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DOUBLE SIZE BEDROOM インタビュー
僕にとっての初期衝動。
一番原点で、音楽をかっこいいと思ったロックの形の曲。
それが、今の自分がやるべきことなんじゃないかなって――但野正和

元最終少女ひかさのフロントマン、但野正和(vo&gt)が2017年12月2日、地元・札幌にて初ライブ・初ワンマンというかたちで新バンド、DOUBLE SIZE BEDROOMを始動した。メンバー募集から紆余曲折を経て、12月には田村優人(ba)が、4月にはテス山本(dr)が正式メンバーとなり、ダブサイのピースが完成。本人の予想を超えて、ここに3ピースのロックンロール・バンドが誕生した。最初にMVで公開したナンバーでも但野自身が“1球目は重心低めなストレート”と言い表していたが、このバンドに轟くソリッドなサウンドは実に痛快。ゴリゴリなグルーヴと強い言葉を武器に重いビートを走らせていく楽曲からは、但野の歌もズドンと響いてくる。ライブを重ねるごとにバンドの核を燃やし、自身の、そしてリスナーの固定概念をボーダレスに壊していくDOUBLE SIZE BEDROOM。結成から新曲「アカルイミライ」、展望まで、現時点でのダブサイ・ストーリーを札幌で訊いた。

―― 昨年の6月に最終少女ひかさを解散後、但野さんはどんな風にメンバー集めをしていたんですか?

但野正和 ひかさを解散して、ツイッターやネットですぐ募集をかけました。なんか、広く見てもらう方法としてそういう動き方しか思いつかなくて。

―― 反応はありました?

但野 そうですね、まず田村優人が来て、ほかにも8人ぐらいベースの人が来てくれて。ドラムは、僕の中で一緒にやりてぇなぁと思っていた友達がいたので、その人に声をかけました。

―― 田村さんはなぜ応募しようと?

田村優人 但野さんのことはひかさの前身バンドの時から知っていて、いいなと思ってたんですよね。一緒にやってみたいなと思ったので、募集を見て連絡しました。

但野 そう、田村は昔から知ってて。実は、ひかさを結成する前の、もう1個前にも最終少女ひかさっていうバンドがあったんですよ。その時からの知り合いなんで、5年ぐらいになるんじゃない?

田村 うん。

但野 で、「あ、田村から(連絡)来た」と思って、まずスタジオに入ってみました。

―― 最初スタジオではどんな感じだったんですか?

但野 スタジオには1時間ずついろんな人と入って、ひかさの曲のコピーで「ハローアゲイン」と「B」と「人生」をやったんですけど。応募してくれた人の日程とかもあったんで、1日3人ずつとかでやってみて、なかなか楽しかったですね。で、最初に声をかけてたドラムのやつと、「どうする?」みたいな話をして。

―― 田村さんに決めた決め手は?

但野 え、なんだろう……バランスですかね。でも、田村から連絡来た時に、「田村になんじゃねぇかな」とはちょっと思ってた。

田村 そうなんだ?

―― イメージがわいたんですね。

但野 そうです。前に、田村のことをすごいかっこいいなと思った日があって。昔、最終少女ひかさとTHE HUNGRY RUGRATが苫小牧で対バンしたことがあったんですけど、「田村のベースの弾き方、めっちゃかっこいいね」みたいな話をしてたことがあって。背も高いし(笑)。

―― 今、THE HUNGRY RUGRATの名前が出てきましたが、これは田村さんがいるバンドですよね。

田村 そうです。但野さんと知り合った時は自分が初めて組んだハヤシライスっていうバンドをやってたんですけど、そのバンドでもちょこちょこ対バンしていて。THE HUNGRY RUGRATは今でもやってるんですけど、でも、但野さんと一緒にやってみたいと思ったんです。たぶん、こういう機会ってもうないだろうし。本当はひとつのバンドに集中してやりたいっていう思いはあったんですけど、それでも、今しかないんならやってみたいと思って。

―― それでもやってみたいというほど、但野さんのどんなところに惹かれたんでしょうか?

