持ってるんです。

―― 「FLY FLY FLY」は言うなれば王道のSAソングですよね。歌詞も楽曲もね。

TAISEI そうそう。

―― だけど、何て言ったらいいのかな、戦ってるのに悲壮感がないというか。

TAISEI ああ、なんかわかるわ(笑)。

―― 重くないというか。

TAISEI わかる、わかる。

―― いい意味で。

TAISEI いい意味で。わかる、わかる。

―― もがきながら戦ってないというか。

NAOKI うんうんうん。

TAISEI わかってんなあ。それ、あるよ。

―― 歌詞は変わってないんですけどね。

NAOKI なのにブライトに聴こえてくる感じがね。それは俺もあるな。

―― それを今回のアルバムでは全体を通してすごく感じたんですよ。歌詞も楽曲もたしかにSAなんですよ。

TAISEI そこがでかいよね。悲壮感がないっていうのはたしかにそうかも。さっき言ったように、SAはアルバムをすごくたくさん出しているバンドなんだけれども、レコーディングが終わったあとに「この作品はいいんだけど、もっとやれたらいいのにな」という思いがあって。だからこそ次の作品に臨めるんだろうけど。だけどいつもこう「うーん……」っていうところがあったのね。それをライブで表現するときにはどうしても力技になったりしてたんだけど。MATCHANが入ってからは変な力が入らなくなったかな。スリーコードやってりゃロックンロールってわけでもないし、速い曲をやってりゃパンクってわけでもないし。そういうところに来れたかなと思う。今はもうSAというバンドのかっこよさしか見たくなくなったというかね。

―― この4人になっての初めてのレコーディングはどんな感じだったんですか?

KEN ライブの流れのまんまですよ。あんまりこう悲壮感がない感じで(笑)。

NAOKI 悲壮感なしで(笑)。「うーん……」というのはなくなったな(笑)。

TAISEI 俺ら、昔ね、「うーん……」っていうのは多かった(笑)。

MATCHAN コーヒー飲みながら煙草を吸ってて「じゃそろそろやりますか」みたいな感じで録っていきましたね。

NAOKI 2テイクくらい録って、MATCHANがOKだったら全然いいだろうって。

MATCHAN そういうジャッジの部分でも僕の意思をすごく尊重してくれたというか。ドラムのOKテイクが録れると、みんながそれに合わせてくれるようなところってありましたよね。

TAISEI ベースとドラムがベーシックなところをやっているわけだから、そこでいいトラックが録れて、そこにギターを重ねていくという、そのレコーディングの風景を見ててね、楽曲がよくなっていくことが楽しくてしょうがないわけ。

MATCHAN 僕とKENさんがリズム隊を録ったあとに、次の曲の打ち合わせをしていて。その間にNAOKIさんがギターを入れるんですけど、漏れてくる音を聴きながら「おーっ!」って(笑)。二人で「すごいのやってますね」って(笑)。そういうのをけっこう繰り返してましたよ。

TAISEI いいバンドになったねえ(笑)。

NAOKI でもなんかね、大事なアルバムだったんですよ、本当に。

TAISEI そりゃそうだな。

NAOKI 本当に前のドラムが辞めた去年の2月のことが考えられないくらに、去年の4月以降、いバンドがハッピーな方向に向かっていって。このメンバーで初めて出すアルバムだし、SAとしても2年以上ぶりのアルバムでしょ。すっごい考えたしね。もう後悔ないぞっていうくらいにまで掘り下げた自負はありますよ。

TAISEI 今までもアレンジは凝ってはいたんだけど、ライブではできない曲というのがあった。もちろん削ぎ落とすところは削ぎ落とすけど、たぶんこの感じで、全曲、ライブができると思うんだよね。「この曲はライブではやれないからやめておこう」っていう曲がないアルバムだと思う。今までは作ったはいいけどライブではできない曲があったからね。

KEN あったね。例えばダビングとかでいろいろ色付けして無理やり持っていった曲もあったんですよ。今回のアレンジは必然というか、そういうアレンジが入ることで楽曲がパワーアップするというか、アレンジが明るい材料になっているところってありますよね。

NAOKI 今回はリズム隊の仕込みがちゃんとしてた(笑)。俺ら、味付けだから(笑)。ベーシックなアレンジを二人でミーティングしてたりするから、それには乗りやすよね、味付けとしては。

