DONUT

ベランパレード
十分にひねくれさせてきた中で歌う<抱きしめたい>という言葉の説得力に関しては、負けないんじゃないかと思いますね
――歌王子あび

宮崎在住のロックバンド、ベランパレードが9月19日にリリースした2ndミニアルバム『スクラップ イン マイ ルーム』は、前作『omoide fight club』から大きな飛躍を遂げた作品となった。話を訊いてみると、彼らの特徴でもあった“きらきらしたポップ”という部分を解放し、自分たちがなるべきロックバンドへと舵を切ることで、今一度ベランパレードというバンドにメンバー全員で向き合ったという。そうして完成した今作はソリッドさを増した分、アッパーなナンバーもメロウなナンバーもより楽曲のもつエモーショナルな音の鳴りにあふれた1枚に。まずはタイトル曲「スクラップ イン マイ ルーム」から聴いてみてほしい。ひねくれながらも真っ直ぐな眼差しを向ける歌王子あび(vo&gt)の歌を、Kota Kamimura(gt&cho)、ゆりえちゃん(ba&cho)、モッコリ(dr&cho)の3人がぶ厚いバンドサウンドで広げて見せる愛すべき景色。ここにはきっと、あなたの宝物も潜んでいる。今作を携えたツアーファイナルは11月17日(土)新宿Marble に登場。祝・東京初ワンマン!

―― 2ndミニアルバム、いい作品ができましたね。

歌王子あび ありがとうございます。お待たせしました。

―― 前作『omoide fight club』の取材では、「実力以上のものではないけど今できる精一杯のことができた、いわば人肌のアルバム」だと話していただきましたが、今作は人肌を越えて作品として沸騰しているアルバムができたのでは、と思いました。

あび そうですね。なんか、沸騰してますね。沸騰してたりめちゃ冷たかったり、温度感のコントラストが強くなったというか、明暗がはっきりしたというか。逆に人肌も際だったかも。いろんな部分が感じられる作品になったかなと思いますね。

―― アルバムが完成するまでの2年は、どんな2年でしたか?

Kota Kamimura 長かったですね。

ゆりえちゃん 長かったね。

―― それはどういう意味で?

Kota バンドとしてのベクトルを以前とは違う方向に向けるっていうことを決めて、それが自分たちにフィットするまでに2年ぐらいかかったんです。今まで向いてた方向をみんな一度に変えるとなると、すぐにはスイッチできない人間なんで、4人とも。それを向かせた上で自分たちになじませるための2年間だったので、結構長く感じましたね。

―― なぜベクトルを変えようと思ったんですか?

Kota 前は4人とも“ポップにある”っていうところで考えてたんですけど、気づいたら自分たち自身がもっとソリッドな方に近くなったというか。ドーン、バキッ!みたいな。

あび 僕らのライブ、初期の頃も見てくださってると思うんですけど、曲はポップなのにパフォーマンスが異常に激しかったりして、ちょっとギャップがあったと思うんですよ。それが良さでもあったのかなとは思うんですけど、ライブで出すエモーショナルさというか、感情の振れ幅を、曲とかサウンド面でもちゃんと閉じ込めてパッキングしたいと思って。それはバンド全体のニュアンスもそうで、例えばステージで付けていたリボンも俺が解き放って。なんていうか、やっぱりロックバンドのスタンダードという部分を見せようというか。「かわいい感じだよね、ベランパレードって」って思ってた人も結構いたと思うんですけど。

―― きらきらポップ、みたいな。

あび そうそう。きらきらポップみたいな。そういうことじゃなくて、もっと「俺ら、ロックができるぜ」っていうところを見せてやろうよ、と。

―― そう思ったのには、何かきっかけがあったんですか?

あび きっかけというよりは、似合わなくなってきたんです。服に例えると、前は気に入って着てたのに、なんかしっくり来ないなっていうことあるじゃないですか。そういう感覚に近いかもしれないです。で、それがメンバーの中にも少しずつ生まれて話し合って。路線変更とかではないんですけど。もっと僕らがなるべきロックバンドの姿があるんじゃないかっていう模索の期間だったと思いますね。ケンカもよくしたし。

―― それは全員が一致するベクトルの方向性でしたか?