田村 曲ももちろんかっこいいですけど、言葉……ライブ中に言う言葉がすごい好きで。目の前にいる人の心を動かすっていうか、そういう強い言葉だなと思って、そこに惹かれてましたね。その人とステージに立ったらどんな感じなんだろうと、ずっと思ってました。

―― THE HUNGRY RUGRATは見たことないんですが、どんなバンドですか?

田村 UKロックというか、アークティック・モンキーズとか洋楽に強く影響を受けて、それを日本語でやるっていうスタンスのバンドですね。ダブサイ、ひかさとは全然違うと思います。

―― じゃあ、田村さんの中では差別化されてるんですね。

田村 そうですね。

但野 そういうのってさ、ライブ中とか、バンドによって感覚って違う?

田村 違います。

但野 違うんだ。へー。やったことないからわかんないなと思って。どういうライブをやるバンドかによって、なんかこう、やり方っていうか、立ってる感覚違うのかなって思って。

田村 意識が全然違います。

―― 田村さん自身はどんな音楽に影響を受けてきたんですか?

田村 バンドにはまり始めたのはエルレガーデンですね。初めは日本のロックをずっと聴いていて。高校2年の終わりか3年ぐらいですかね。それで、学校祭に向けてバンドをやろうぜって話になって、ベースをやることになって。それから続けてきてる感じです。

但野 対バンした苫小牧の日の田村はウエノコウジみたいだったんだよ。

テス山本 ああ、なるほどね。

但野 ウエノコウジみたいだなぁと思ったもん。言ったよね、それ確かね。

田村 はい、言ってました。

但野 「ウエノコウジに見えたわー」って。プレシジョンベースだし。背でかいし。ってか、今、話聞きながら思い出したけど、田村とは何回かスタジオに入ったんですよ。1回で決めたわけじゃなくて。ドラムに声かけてたのはオンチャンっていう友達なんだけど、そいつとも、「田村だとは思うけど、何回かスタジオに入ってみよう」って言ってて。それに、やっぱTHE HUNGRY RUGRATをやってるから、どうやっていきたいのかその辺の気持ちも確かめたいしなぁと思って。だから結構、話をしたよね。俺はもう全部、新しく始めるバンド一本に注ぎ込むぞ、みたいな感じだから、もちろんそういうメンバーを求めて探してたし。けど、いろいろ話していって、田村がTHE HUNGRY RUGRATを辞める気もないってわかった上で、それでも田村とやってみたいってなって、正式にお願いしましたね。やりましょうと。

―― そのオンチャンというドラムの方は?

但野 ちょっといろいろと事情があり……。初ライブは決まってたから、はて困ったなって。

―― 何月ぐらいの時点で?

但野 ええと……(スマホを確認しながら)2017年10月8日ですね。

―― で、テスさんにサポートを頼もうと。

但野 そうそう。田村とふたりでいろいろ考えて、正式に探すとなると時間もかかりそうだし、とにかく12月の初ライブはもう決まってたことだから。今はサポートを頼んで、ライブに向けて仕上げていくことが先決だなと思って。それからちゃんと正式ドラムを探してこうか、と。

―― なるほど。

但野 で、最初にテスに連絡したんだよね。

テス うん。

但野 ドラムどうしようって思った時に、テスが他のバンドで叩いてる動画を見てて、いいなと思ったんですよね。ダブサイは3ピースだから、やっぱ真ん中にダサいやつがいたらダメだと思って。テス、雰囲気がおしゃれじゃないっすか。ロン毛だし。

―― 長身とロン毛。

但野 そう。完璧ですよね。あと叩き方もすごいし。いろんな人の動画を見たけど、やっぱりテスが一番かっこよかった。まあ、正直、テクニック的な細かいところは一緒にやってみないことには、合うかどうかはわからないから、とりあえず見た目と叩き方がかっこいいやつがいいなと思って。で、びっくりドンキーで3人で会ったんだよね。