―― このアルバムを聴くと、レコーディングの流れもスムーズだったんだろうなっていうことがわかりますよね。

TAISEI 歌以外ね(笑)。

―― ああ、そうか。

TAISEI だけどああいう経験が今までなかったからね。いい経験だったなあと思って。

MATCHAN 思い切り歌えてるTAISEIさんの姿を見るのはすごい嬉しかったですね。声が調子悪いなっていう状態で無理やりレコーディングをやるぐらいだったら、レコーディングを延期して思いっきり歌ってほしいなって思ってましたから。

TAISEI 結果的によかったかなという。3月に3曲配信して6月にニューアルバムを出して。面白い見せ方ができたのかなって思うね。今、考えればね。

NAOKI 深刻な状況がずっとつづいているなかで、自粛解除によってお客さんも少しずつ解放されていって、もっと自分の心のなかの欲に向き合えるようになったタイミングでSAのニューアルバムが出たのはよかったのかな。その段階で出たっていうのがね。

―― あとはライブですけどね。こればっかりはね。

TAISEI こればっかりはね。今まで当たり前だったことが当たり前じゃなくなったっていうことを受け入れるというか。やる側もそうだけど見る側も、コムレイズもそれを受け入れざるを得ないっていう。それがニューノーマルになるんだろうけど、そうなっていくんだったらそれを受け入れてやるしかないな、と思ってて。SAでいうところの「肩組めよ」とかSAコールとかは現状ではできないなかで、別にそれをやらないからってSAのライブが表現できないかって言ったらそうじゃないしね。徐々にこの状況を受け入れつつ前に進もうかなとは思ってる。

NAOKI ちょっと滑稽ではあるけど、そういうことになるよね。「心のなかで叫んでくれ!」みたいな。

―― 『STAND UP MY COMRADES』以来、SAファンを総称するコムレイズという言葉をあえてアルバム・タイトルに使ったのは何か思いがあるんですか?

TAISEI アルバム・タイトルをどうしようっていうときに「CALL UP」というワードがまずあって、「CALL UP」だけだとクラッシュの曲と同じになるから、ちょっとそれはアレだなと思っていたら、NAOKIちゃんが「じゃ MY COMRADESを入れようぜ」と。

NAOKI 『STAND UP MY COMRADES』からちょうど20年ぐらいの時間が経っていて、なおかつコムレイズがMATCHANを受け入れてくれたということもあってね。

TAISEI レコーディングする前に、去年さんざんライブをやっているなかで、歌詞にもすごく反映されているんだけど、何だかんだでレコードを作るということでいろんな人に聴いてほしいっていうのは当たり前のことなんだけどれども、メンバーが変わって「よしこのメンバーでやるぞ!」って言って、全国をワゴン車で走り回ったなかで、小さな街から大きな街まで、その土地、その土地で待っててくれてる奴らがいたわけよ。そいつらに向けて何かを届けるとか、感謝も込みでね、それをね、表現するためには『CALL UP MY COMRADES』というタイトルがいいのかなっていうのがあって。すごく乱暴な言い方なんだけど、レコードなんていうのはいろんな人に聴いてほしいっていうのはあるんだけど、今、最初に感謝するのはSAを待っててくれてて、ついてきてくれたコムレイズなのかな、と。

NAOKI メンバーチェンジしたのにね。

TAISEI うん。

NAOKI MATCHANが入って50何本ライブをやったけど、どの会場でもMATCHANコールがすごいんです。嫉妬するくらいMATCHANコールが起こるんですよ(笑)。

MATCHAN 最初からみんなが僕のことを「MATCHANはいい奴なんだ、よろしくな」ってずーっと言ってくれたのが本当に感謝しかなくて。

KEN また謙遜してる(笑)。

MATCHAN そういうことを家でこのアルバムを聴きながらいろいろ思い返してて、そういえばみんないろいろやってくれてたなと思って。

TAISEI 下北沢シェルターでMATCHANが初披露だったんだけど、あそこまでウェルカムになるとは正直思わなかったね。やっぱりうがった目で見るじゃない。「どうなるんだよ、SAは」って。「これがSAかよ」って言う奴もいるんだろうなって思ってたからね。ところが、いねえんだよ、これが。