ゆりえ 話し合った上で、こうしようねっていうのを決めて。

―― 今のままポップがいいよ、という人はいなかった?

ゆりえ また別のところに行こうとしてたな、とかはたぶんあったんだと思います。きらきらポップのままでいいと思ってるわけではないけど、この方がいいんじゃないか、あの方がいいんじゃないか、って。そのときは、ですけど。

モッコリ 最初は明確なゴールみたいなものが全然見えてなくて。各々考える、きらきらポップじゃない方向っていうのがたぶんあったので、そこでぶつかり合ってケンカすることもありましたね。でも徐々にみんな見えてるものが近づいて来て。

―― 少し前に久しぶりにライブを見せてもらったときに、音の厚みに驚いたことがあって。それはみんなの向くべき方向が合致して来たときだったのかもしれませんね。

あび そうですね。やっぱりサウンド面もかなり変わったとは思います。

―― その辺の手応えはありますか?

あび ありますね。ロックバンドって痛快というか、見ていて気持ちがいいというか。なんか、もじもじしててもしょうがないじゃないですか、ロックバンドがステージに上がる以上。僕自身が普段、もじもじしてるんだから、ステージではもっとやってやった方がいいんじゃないか、みたいな気持ちが生まれてきて。それをメンバーがサウンドで直接的にサポートしてくれることによって、僕もライブ中の心の動き方とかが変わったし、もっと言いたいことが言えるようになったり、大きい声が出せるようになったり。今、めっちゃライブが楽しいなと思いますね。

―― それは今作からも伝わります。まず、タイトル曲「スクラップ イン マイ ルーム」が大名曲で、これからのベランパレードを引っ張っていく曲になりそうですね。

あび いやぁ、嬉しいですね。

―― 今回のミニアルバムを方向付ける大切な曲だと思いますが、これはいつ頃にできたんですか?

あび 曲自体を僕が作ったのは……いつだったかな。

ゆりえ 去年の末ぐらい?

―― ずいぶん溜めましたね。

あび 溜めたんですよ。早くライブでやりたかったけど、びっくりさせたいっていうか、発表するまで取っておこうぜっていう。でも、実は完成するまでも時間がかかっていて。大方はできてたんですけど、大サビで<抱きしめたい>と連呼するフレーズがあるんですけど、そこだけできてなかったんです。もともと、僕が最初に作った時点であのパートは存在しなくて。でも、もっとよくなるんじゃね?ってみんなで話して。なんか、屈折した歌詞がずっと続いている中で、希望というか、光が差す瞬間みたいなものがあることによって、絶対締まるだろうと。悩みながら、そこの<抱きしめたい>のところだけにめちゃくちゃ時間かかりましたね。<抱きしめたい>って書くだけなんですけど。<抱きしめたい>ってワード自体は簡単なワードじゃないですか。でも簡単だからこそ書くのが難しいというか、「<抱きしめたい>って歌っていいのか?」っていう。「<抱きしめたい>を<抱きしめたい>のまま<抱きしめたい>でいいのか?」っていう葛藤で。

―― で、あるとき吹っ切れたんですね。

あび そうです、そうです。そこで曲として形になった。

―― この曲ができていく過程と、バンドがベクトルを変えていくのはリンクしている感じでしたか?

あび あ! そうかもしれない。

Kota それは繋がってるような気がします。

あび みんなで悩みながら作った曲なので、メンバー全員の頭の中にずっとあったと思うんですよ、この曲が。で、アレンジも結構鋭角な感じになってるんで、これができあがったときに、みんなの見てる方向というかビジョンみたいなものが、ちょっとくっきりしてきたかなとは感じました。確かに。

―― じゃあ、2年というのはしかるべくしてかかった時間だったんですね。

あび そう。お待たせしましたって感じなんですけど、最速でしたとしか言えない感じですね。

―― 何か思い描いていた作品像みたいなものはあったんですか?