テス メッセージ来た時、めちゃくちゃびっくりしました。僕、但野さんと話したことなかったんで。

但野 うん、たぶんなかったと思う。

テス もちろん、ひかさのライブも何回も見てたし、知ってはいたんですけど。まさかねって。「え!? 但野さんからメッセージ来た!」みたいな。その当時はヘヤアズっていうバンドを組んでたんで、サポートでとりあえずやってくださいっていう話だったから、僕もやりたいです、って感じで。

但野 ヘヤアズの他にも、テスはなんかめちゃくちゃサポートしてるイメージだったんですよ。いろんなバンドのサポート屋さん、みたいな。

テス うん。すごいやってましたね。割と何でもチャレンジするタイプっすね。雑食というか、とりあえずやってみたいっていう。

但野 だから頼みやすかったんですよね。条件さえ合えばやってくれんじゃねぇかなと思って。

―― 甘えてみよう、みたいな。

但野 そうそうそう。実際スタジオに入ってみて、よかったんですよね。違和感もなかったし。もともといたドラマーはいろんなものを詰め込むタイプというか、そいつはそういうのが好きだったんだけど、テスは自分の曲を崩さないというか。ストレートに解釈してくれてるなぁって。

田村 そう思いますね。違和感がなかった、全然。

但野 やりやすかったよね?

田村 本当にやりやすかった。

但野 いろんなサポートやってるだけあんな、みたいな。

テス 僕は曲を覚えるのが精一杯で、頑張って叩いてた感じですね。

但野 すごく丁寧な感じで、のっかりやすいドラムでしたね。

―― じゃあ、サポートとしてはすぐ決まったんですね。

但野 他には一切声かけんかったですね。第一希望がテスでした。なんか、他は髪短いやつしかいなかったんだよな。

テス (笑)。

―― そこ重要なんですね(笑)。

但野 それに、うまかったとしても、叩き方もかっこいいのがいいなと思ってて。叩き方が重要だった。

―― 新しく組むバンドだから、余計にこだわりが強かったんですね。

但野 うん。そうですね、妥協したくなかったっすね。あ、でも髪切っても別にいいんだからね。切ったってかまわないからね。うん。

テス はい(笑)。

但野 俺だって急に坊主にするかもしんないしさ。

―― テスさんがサポートに決まって、初ワンマンまではどういう気持ちで過ごしていましたか?

テス 僕、もう必死でしたね。

田村 必死だった。

テス ワンマンに向けて頑張るっきゃないっていう。なんか……ワンマン失敗させるわけにもいかんし。

―― 今振り返ると、ひかさを解散してメンバー探しをして、という日々は但野さんにとってはどんな日々でしたか?

但野 んー……なんか、ひかさの時にずっとハイペースでライブをやり続けてて、例えばステージに立って抱く感情は結構、美しい感情が多くて。ステージに立たなかったら、本来、自分にはそうそう美しい感情ってなかったんだなと改めて思った。お客さんに対して「本当にありがとう」って思ったりとか。……なんでしょうね。感じることがすごいあるんですよ、ライブに立つと。例えばツアーなんかだとしたら、次の会場に移動してる車の中とかで、すごく穏やかな気持ちになるんですよね。感謝の気持ちというか、自分が作った音楽を聴いてくれる人がいることがすごく嬉しかったり。まあ、しょうもないライブをした夜は、死にたいぐらい……大げさではなくて、死にたいぐらいの気持ちになるし、自分を責める。だけど出し切って気持ちいいライブができた日は、すごく自分が綺麗な人間になったような。なんか、嘘くさくなるぐらい美しいんですよね。でも、ステージに立たなかったこの期間は、美しい感情が全部なくなったんですよ。