NAOKI 本当にいなかったんだよ。驚いたね。こんなに一瞬で受け入れるのね?って。たぶん出たサウンドがすごかったんじゃない? ファンも驚いたんじゃない? スピーカーからドーンと音が出たときに、わかったんじゃないかな。ステージに出て2〜3曲ばーっとやって「じゃメンバーを紹介します」って言ったら、会場からMATCHANコールが起こって、「長いぞ、長い」って(笑)。

MATCHAN 嬉しかったですねえ。

TAISEI サウンドでわからせたっていうのはでかいよね。音で黙らすっていうのは。

―― それがこのアルバムにつながっていますよね。

TAISEI だからMATCHANとしこたまライブをやったのはいい結果になったね。SAをずっとやっているなかで「強いアルバムを作ろう」って何回か言ったことがあるのね。「強い」っていうのは楽曲が重いとかダークとかハードとかっていうことじゃなくて「持ってるものが強い楽曲」っていう理想があったんだけど、どうしてもそこに到達できなかった。だけど、MATCHANが入って強いアルバムが作れたっていうかな。そこが理想だったんだよね。頑としているというか。

―― 揺るぎない感じがしますよね、このアルバムは。

TAISEI そう。それがすごくファニーな曲でもそれを感じる。そういうものがすごく出せたかなって思う。

MATCHAN 嬉しいですね。SAっていう土台がしっかりある上で、みんなのアーティストとしての人格もちゃんと反映されているアルバムになったと僕はすごく感じるんですよね。潔いかっこいいものを作りたいっていう気持ちがはっきり詰まっているアルバムだと思います。

TAISEI ああしたいこうしたいとかこれは何々っぽくとか、そういう部分はもう超えたっていうかね。

―― コムレイズの皆さんがお披露目のツアーでSAを受け入れたっていうのが大きかったのかもしれないですね。

MATCHAN それがあるからこっちのほうに思い切って振り切れたっていうのはあるんですけどね。

TAISEI さっき言ったように基本的にサウンドの匂いとか作り方とかそんなに変わっているわけじゃないんだよね。だけどそういう思いとか志とかバンドのいい状況っていうのがすごく反映されたアルバムだと思う。

―― だからTAISEIさんの曲はよりTAISEIさんっぽくなったと思うんですよ。SAという説明なしでも独り歩きできるような楽曲に仕上がっていろという。

TAISEI いい音楽をやりたい、かっこいい音楽をやりたいという、すごく単純なところに行きたかったんだよね。今までソーシャルディスタンスな感じだったのが、なんか膜が一枚とれたような感じがするんだよね。

KEN 昔は手放しで行ききってなかったんですよ。なんかどっか何かを気にしながらやってたと思うんです。それが各々のアレンジとかも本当に自由にできるようになったんですよね。それがかなりでかいですね。

―― そういう意味じゃパンクですけどね。パンクのアティチュードを見せられたな、みたいな。

TAISEI 挑戦するとかいろんなものを吸収するという意味でね。だからどこかでカテゴリーとしてのパンクを守らなきゃいけないところがあってね。アイコンとしてNAOKIちゃんのスパイキーであったりとか。そこにとどまっている演者やリスナーが多いなという感じはずっとあったんだよね。それは日本においてね。それに対して不満だったし。だから攻め続けたんだと思う。もちろん40年前のパンクやロックンロールを好きな気持ちは今も変わってない。だけど「スパイキーにしてるから70'sとか80'sパンクをやらなきゃならない」とか「リーゼントでパンクもねえだろう」とか、そういうことじゃないんだよっていうことを、このアルバムをスタートとして、SAでやれればいいなと思ってる。

