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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Drop's)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/2009年に北海道・札幌で結成されたDrop’sのvo&gt。Favorite→映画、喫茶店、Tom Waits、Chet Baker。
公式サイト:http://drops-official.com
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第7回「夢かもしれない、でも残ってるあの夏の熱。真夏の夜のジャズ」

2020.09.18 upload

『真夏の夜のジャズ 4K』 (1959年/アメリカ)
原題:『Jazz on a Summer's Day』
監督:バート・スターン
キャスト:ルイ・アームストロング、セロニアス・モンク、チャック・ベリーほか
公式サイト:http://cinemakadokawa.jp/jazz4k/
—————

みなさんこんにちは。
9月、東京はだんだんと涼しくなってきて過ごしやすい日も増えてきましたね。
今年の夏はみなさんいつもとは少し違っていたかと思いますが、いかがお過ごしですかー。
こうやってまた季節は過ぎていくのよね。早いわねー。(しみじみ)

さて、今回はたぶん初の、物語じゃない映画!
『真夏の夜のジャズ』をご紹介します。

今回映画館で4K版が公開されるとのことで、行こうかなー、どうしようかなー、YouTubeでも観れるしなーと正直思っていたのですが。
仲良くさせていただいているとあるジャズ喫茶店主から、是非行ったほうがよいとの推しを受け!笑
よし!と行ってきましたー。
結果、本当に映画館で観てよかった!! 素晴らしかったです。

1958年(62年前!)にアメリカのニューポートで開催された「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」を中心に、同時期に開催された国際ヨットレースのアメリカズカップの映像なども織り交ぜた作品。
監督は当時新進気鋭の写真家として活躍していたバート・スターン。
半分ほどはお客さんにフォーカスしたシーンや、ヨットレースを楽しむ人々の映像などになっていて、なるほど写真家目線なのねと納得しました。
全体的にスタイリッシュ。

まず冒頭、普通に俳優さんが出てきて物語が始まりそうな雰囲気。
水面に映るクレジットからもう、これはもう最高の予感しかしない……!
そしてバックに流れていたジミー・ジュフリー・スリーの演奏シーンに切り替わるのですが、そこでまずウワァってなりました。生だ、これは生だーとなぜか感じた!
ずっと寄りで横顔なんだけど、緊張感と、高揚感がビシビシ伝わってきて鳥肌が立ちました。
演奏が終わった時の表情も良かったなー。

時々登場する、車走らせながら演奏してるバンドも可愛かった!
よくその角度でウッドベース弾けるな!? と思ったり。笑
本当にみんなの生活、娯楽の中にジャズが自然に染み込んでいる感じ。
大人も子供も関係なく、踊ったり口ずさんだりしていました。

白い帆のヨットに乗ってる人たちもお洒落でナイスでした。これほんとにレースしてるのかな?っていうくらい呑気。笑
夏の海とセロニアス・モンクがこんなにも合うなんて思ってもなかったな。
彼のヘヴィだけどどこかお茶目な演奏を、サングラスをかけたお客さんたちがちょっとだるそうに観ていて。
でも演奏し終わったらすごい歓声なのよ。
謎に部屋の中で演奏しているシーンとか、屋根の上で踊ってる恋人たちとか、全部が繋がっているような、すごく「映画」でした。気持ちよくってワクワク。

アニタ・オデイの有名な映像もありました。
黒のドレスに白い羽根付きの大きな帽子、白い手袋、赤いリップでものすごくキュート!
当時の女性のシンガーの歌はもちろん表情や仕草、たたずまいにも、憧れるなー。
ビッグ・メイベル・スミスのど迫力のボーカルとキュートな笑顔のギャップもいいー!
思わずこちらも笑顔になってしまいます。

チャック・ベリーはジャズマン達の中でいい感じの違和感があったように思ったなあ。
でも若い子達がめっちゃ踊ってたりしていて。
からのチコ・ハミルトンで静かに息をのむ。。すごい流れだなぁこれ!
途中から陽が落ちて夜になるんだけど、夜になるとまたお客さんの感じも変わっていて素敵。
みんなとても艶やかで、お洒落して夜を楽しんでいるように見えました。

クライマックス、サッチモ(ルイ・アームストロング)が登場!
最初になんかツアー中の思い出話(?)みたいなのをして自分でめっちゃ笑っていてかわいいです。笑
そして演奏が始まるわけですが、最初のラッパが鳴った瞬間、背筋がピーンとのびるような、これだ!!という感覚になりました。歌が始まったらもう涙が。。
おおらかで、ハッピーで、あぁー音楽があってよかった。音楽ありがとうっていう、なんだかどうしようもない気落ちになりました。最高だー。

他の演者もそれぞれにすごかったです。
ていうか、映像も音も綺麗すぎてびっくりしました! 映画館で観て大正解。
こうやって残してくれて本当にありがとう……。

あー、なんか夢みてるみたいな時間だったなぁと思って改めてポスターを見ると、「永遠に続く夢をお見せしましょう」って書いてあった。わー、まさにそれ。
とにかく、お客さんも演者も関係なく、みんな体で音楽を楽しんでいて最高でした!
ものすごく「音楽」だったな。繊細で、緊張感がありつつも、果てしなく自由な演奏。
お客さんも演者も、みんな本当にいい顔してるんだよなー。一人一人が映画の登場人物みたいにキラキラ輝いてた。
こんな風に音楽を楽しめたら最高だなぁと改めて思いました。
またはやく大口開けてみんなで歌ったり、笑ったり、抱き合ったりしたいね。
そんなこと思いながら、観終わったあとの外の空気は秋になり始めていたのでした。
夏もありがとうね。

YouTubeにもありますが、笑
これは劇場で観て絶対損はしないと思いますー! 残り少ない夏のおともにぜひジャズを。

ではまたね。
今月は観たい映画がありすぎてあと何回か映画館行きたいな〜。

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