―― そうなんですか。

但野 そう。びっくりしましたね、ツイッターとかで「今日のライブ本当にありがとう」って書いてる人がいたら、「全部嘘だろ、こいつら」みたいな。自分も思ってたくせに、そういう美しい感情が一切残ってないんすよ。もう、どんどん性格悪くなっていく。ステージに立ってなかったら、俺はこんなんなんだ、と思って。よく考えたら、もともと俺は荒んでる負のパワーを歌にして、叩きつけてて。「誰も聴いてくれてない」ってことを俺のアイデンティティにして全部ぶつけてたんですよ。でもそのうちちょっとずつ愛されはじめて。聴いてくれる人が増えはじめて。お客さんが来て、まあワンマンとかもできるようになりました。そしたら、「誰も聴いてくれないじゃねーか」ってぶつけるエネルギーがなくなって、でも今度は新しいエネルギーで歌になっていた。それがまたライブもできなかった期間は変なひねくれ方をして、再び、みたいな感じでした。そしたらなんかね、今すごい美しい感情のやり場に、結構困っているところがありますね。

―― 活動が始まったことで?

但野 そう。まあ、まだライブの本数は少ないけど、前に一回、自分のことを俯瞰しちゃってるから。なんか、すんなり美しい感情になってたまるかってのが……あるんですよね。もちろん、ライブ終わった後にお客さんの顔を見るたびに、「ありがとうございます」って本当に思うんですけど。最近なんか素直にツイッターとかに出せないんだよな、そういうの。

―― 負の感情は残ったままということなんですね?

但野 そうですね。今は残していきたいなと思ってます。ひかさが終わってDOUBLE SIZE BEDROOMのファーストライブが始まるまでの、あん時の俺を理解しておきたい、というか。あの時の俺、結構重要じゃないかなって思って。もともとの自分だし。前にステージに立って、ああいう輝き方ができてたのは、もしかしたらお客さんたちの鏡だったんじゃないかな、みたいに思いますね。写してただけなんじゃないかな、俺はって。だから俺は自分の本質みたいなものは、絶対残しとこうと思ってます。極力。

―― お客さんたちが浄化してくれてたと感じるんですね。

但野 そう。お客さんが美しかったんだと思う。純粋だって俺に言ってる人は、その人が純粋だったんだなって思いますし。でも、やっぱりライブやり始めてからの方が、気持ちと体は動けてますね。なんか、12月のワンマンまでに作っていた曲は、1本ライブやってみたらほとんど使えない曲だと思った。

テス うん。ワンマンの曲、今はほとんどやってないですね。

但野 音源にしたやつは残ってるけど。なんか、一番重要なことって、今の自分に似合うことなんだなぁっていうのはワンマン1本やって気づきましたね。改めて。

―― ライブをやったことで、初めてダブサイというバンドが自分でもわかった。

但野 うん。完全にそう。

―― で、数回のライブを経て、テスさんが正式メンバーに。

テス 最初はヘヤアズをやりながらダブサイのサポートをやってたんですけど、ヘヤアズが解散しちゃって。僕、死ぬほど解散を経験してきてるんですけど、またか……って結構、めいってて。

但野 落ち込んでたね、すごい。自分のせいで解散したんじゃねぇかぐらいの顔してたから。そんなわけねぇじゃんって思ったけど。

テス 頑張ろうと思ってたバンドが解散しちゃって、但野さんがまあ、「入りたくなったら言ってよ」みたいな感じで言ってくれてたのもあったんですけど。

―― そうなんですね。

但野 ヘヤアズ解散するって聞いて、「いつでもバンドやりたくなったら言ってよ」って。でも、その時は「今はちょっと……」みたいな感じだったよね。

テス さんざん解散して、すぐ正規メンバーになるって気持ちにはなれなかったんで。……恐怖心というか「また解散しちゃったらどうしよう」とか。なんかよくわかんないけど、自分のせいだってずっと思ってたんで。でも、一番最初に東京にライブに行った時に自分の中で何かが変わったんです。

