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中野ミホのコラム「まほうの映画館2」

中野ミホ(Drop's)のコラム「まほうの映画館2」
中野ミホが最新作から過去の名作まで映画を紹介します。
●プロフィール:中野ミホ/2009年に北海道・札幌で結成されたDrop’sのvo&gt。Favorite→映画、喫茶店、Tom Waits、Chet Baker。公式サイト:http://drops-official.com

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第1回「そう、絶対に、愛が勝つ! ジョジョ・ラビット」

2020.02.07 upload


『ジョジョ・ラビット』
監督・脚本:タイカ・ワイティティ
2019年:アメリカ
キャスト:http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/cast/
—————

みなさんこんにちは!
昨年十二月までRock isにて連載させていただいていた、私中野ミホの「まほうの映画館」、今回からはこちらにお引越しして、不定期更新にはなりますが続けて行きたいと思います。
変わらず、好きな映画についてゆるく綴っていきます。
お付き合いいただけたら嬉しいです! よろしくお願いしますー。

さて、2020年になりなんだか面白そうな映画がたくさん公開されすぎて困っています! なんなんだ! 嬉しい悩み!笑
そんな中でも、これは絶対観にいこう、と決めていたのが今回ご紹介しますこの作品。

『ジョジョ・ラビット』(『Jojo Rabbit』)。2019年、アメリカの作品。
監督はヒトラー役として出演もしているタイカ・ワイティティ。なんかちょっと変わった名前だなぁーなんて思っていたら、両親がニュージーランドの先住民族マオリとロシア系ユダヤ人というルーツの持ち主なんだって!
出演はローマン・グリフィン・デイヴィス、トーマシン・マッケンジー、スカーレット・ヨハンソンなど。

舞台は第二次世界大戦下のドイツ。10歳の少年・ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)は、空想上の友だちであるアドルフ(タイカ・ワイティティ)のアドバイスを受けながら、青少年集団ヒトラーユーゲントであこがれの立派な兵士になるために日々奮闘していました。
しかし訓練でウサギを殺すことができなかった彼は、教官から「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからもからかわれてしまいます。
母親とふたりで暮らすジョジョは、ある日家の片隅に隠された小さな部屋に誰かがいることに気づいてしまいます。
それは密かに反ナチス運動をする母親がジョジョにも内緒で匿っていたユダヤ人の少女・エルサ(トーマシン・マッケンジー)でした。最大の敵だと思っていたユダヤ人に遭遇しパニックに陥るジョジョでしたが、話をするうちにだんだんと彼女に惹かれていきます。
次第に激しくなっていく戦争、反ナチスやユダヤ人への取り締まり。
そんな中で生きる子どもたち、大人たちの物語です。


これは戦争映画なのか、コメディーなのか、どんな感じなんだろうとドキドキしながら観にいったのですが、まさか、こんなに笑い、そして泣くとは思ってませんでした……。
すっごく良かったです。映画館で観てよかった。

まず冒頭の、ジョジョが家の玄関を飛び出すシーンから最高!
ビートルズの「I Want To Hold Your Hand」のドイツ語版が流れて、ハイテンションで走ってくジョジョのかわいさに笑っちゃう。
だけど、ヒトラーに熱狂する若者たちの実際の映像と合わさって、ちょっと不気味で滑稽でもあります。
そしてそのあと訓練合宿のシーンでトム・ウェイツの「I Don't Wanna Grow Up」!
この曲大好きだからびっくりしてとてもテンション上がったー。
これもまた子どもたちが戦争の訓練をさせられるシーンで楽しげにかかるのが皮肉っぽいのだけど。。
音楽と映像の合わせかたが秀逸だなぁと思いました。

映像の感じや色もとても好きだったなー。
左右対称の美しいバランス、部屋の壁紙(これ注目しがち)が見たことないような素敵な柄だったり、軍のユニフォームさえもお洒落。帽子のかぶり方や服の着方もそれぞれにキャラが出ていて面白いです。
ポップで、観ていて全然飽きない!

特にスカーレット・ヨハンソン演じるジョジョの母親は本当にキュートでかっこよかった!
真っ赤な口紅、波打ったブロンドヘア、そして皮靴。(これは物語のキーになるのです。)
彼女は周りの子どもたちと同じようにヒトラーを信じてやまないジョジョに対して、自分と平等に、友達みたいに接して、そして靴ひも結んであげて、ぎゅっと抱きしめる。
出征している父親に会いたがる彼に、暖炉の灰をひげに見立てて父親の真似を本気でしてみせたり。
母親として子どもを一番に守り育てる気持ちと、自分の世の中に対する考えや行動と。
きっとすごく辛かっただろうけれど、タフで美しい母親はとびきり輝いていました。
ジョジョに、恋する気持ちのことを「お腹の中で蝶が飛び回る感じよ」って言うの良かったなー。
昨年末に観た『マリッジ・ストーリー』(これは去年イチ泣いた。。)に続いてスカーレット・ヨハンソンの母親役が最強でした。

ジョジョ役のローマンくんは今作が役者としての初めての仕事なのだそう!
大人ぶって雄弁に話してみたり、かと思えばブルブル震えたり、もう表情が全部いとおしい。。
母とウインクの練習するシーンなんか最高にかわいいのよ。。
10歳の子が戦争に駆り出されてしまう、ヒトラーを正しいと信じて突進してしまうような時代に、彼はいろんな経験をして、自分が受け取った愛をきちんと信じて、少しずつ大人に近づいていきます。
失っても、怖くても、絶対に愛はあるんだ、愛が一番強いんだって教えられたような気がしました。

とてもとても悲しい歴史だし、悲しい場面ももちろんあったけれど、優しさが溢れていて、嫌な気持ちに全然ならなかったなぁ。
ワイティティ監督がインタビューで、「広めるべきはヘイトじゃない、寛容と愛だ。」と言っていて、なるほどなぁと思った。
戦争を扱っているものはどうしても観るのに気合いがいるというか、重いんだろうな……と身構えてしまうところが私はあるんだけど、今作みたいに、子どもの目線からポップに、時には滑稽に、だけど真摯に描いている作品は素晴らしいなぁと思いました。

抱きしめること、踊ること、笑うこと、泣くこと。
大人になるってそういうことなのかも。
愛はずっと、どんなときも、人から人にちゃーんと伝わっていくんだなぁ。
まっすぐに信じて、愛せるってことは何よりも強い。そしたらどんなにつらくても、道はきっとひらけていく!

ラストに流れるデヴィッド・ボウイの「HEROS」、そして現れる、劇中に出てくる詩人リルケの言葉に、うわぁぁぁ……となって涙が止まりませんでした。
ジョジョ、ほんとにかっこいいよ。ヒーローだよ。って言ってあげたくなります。
これはもう、劇場でオイオイ泣いてください……!笑
家族や大事な人と観るのもおすすめです。

いやー、いい映画観たわ……。
私も、みなさんにとっても、大好きな映画にたくさん出会える2020年になりますように!

それではまた。
風邪ひかないようにねーあったかくね。


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