―― バンドがやりたいことをやってるかどうかっていう方が重要なんですよね。

KEN そうなんですよ。リスナーとして聴いてたときはバンドに対してそう思ってたんですけどね(笑)。

TAISEI でも、そこなんだよね。

―― 楽曲の持つ良さをやりきれてるかどうかということでいうと、このアルバムはひじょうに優れた作品だと思います。

TAISEI そうだよね。

―― で、本当ならばアルバム・ツアーに出るところですが、ライブ再開の見通しは立っていないんですよね。

NAOKI まだだね。

TAISEI 全部、延期、延期で後回しになっていて、延期が渋滞しちゃってる。

NAOKI ツアーが始まったとしても、何のツアーかわからない。

―― じゃ今日、2020年6月23日の時点ではいつライブをやるかは見えてないわけですね。

TAISEI 見えてないです。

NAOKI もう4ヶ月ライブをやれてない。すっごい長いね。SAでもこんなに空いたことはまずないし。ライブをやらなかった期間で一番長かったのは1ヶ月半くらいじゃなかったかな。こんなに空いたのは初めて。最初の2〜3ヶ月はもうイライラしてたよ。ライブをやりたいけど全然できないし。4ヶ月近く経つと、やってないことに慣れてきて、どうしようって(笑)。ライブに対応できるのかなって。身体が追いつかなくなりそうで。今、いささかの不安を感じてます(笑)。始まったらやるんだろうけどね。

―― NAOKIさんの長いキャリアのなかでもここまでライブをやらないのは初めてなんですよね。

NAOKI もちろんです。恐ろしいです。でも他のバンドもみんながそうだから。

―― 最後に、ライブを見られないコムレイズが一番イライラしてると思うので、お一人ずつコムレイズに温かい言葉をかけてもらおうかと思うんですが。

TAISEI あのね、普通じゃないことが普通になる時代に突入しちゃって、そんななかで新しい共有、そして共感しあえる場所を自分たちとコムレイズで模索できれば、合唱とは違う新しい何かが生まれるかもしれないなっていう。それまでは俺らも戸惑っているけど、コムレイズも戸惑いながらも前に進んでいければいいなという気持ちですね。

NAOKI 久しぶりにライブができたらステージの上も客席も泣いてるんじゃないかなって最初思ってたんですよ。でも滑稽なニューノーマルに従うと、お互い、笑ってんじゃないかなと思って(笑)。これ何?って(笑)。でもTAISEIが言ったように、それだったらそれをこっちも楽しんでやるしかないし。段階的なワクチンとかいろんなものが揃ったときに、また大声でSAコールを聞かせてくれたら、こっちも思いっきり汗飛ばしてやるから、そういう日がくることを願ってます。

MATCHAN 最初から何一つ諦めてないっていうか、今までと変わらないところに戻ると信じているので、その日が来るのをただひたすら待ってます。ただ一回目のライブは、僕はもう150%くらいで、その日死んでもいいぐらいのライブをするつもりなんで。その日を楽しみに待っているんで、皆さんもよかったら待っててください。

KEN そこからツアーが続くよ(笑)。

MATCHAN まぁそうなんですけど(笑)。だけど、それだけは最初に言っておきます。一発目はやばいぞ。

KEN SAも週イチとかそれくらいなんですけど、ガンガン、リハーサルをやってるんですよ。こうやって準備してるんで、みんなも準備して待ってほしいですね。

NAOKI この間にレコードをいっぱい聴いてください。

KEN そうですよね。

TAISEI だけど40何分しかないんだよね、このアルバム。「すぐ終わりますね」って言われる(笑)。

―― だけど、今、世界的にこうなってますよ。

NAOKI え、そうなってきた?

―― サブスクリプションが主流になってからは海外のアーティストのアルバムもだいたい10曲で、30分から40分台というふうになってますね。CDの概念ではもはや捉えてないというか。

TAISEI なるほど。

―― 『CALL UP MY COMRADES』は昔のアナログレコードと同じ長さなんですよね。

NAOKI そうだよ。A面B面で45分。

TAISEI 46分のカセットテープに全部入るというね。

―― 実は聴いていてこの長さが一番気持ちいいんですよね。

NAOKI ほんと、そうかもしれない。

TAISEI そうか。

MATCHAN 自然にその形になったっていうのはすごい。

―― いろんな意味で時代にアジャストしたアルバムだと思います。この調子でガンガンいい作品を作ってください。

NAOKI 押忍!

© 2020 DONUT

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INFORMATION


CALL UP MY COMRADES
2020年6月17日(水)リリース
収録曲:1.マジックアワーがきこえるかい/2.STILL STANDING (Hey ! Bud)/3.BLACK SEA/4.すったもんだBILLY/5.1to10/6.孤高の花/7.MORNING GLORY/8.FLY FLY FLY/9.心、走れ/10.MY AIM IS TRUE


※ LIVE INFORMATION は公式サイトでご確認ください。


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