但野 1月のWWW Xの時だね。

テス うん。一緒に行動したりとか、宿でマリオやったりとか。やっぱりバンドって、音楽の好みどうこうもあると思うんですけど、絶対的に人の相性っていうか人間性だと思うんですよね、自分は。それで、初めて東京に行ってライブをして、道中わいわいして。「あ、楽しいな」「メンバーになりたいな」って思ったんです。

但野 心地よかったもんね、よかったよ。

テス 長くやってたら、当然ケンカすることもあるんでしょうけど、でも気持ちが大事で。

―― いろいろ解散を経験したからこそ、余計にバンドに対する思いが強まったのかもしれないですね。

但野 うん。それはわかるな。

―― 但野さんの方からも「いつでもいいよ」と言ってたということは、最初はサポートのつもりで声をかけてたけど、どこかでテスさんをメンバーに、という思いが固まってたんですね。

但野 そうですね。というか、テスはもともとサポートをたくさんやってたから、正式にバンドをやるつもりはない人なのかなってずっと思ってたんですよ。で、俺も、いざワンマンライブが終わっても、テスのスケジュールが結構空いてたから、とくに正式ドラム探しもしてなくて。例えばテスが正式メンバーにならなかったとしても、このままでいいんじゃないかなって思ってた。バンドに対する熱量とか、音楽を作っていくことに対して手を抜かないってことはもう十分わかってたし。

田村 うん。

但野 それに、サポートって言っても最初から3人組だぞっていう気持ちしかなかったんですよね。

―― でも、見事に頭文字Tがそろいましたね。

田村 そうなんですよね。

但野 そろってから気づいた。Tじゃん!て(笑)。

―― 導かれてるというか

但野 東京のライブの時、本当に楽しかったんですよ。俺、はじめはなんか知らんけど、ひかさの5人じゃないことにめちゃめちゃ心細さを感じてたんですよね、飛行機に乗ってて。でも東京に着いて、マネージャーが空港まで車で迎えに来てくれて、カツ丼も食わせてくれて。で、宿に着いてからの時間がまた楽しかった。3人っていいなって、改めて思いましたね。3人ていう最小限、ミニマムな形で、何ていうんだろう……常に全員が全員、目が届く範囲というか。

テス いいっすよね。

但野 3人で1チームでしかないというか。どこかとどこかで分かれようがないというか。僕にはすごい、もしかしたら合ってるスタイルなのかなと感じましたね。行く時に感じたさびしさみたいなのが、東京に着いたら何もなかった。3人一緒に過ごして、全力でライブをやって、その後もずっと楽しかった。距離感がつかめたというか。

テス あとマリオ。

田村 マリオはでかいね。あれはよかった、うん。

―― マリオ?

但野 宿にファミコンがあったんですよね。マンションの1部屋を借りる、みたいなところだったんですけど、ゲームがあって。ゲームがあったらやるっしょ。

テス そうそうそう。

但野 やるっつったらマリオっしょ。で、1面から8面まであるんですけど、いきなりラストの8面に行く方法があって。その8面を全クリしようって。俺、3人でひとつのことやるっていうのが好きなんですよ。ジンクス、げんかつぎが好きだから。みんなで同じものを食うとかも好きだし。今も3人、同じものを飲んでるじゃないですか。これでね、グルーヴ高まってるんすよ(笑)。同じ血が流れてる、みたいな。で、3人でマリオをクリアしたら明日のライブは確実に成功するぞって。気持ちをひとつにする作業みたいなもので。でも田村が超絶マリオ下手で。やったことなかったんすよね。

田村 うん。マリオルーキー(笑)。

但野 だから足引っ張っぱりまくって(笑)。でもまあ、そういうのもアリなんですよね。

―― クリアできたんですか(笑)?