あび よくライブハウスの店長さんとかからも「『ナイトウォーリー』を越えなきゃね」みたいなことを言われて「ああ、そうっすね。わかってるわ」っていう感じだったんですけど(苦笑)。今回はもう全部、リード曲のつもりで書いたんですよ。そうじゃないといけないと思って。リード曲って……なんかイメージがあるじゃないですか。速かったりとか、キャッチーだったりとか。

―― 届きやすいとか。

あび そうそう。届きやすいとか、わかりやすいとか。わりとずっと屈折した表現ばっかりしてきた分、そこが僕が今作を作る上で乗り越えないといけない壁だったというか。「これは『ナイトウォーリー』越えたね」って思わせられる1曲ができるまではアルバム出せねぇと思って作ってたんで。結構、苦しかった思い出が多い曲にはなってるんですけど、出せたことによってチャラ以上ですね。

―― 自分の中でハードルを上げていたんですね。今回はKotaさんも一緒に曲作りをしたそうですが、何か発見とか変化はありましたか?

あび 最後の「パン」という曲をKotaくんと一緒に作ったんですけど、その原型となるアイデアを二人で作ろうぜって。僕の中にない感覚とか癖とか、自分の中にない感じにメロディを付けたり歌詞を乗せたりするのは、めちゃくちゃ新鮮だったんですよ。楽しかったし、気持ちがよかったですね、作っていて。

Kota いつもはあびが基本、弾き語りで原型を持ってきて、それをスタジオでみんなで解釈してアレンジを考えて構成を考えて、っていうやり方が主だったんですけど。今回はまず僕の自宅にあびが来て、一緒に進行を考えて、だいたいメロディラインができたら一旦パソコンに打ち込んで。メロディがどうなってるとかそういう作業をしたことで、ある程度客観的に見れたところがあります。

あび うん。最終的に歌メロは最初の段階とは全然違うものになったんですけど、解釈として、そもそも僕から出た曲というよりはメンバーと共有した上で作ったのが初めてでしたね。

Kota たぶん、今までのベランパレードの曲の中では聴感上もちょっと違うのかなって思います。もちろん他の曲も全部いいんですけど、1回聴き比べると「ベランパレードってこういう感じだったっけ?」っていう風に思ってくれる楽しみが、この「パン」にはあるのかなと思いますね。そういう意味じゃ今回、今まではしてこなかったこともできるようになったかと。

―― 客観的にみたり、今までなかったことをしてみようと思ったのはなぜ?

Kota 僕、前やってたバンドで、友達と一緒にパソコンでそういう作業をすることが多かったんです。その頃はロックバンドじゃないんですけど。でも、ベランパレードでやっても別に悪いことではないと思うし、むしろいい可能性、いい方向がまた見つかるんじゃないかなって。結構慣れない作業だったけど。

あび そうですね。それに1枚目のときはKotaくんが入ってすぐに出したアルバムだったから、Kotaくんが入るまでの雰囲気をKotaくんが壊さないようにギターを付けてくれた感じだったんです。そこから今作は、Kotaくんが完全にメンバーとして一緒に音楽を作り始めてからの曲たちなんで、メンバーが変わった分、新しい可能性を探りたいというのはあった。そしたら、よかったじゃん、って。

―― あびさんの作る「なんじゃこりゃ」っていう世界観を、メンバーのみなさんはどうやって共有しているんでしょう?

