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ダンボール・バット 『今夜はタブー。~Taboo You~』(Like It〜Editor's Choice)

2020.1.8 upload

今夜はタブー。~Taboo You~
2020年2月8日(土)Release
<収録曲>1ロンサムカウボーイOK?/2今はただ乾いた風が欲しい/3ピクルス&オニオンズ/4冬の戦車/5秋は北京で/6バッドシティ/7モスキートロック/8Nachtmenschen(夜の人々)/9Cometa Rosa(赤い彗星)/10中身のない Style,それも時には/11ボンボヤージ!/12シナモントーストの朝/13今夜はタブー。/14シースルゥー


本物のアレコードは時代を射抜く
DIYといいながらほぼコンピュータが計算してやってくれるのがこの世の常だが、ダンボール・バットは予算がないという理由で、毎度、コンピュータを使わずにレコーディング。ダビングに次ぐダビングの作業でスケジュールは延びに延び、今作に関しては、およそ5年ぶりのニューアルバムとなった。タイトルは『今夜はタブー。~Taboo You~』。ローリング・ストーンズの『TATOO YOU』のパロディだが、中身は80年代ニュー・ウェーブ、AOR、シティ・ポップスへのリスペクトが満載。ただ、そのリスペクトもストレートでわかりやすいものではなく、ひねくれてわかりにくいものだ。「モスキートロック」「秋は北京で」「バッドシティ」「シースルゥー」などメロディメーカーとしての才能を存分に発揮した楽曲はあるものの、アルバム全体はAMIの斜め下からの視点と思考に覆われている。もうちょっと素直にやれば売れる芽もあると思うが、「まともなダンボール・バット」なんて誰も期待していない。またダンボール・バット自身も素直に美しいアレンジで楽曲を表現するつもりもない。怪しいアレンジの数々、奇妙なリリック、一聴すると「アレコード」としか思えないような楽曲の数々を駆使して、オリンピック・イヤーという華やかな化粧の下に蠢くぼくらの心の闇を映し出す。大友克洋が『AKIRA』で世紀末のような2020年を描いたように、ダンボール・バットは未来感どころか場末感すら漂う2020年の現実を浮き彫りにする。「売れたい」とやさぐれながらも、けっきょく、モノクロのフィルムを入れたカメラを下げて街を徘徊、昭和の残骸を写してまわるAMI独自の批評性から離れることはできないのだ。ちなみに、湯浅学、コモエスタ八重樫、白根ゆたんぽ、小里誠、岡村詩野、中原昌也といった音楽評論家やイラストレーター、アーティストなどそうそうたるメンバーがこの作品にメッセージや解説を寄せている。バンドの知名度の低さに比べ、業界内の温度は高い。ダンボール・バットとはそういうバンドであり、『今夜はタブー。~Taboo You~』とはそういう作品だ。誰も見向きはしないかもしれないが、一度気になると一生気になってしまう。そんな作品を作り続けるダンボール・バットを愛さずにはいられない。(森内淳)


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