但野 その日は「とりあえずこの面だけクリアしよう」っていうところまでクリアして。で、ライブに臨んで。「よっし、マリオのおかげでよかったね!」ってまた宿に戻ってきて、全クリしました(笑)。

テス クッパ倒したもんね。

但野 クッパ倒した。

―― それで結束も固まったと。

田村 はい。

テス あれ、相当よかったよね。

但野 よかったね。

―― その夜がダブサイのキモに。

但野 語り継がれる日ですね。この3人で過ごしてみて、楽だなと思ったというか。なんか、自分の精神状態がよくない時って不信がっちゃうんですよ。でも3人だとそういうのがなかった。

―― 3人というキーワードが出てきましたが、ひかさを解散した直後の取材では、4人組のバンドを組もうと思ってるという話をしてましたが。

但野 そうっすよね、そうなんですよね。これね、本当、俺次第で。正直に言うと、最初は3人組っていうのは不本意な形だったんですよ。本当はギターが欲しくて。っていうのも、自分はボーカルで、ギターと歌の両方はできないだろうと思ってたから。そんなエネルギーはないというか、自分で両方やるのはいいパフォーマンスはできないと思ってたんすよね。で、実際にもうひとりギターを入れてスタジオに入ったりとかは何回かしたんですよね。テスが入る前なんですけど。ただやっぱ、人間、練習していったらちょっとずつ埋めていけるんですよね、違和感みたいなものって。だいぶ近づいて来てるんですよ。それでちょっとずつ3ピースの楽しさと、やっぱりギター欲しいかな?みたいなやつを乗り越えて、もう今は完全に3ピースの面白さみたいなものを発見できていますね。なんか、醍醐味を味わえてるというか。だから今は3人がいいと思ってます。

―― ダブサイの3ピース、かっこいいですよ。

但野 うん。プラスの音が欲しくなったら、そういうことにもチャレンジしていきたいんだけど、バンドとしては3人組でいいなと。

―― ダブサイを見て、ギタリストとしての但野さんを新しく発見した気持ちになりました。

但野 あの東京初ライブの時に、初めて3ピースに光明が見えたんすよ、僕。本当はあの日が3ピースの最後にしようと思ってた。でもWWW Xで「この感じ……!」って感触があって。

田村 あのライブは本当によかった。

但野 で、テスの正式加入を発表した4月のライブの時、もっと確信できましたね。

―― 3ピースの手応えをつかんだんですね。

但野 そうっすね。

―― 但野くんのエモーショナルさが、より際立っていると思います

但野 それは嬉しいです。

―― 正式に3ピースとなって、いよいよ始まりますね。

テス なんかすごく嬉しいですね。お客さんにとっても、ひとりサポートっていうよりはみんなメンバーっていう方が、気持ちいいと思うし。

―― 会場限定の音源はありましたが、6月23日には新曲「アカルイミライ」が配信リリースになりましたね。

但野 僕が1番最初にパンクを好きになった時って、何というか……派手なものだったんですよね。あの頃の僕にとって。例えばHi-STANDARDとか、圧倒的なスピード感と、あとはもうギターのリフがかっこよくて。歪んでザクザクしてて。それが僕の感じた初期衝動。ロックバンドの、バーン!っていう衝撃だったんですよ。それから自分でハイスタのコピーバンドを始めて、自分のバンドを組んで、今に至るまでの間に……何というか、いろいろ聴いていくうちに、時には意識的にいい音楽だと思おうとしたこともたくさんあったと思うんすよね。そういうことが正直、僕あったんですよ。そう思ってるうちに、本当にいいなって思うこともあったし。今振り返ると「あの時の俺、本当にかっこいいと思ってたのかな?」って思うこともたぶんたくさんあって。でも、本当に自分がかっこいいと思ってたものの原点に帰った時に、やっぱバーン!とエッジの鋭いギターがあって、スピード感があって、グワッてかっこいいもの。「アカルイミライ」はそういう曲にしました。高校生の頃に受けた初期衝動、僕に教えてくれたサウンドを作れたと思いますね。今になって、そういう曲を作れた。で、歌詞とかメッセージに関してだけは、今の自分が書けるものを日本語で書く必要があるなと思って。あの頃の自分が聴いてたものに唯一なかったものがそれ(日本語詞)だったから。

