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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Drop's)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/2009年に北海道・札幌で結成されたDrop’sのvo&gt。Favorite→映画、喫茶店、Tom Waits、Chet Baker。
公式サイト:http://drops-official.com
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第13回「大切な根っこは、いつもこころの中にある。ミナリ」

2021.03.30 upload

『ミナリ』 (2020年/アメリカ)
原題:『MINARI』
監督・脚本:リー・アイザック・チョン
キャスト:スティーブン・ユァン、ハン・イェリ、ユン・ヨジョンほか
公式サイト:https://gaga.ne.jp/minari/
全国順次公開中
—————

みなさん、こんにちはー。
もうすぐ4月ですか!
新しいことが始まったりしてドキドキワクワクしたりとかちょっと疲れたりとか、心も体も何かと忙しいですよね春は。
お元気でいらっしゃいますかー?

ふと気づいたら、アカデミー賞のノミネート作品が発表になっていました! 気になる作品がたくさん。
コロナの影響で例年よりも少し遅い開催ですね。あー楽しみ楽しみ。
その中でも最近日本で公開されたこちらの作品を観にいってきました。

『ミナリ』(『MINARI』)2020年、アメリカの作品。
監督はリー・アイザック・チョン、出演はスティーヴン・ユァン、ハン・イェリ、ユン・ヨジョンなど。v
1980年代、農業で成功を夢見る韓国系移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)は、家族を連れてアメリカ・アーカンソー州の高原に引っ越してきます。
周りになにもなく、荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを見て妻のモニカ(ハン・イェリ)はすぐに引っ越す、と反対しますが、二人の子どもたちは徐々に農場の生活に馴染んでいきます。
明るく破天荒なおばあちゃん(ユン・ヨジョン)も韓国から来て一緒に暮らすことになり、孫たちとも少しずつ打ち解けていきます。
ですがなかなか思うように生活はできず、いろいろな思いが募る中、家族に起こることとは……。

というお話です。アメリカの田舎町を舞台にした韓国系の家族の物語、そして話題のA24とブラッド・ピットが設立したPLAN Bの共同製作!
ということで、かなり気になり劇場に足を運びました。

んーこれは、じんわりきました。良かったです……!

まず冒頭の一家が新しい家に引っ越してくるシーンから、音楽と映像がとても美しくて
これから何が起こるんだろう、とドキドキ。
まばゆくて柔らかい光。ピアノの音。最初のシーンが素敵だとなんかずっと記憶に残りますよね。
二人の子どもたちは英語で会話していて、両親は基本的に韓国語。
どういう家族なんだろう、どうしてここに来たんだろう、とぐぐっと引き込まれます。

ジェイコブは農場で成功する夢を追い求めていて、子どもに成功する姿を見せてやりたいんだ、夢のため、家族のためには犠牲も必要なんだ!と思い込んだら一筋。
子どもへのしつけも割ときびしいし、自分の意志は絶対に曲げない、きっとちょっと昔堅気な人なんだな。
それがゆえに責任感やうまくいかない苛立ちにぶつかって、大切な部分を忘れかけてしまっているというか。
空回りしてモニカともすれ違ってしまいます。

それを支えるモニカの表情、とても印象的だったなぁ。
凛としていて強くて、黒い髪と瞳が美しかったです。いろんな感情が押しとどめられたり、時にあふれたり。
すごく伝わってくるものがあったなぁ。
彼女の気持ちを考えると本当に何度もううーっと苦しくなりました……。
ジェイコブもモニカもそれぞれにきっと孤独で、責任を背負って、戦ってなんとか生きていこうともがいていてとてもリアルでした。

おばあちゃん(ユン・ヨジョン)が家に来た時に韓国から干物や調味料を持って来てくれて、それを見てモニカが涙してるシーンとか、わかるなぁってなりました。
生まれたところを離れて暮らしたことがある人ならきっと、みんなわかるはず。

そして家族のもとに現れたそのおばあちゃんがこの物語の鍵でもあります!
破天荒でキュートで、孫たちのことが本当に大好き。きっとおばあちゃんになったら、孫がかわいくてかわいくて仕方ないんだろうなぁと改めて思いました。笑
いたずらしても何をしてもかわいくて、何よりも大切で、できれば好きにさせてあげたい。
アメリカ育ちの子どもたちは最初はその存在に戸惑いますが、次第に打ち解けていくのがすごく微笑ましかったな。
ラスト近くの弟デビッドの行動には涙が出ます。。

自分が小さい時におばあちゃんやおじいちゃんに対してどんな風に接してたかなぁとか、どんな気持ちだったかなぁとか、なんとなく懐かしくて切ない気持ちになりました。
川辺のシーンとかはそういう気持ちにさせる感じ。とても良かったなぁ。

そして音楽が特に素晴らしかったです!
農場の柔らかい光と淡いブルーの空、そして美しい音楽が全体を包み込んでいました。
冒頭でも触れたピアノの音、そしてエンドロールで流れる韓国語の曲「Rain Song」がめっちゃいいなぁと思ったら、モニカ役のハン・イェリさんが歌っているみたいです!
アカデミー賞の歌曲賞にもノミネートされてます。とっても素敵です。

一見、移住して来た家族で、特殊なようにも見えるけど、きっとどこの国でもあるような家族の物語だなぁと思いました。
職場で隣で働いてるおばさんも、農場で雇っているポールも、デビッドの友達の家も、きっとみんなそれぞれにいろんな事情があって、物語があるんだろうな。
しんどいことも、不安なことも、ほっとすることもどこの国でもどの時代でもきっとそんなに変わらなくて、登場人物それぞれに自分を重ねられる作品でした。

それでも、助け合って、支え合って、少しずつ根を張ってまた明日を生きていく、そんな強さを感じる素敵なラスト! 良かったなー。愛だなぁ。。
劇的なストーリーではないけど、じんわりとまたこの家族の幸せを心から祈りたくなるような。

家族や大切な人と観て感想を話すのも良いと思うし、一人で観てもあとからあとからじんわりきます。
現在公開中ですので、ひと休みに是非ともじんわりを!

というわけで今回はこのあたりで〜。
みなさん穏やかに、健やかに春をお過ごしくださいね。

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