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第18回「きっと、大丈夫。走り続ける、ドライブ・マイ・カー」

2021.09.01 upload

『ドライブ・マイ・カー』 (2021年:日本)
監督:濱口竜介
原案:村上春樹
脚本:濱口竜介/大江崇允
キャスト:西島秀俊/三浦透子/岡田将生/霧島れいか ほか
公式サイト:https://dmc.bitters.co.jp
全国順次公開中


みなさま、こんにちは。
暑い暑いと言っていたら、もう九月ですか。
お出かけもできないので夏の洋服とか買わないでいたら、街にはもう秋服が並んでいる……そうなりますよね。。
少しでも心穏やかに、美しい秋を迎えたいですね。

さて今回も、ずーっと楽しみにしてた作品!
村上春樹さんの小説が原作のこちら。ついに公開してた。
あ……今回ネタバレしています。ご注意くださいませ。

『ドライブ・マイ・カー』
2021年、日本の作品。
監督は濱口竜介、出演は西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいかなど。
濱口監督は脚本も書かれています。国際的な賞もたくさん受賞されている、注目の監督。

舞台俳優であり演出家の家福(西島秀俊)は、妻の音(霧島れいか)と静かで満ち足りた日々を送っていました。
しかし、音は話があると言い残したまま、突然帰らぬ人となってしまいます。
それから2年後、広島での演劇祭に愛車のサーブ900で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさき(三浦透子)と出会います。
さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻(岡田将生)の姿をオーディションで見つけますが……。
舞台となるのは東京・広島・そして北海道、それぞれの過去や秘密がありながら、出会い、交差していく人びとの物語です。

もともとこの原作である「ドライブ・マイ・カー」が収録された村上春樹さんの短編小説集『女のいない男たち』を読んだことがあったので、映画化とそのビジュアルが発表された時にはとてもテンションが上がりました!
しかも原作は短編なので、一体どういうふうに映画化されるのだろう……とドキドキしながら観に行きました。

いやー、とっても観ごたえがありました。よかったです。じわじわくるなぁ。
確かに登場人物や基本的な設定は原作と同じなのだけど、映画にしかない要素もかなり加えられて、とても奥行きのあるまた違った物語になっていたなぁという印象でした。
まさか広島や北海道まで行くなんて!

でも俳優さんが思い描いていた佇まいとかなり近くて、嬉しかった!
特に渡利みさき役の三浦透子さん、素晴らしかったなぁ。
まさにイメージぴったり。それ以上でした。
少しぶっきらぼうで、可愛げがないけど、まっすぐで意思のある瞳。
ものごとを深く優しく見ていて、口数は少ないけどハッとするようなことを言うところ。
今作では彼女の過去が原作よりも掘り下げられていて、それが西島秀俊さん演じる家福悠介の過去とつながっていきます。

もちろん他の俳優さんもとっても素晴らしかったです。
前半の家福と妻・音(霧島れいかさん)との会話のテンポやトーン。
あぁ、村上春樹の小説ってこんな感じだ!すごい!実現してる、と思いました。
そしてそこに現れる高槻(岡田将生さん)。
原作では「はっきりいってたいしたやつじゃない」「性格は良いかもしれない。ハンサムだし、笑顔も素敵だ。(略) でも敬意を抱きたくなるような人間ではない」と書かれていた人物。
なるほど、なるほどね。
でも終盤、みさきが運転する後部座席で家福と高槻が会話するシーンでものすごくくつがえされる。素晴らしかったなぁ。
あの目は忘れられないです。

そして忘れてはいけないのが車! サーブ900。
スウェーデン車で、原作では黄色と書かれていましたが、この赤もめちゃくちゃ素敵!
このサーブが、終始登場人物たちを見守っているような、特別な存在感がありました。
家福が妻の浮気現場を目撃した後に駐車場から姿を現す時。
首都高、広島の美しい海の道、そして北海道のまっ白い雪の中。どこにいても映える。
車を通しての家福とみさきのやりとりも良かったなぁ。
みさきが「私あの車が好きです。」と言うシーン、二人で煙草をルーフから出して走るシーン。
家福がそれまでの後部座席から助手席に座るタイミング。
私は運転はできないのですが、車の中での会話ってなんか記憶に残ったりしますよね。
時間の流れが特別に感じるというか。かなり車が出てきて嬉しかったな。

原作では深くは描かれていなかった、それぞれの過去について。
家福は妻の死、みさきは母親の死の影がずっとあって、疑問や後悔が残っています。
家福は妻の闇の部分を理解することができなかった、とこぼします。
それに対してみさきは、母が自分に厳しくあたる時と、もう一つの子供のような別人格が現れる時があったということを打ち明けます。
個人的には、人の持っている多面性というか、そういうことについて考えたなぁ。

ちょうど、国も時代も雰囲気も全然違うのですが、イングマール・ベルイマン監督の『仮面/ペルソナ』を観て(偶然スウェーデン映画でした)そんなことを考えていたので、とても刺さりました。
その映画も、主人公が女優という設定。
演技をするということを仕事にしているひとは、どんな精神状態なんだろう……とかも思いました。

自分の中にある相反するような気持ち。どちらも本当だったりする不思議、怖さ。
自分でも自分のことは全てはわからなくて、ましてやほかの人のことなんて、どれだけ長く一緒にいても完璧には理解できないんじゃないかなと思う。
この世からいなくなってしまってもなお、その謎は残る。
家福は奥さんの声が吹き込まれたテープを聞き続ける。
それでも、だからこそ自分自身を深くまっすぐ見つめること。
本当のことはわからないけど、残されたものは生きていくしかない。きっと大丈夫。
真っ白な雪の中、家福とみさきが初めて感情をあらわにするシーン、すごくぐっときました。

人と人、一対一の関係がとても丁寧に描かれていて、それが少しずつ交わって、積み重なって変わっていく。
大げさなハッピーでもバッドでもなく、一筋の風が吹いたような、それまでとは少し違う気持ちになれるような終わり方も素敵でした。

あぁー。とても上質な素晴らしい映画に出会えて幸せな気持ちですー。
ちなみに、劇中で音が語る物語は同じ『女のいない男たち』収録の「シェエラザード」からの引用。
そういうところもワクワクしました。 他にも語りたいことがどんどん出てきますが……今回はこのへんにしておきます。笑
これは是非劇場で浸りながら観てほしいです!
原作を読んだことある方も、ない方も、きっと何かそれぞれに、思うことがあるはず。


それではまたね、お元気でー。
残り少ない夏、みなさん少しでも楽しく過ごせますように!


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中野ミホ 弾き語り
2021年9月2日(木)下北沢CLUB Que(配信有り)
2021年9月3日(金)札幌LOG


Drop’s TOUR 2021 「Drop’s」
2021年9月24日(金)大阪 心斎橋Music Club JANUS
2021年10月8日(金)北海道 札幌cube garden
2021年10月10日(日)東京都 恵比寿LIQUIDROOM


red cloth 18th ANNIVERSARY 番外編 Drop’s(ワンマン)
2021年9月20日(月祝)新宿レッドクロス
■ 詳細は公式サイトまで:http://drops-official.com

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