―― なるほど。

但野 うん。僕にとっての初期衝動。一番原点で、音楽をかっこいいと思ったロックの形の曲。それが、今の自分がやるべきことなんじゃないかなって。

―― この曲でダブサイが始まるのは、すごく意味がありますね。

但野 確かにそうですね。うん。しかも3ピースである意味も感じますね。僕が最初に好きになったロックバンドも3人組だった。

―― もちろん3ピースのかっこよさも詰まってるんだけど、例えば「ひかさを超えないと」みたいなこだわりも吹っ切れて、今の自分に向き合えたというか、進めたんじゃないかなと感じました。

但野 そうっすね、まさに。時間が経てば経つほど、呪縛から解かれてく感はあります、すごく。ひかさをやってたのはすごく大切な時間だったし、それは代わりのきかないことなんだけど。でもだんだんと、いい意味で他人事のように感じられるようになってきたって感じですかね。もちろん、「最終少女ひかさは好きだったけど、DOUBLE SIZE BEDROOMは好きじゃない」っていう人もいると思うんですよね。でも全然、知ったこっちゃないっすね。今は他人の目とか意見とかに動かされなくなりました。そういたいという意識もあるし。恐れてないというか。

―― 気にしすぎると動けないですからね。

但野 純粋じゃないっすよね。昔はそれもなんか自分らしさだなって思ってたんだけど。

―― 配信シリーズは3曲あると聞きましたが。

但野 続けていきたいなと思って……。

―― 4月のライブで言っちゃってますからね。

但野 そうです。今の俺たち次第なんで。新曲作んなきゃ。

―― その4月の札幌のライブで、但野さんは「続いてくバンドはまぶしい。死ぬまでバンドやろうぜ」と言ってましたが、おふたりはどんな気持ちで聞いてましたか?

但野 まぶしいよな、続いてるバンドは。それだけですごいことだよ。

田村 うん。まぶしい。そうだねって思った。

テス 続くのも、やっぱすごい大切っていうか。続くためには、お互いの人間関係もそうだしお客さんもそうだし、そういうとこ全部含めてのバンドだと思うんで。そういう意味では確かにまぶしいというか、はかないというか、逆に。いつなくなってもおかしくないなとは、やっぱ思うんすね。うん。なんかそういう感じだった。今思い返してみれば。

―― だからこそまぶしく感じるんですね、きっと。

但野 そうっすね。今、改めて思ったら。まあ、大切に大切に続けていきたいっていう風にはしたくないんですけどね。そうではないんだけど……。なんか、壊れないように壊れないようにってするのもかっこ悪いじゃん?

テス それは中途半端ではありますね。

但野 続けてるっていうことはね、それだけ聴いてもらえるチャンスが増えていくことだなって改めて思うんだよね。今は、DOUBLE SIZE BEDROOMをたくさんの人に聴いてもらいたいし、ライブ観てもらいたい。なんか……ドカッと思いっきり、野球やってる状態がずっと続けばいいなみたいな。大切に大切になくさないように、じゃなくて、思いっきりフルスイングするんだけど、どっかボールが飛んでったらまた見つければいいし、みたいな。そんな感じでやっていきたいなと思ってますね。

テス うん、絶対そう。だって生きてるけど死んでるみたいな状態じゃ、なんかね。

但野 そういう感じで続けていけたらいいなと。

―― では最後に改めて、但野さんの方からメンバー紹介をお願いします。

但野 まあ、ふたりとも当たり前だけど、音楽を作ることに手を抜かない人であり、だからこそすごく信用できる。音楽に対して一生懸命っていうのは、バンドやってる人全員が言えることなんですよ。でも、実際手を抜かずにいいものを作ることに全力を注ぐのは、そうそう、簡単なことではないんですよね。で、僕が今、テスと田村に感じてる印象は、曲単位でいいものを作っていくこともそうだし、DOUBLE SIZE BEDROOMとしていいバンドを作っていくことに手を抜かずに、自分の持ってるものを注いでいくという点で、僕が今までやってきたバンドの中で一番ふたりに強く感じますね。それぞれ別の形ですけど。ひかさの時はスタートの時点で俺が、「俺が俺が」っていう状態だったんですよね。そういう風に始めちゃったから、俺、メンバーに何か言われたことほとんどないんすよ。俺が作っていった作品に関して手直しされたこともない。なんか、そういうコミュニケーションが取れてなかった。こうした方がいいものになるんじゃないかってミーティングもちゃんとしたことがなかったし。それはひかさに限らず、今までやってきたことすべてに関して。で、ちょっとずつ自信がなくなったりもするし。まあ今も別に手直しされてるとかじゃないんだけど、例えばこっちとこっち、どっちがいいかなって迷う時、DOUBLE SIZE BEDROOMではふたりの血も入るんじゃないかなって思ってますね。もの作り、芸術に対して手を抜かないふたりだと僕は思ってます。頼れる感じ。

―― それが3人のバンド感になっているのかもしれませんね。

但野 うん、僕が不信感を抱かないって、たぶんそこっすね。

田村 あんまストレスないよね、音楽を作る上で。

―― では一言ずつメッセージを。

テス 正式加入しました。個人的にも、バンド的にも、やっとここから、ゼロからだと思うんすよ。やったるぞというか。だから、応援してください。

田村 やっぱり、ちゃんと3ピースバンドだって言えるようになったのは大きいですね。配信も、やっと全国の人に3人の音を届けられるのが嬉しいです。これから頑張ります。よろしくお願いします。

但野 1年以内にフルアルバム出します。

テス お!

但野 うん。来年の4月までには絶対。今年度中ですね。今年度中には絶対フルアルバム出します。

田村 フル?

但野 フル……えっと……フルかミニ(笑)。で、ワンマンもやります。東京、札幌、少なくとも確実にその2ヵ所。

テス おお。

但野 そのぐらいだわ、メッセージとして言えることは。よろしくお願いします。

(取材:秋元美乃)
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<STAFF> WEB DONUT VOL.1/2018年7月4日発行/発行・編集・WEB制作=DONUT(秋元美乃/森内淳)/カバーデザイン=山﨑将弘/タイトル=三浦巌/編集協力=芳山香

INFORMATION



DOUBLE SIZE BEDROOM「アカルイミライ」
2018年6月23日(土)配信Release
収録曲:M1. アカルイミライ

LIVE
■7月7日(土)大阪 AtlantiQs
「見放題2018」
公式サイト:http://www.mihoudai.jp
■7月8日(日)神戸 太陽と虎
「見放題後夜祭 フザけ放題2018」
出演:アシュラシンドローム/ベランパレード/DOUBLE SIZE BEDROOM/-KARMA-
■7月22日(日)札幌 Sound Lab mole
「FSR 2018 in summer」
■8月24日(金)札幌 COLONY
「SAPPORO EXPLOSION 0824 -submen ゲンカクアレルギーツアー 2018-」
出演:submen/HELLsy & The Dynamites/DOUBLE SIZE BEDROOM/THE STRAIGHT/TRACHEMIST/DJ:ORANGExxxx
■8月27日(月)下北沢ERA
ワンマンライブ「明るいバンド計画」
前売り:2500円(+1D)
open 19:00 / start 19:30
まずはオリジナルチケットの販売を開始(その他の購入方法は後日)
購入希望者は ticket_dsb@lucky-hell.com に名前と住所を明記し送信を(必ずこのアドレスから受信できるよう設定を)

DOUBLE SIZE BEDROOM公式ツイッター:https://twitter.com/dsbedroom

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Rock is LIVE 5 2018.10.12.fri 下北沢ベースメントバー hotspring/がらくたロボット/錯乱前戦

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