ゆりえ なんじゃこりゃ、みたいな曲を持ってきたことはあまりなくて、歌詞とかわからないところは全部突っ込みますね。「これ、こうした方がいいんじゃない?」とか「わかりづらいかも」とかは言います。

モッコリ 曲ができたときに歌詞をみんなに共有してくれるんですよ。で、その歌詞を見て、みんなわかんないところがあったら「これどういう意味?」とか「これこっちの方がいいんじゃない?」「わざと言ってんの?」って伝えるから、あびの世界観みたいなものは、そこで共有できてるんだと思いますね。

あび 歌詞は僕が一人で考えてて、歌詞だけは何か言われても、そのときは「は?」ってなっちゃうんですよ。なるんですけど、でもやっぱり客観的な目で見てわからない、グッと来ないっていうのは事実なんで、そこでちょっと「ちっ」とか言いながらも、何か言われたら書き直すんです。「わかってねぇな」とか言いながら(笑)。けど、昔は僕、それはできてなかったと思うんですよ。自分が作ったものを守るというか、触られたくない気持ちがめちゃくちゃ強かったから。けど、今はそういうことも楽しんでできるようになった。「書き直すよ、おらおら」って。「もっとよくなっただろ?」って(笑)。どんどん言ってくれ、みたいな感じになってますね、今は。

―― それはバンド内で大きい変化ですよね。だからすごく楽曲がたくましくなったし、楽曲が独りよがりじゃなくなってるという。もっと普遍的な意味でのポピュラーミュージックみたいなところに、より近づいてる気がしますね。

あび ああ、嬉しい。でも、スタンス的にはオルタナティブでありたいなと、1枚目を出した後から考えるようになったんですよね。母親に今回のアルバムを聴かせたときに、古いとか懐かしいって感じでもないし、新しい感じでもなかったって言われて「それじゃん!」って。オルタナティブってなんか粋ですよね。音楽のジャンルを指すというより、気持ちの問題でもあるし……まあ、全部そうなのかもしれないですけど、でもすごくしっくり来た。オルタナって言いてぇみたいな。なんか、オルタナティブって呼ばれるんだったら嬉しいなっていうところは若干ありますね。

―― ケンカもあったけれど、同じ方向を向けて良かったですね。

ゆりえ まあ、前向きなケンカというか、意見交換会と言いますかね。そういった感じのことをしましたね。

―― そこで言い合えるか言い合えないかで、バンドが進めるか進めないかもあると思うし。

あび そうですね。めちゃよかったと思います。ちょっと熱くなって泣いちゃうみたいなこともあったんですけど……あ、エピソード出したら恥ずかしくなっちゃった(笑)。

―― そういう段階に入ったんですね、この2年で。

あび そうだと思います。なんかバンドらしくなったかなって思いますね。

―― そのバンド感がすごく出たアルバムというか、腹の括り方も違うというか。

あび それはありますね。

Kota 音もやばいっすよね。今までは綺麗な音というか、ギターで言えば、綺麗なオーバードライブとか綺麗な歪みみたいなのも個人としては大事にしてきたんですけど。今作の1曲目「スクラップ イン マイ ルーム」とかはファズを使っていて、しかも結構古いロケットファズっていう専門的なやつで。まあ、ひどい音がするんですよ。それをスタジオでフェンダーのアンプをフルテンで、エフェクターもフルテンで、もう普通じゃ聴けないくらいの録音環境で録って。ぐしゃってつぶれたような、いい音が録れて。それをはめてあの曲ができたんで、やったるぜっていう感じはかなりあるとは感じます。音色的にも。

―― 他にもこだわったところを教えてもらえますか?

あび ベースの音もめちゃくちゃ変わったよね。

Kota うん、すごくいいよね。

―― ゆりえちゃんはコーラスもめちゃめちゃいいですね。それがバンドの特徴の一つにもなったような。

ゆりえ ちょっと歌のパートが増えたというか、ガチで歌ったので。

あび とくに「パン」とか、ゆりえちゃんがサビの主メロをガンガン歌うんで。

―― そういう部分も含めて、バンドの結束力というか構造が、もう1枚目とは違いますよね。

ゆりえ そうかもしれないですね。

―― レベル20から40へ一気にジャンプアップしたというか。安定するじゃないですか、レベル40までなると。

あび そうですね。結構勝てるようになって来ますもんね(笑)。

―― そういうタフさを感じましたね。もちろん、1枚目のときはこのときで、レベル100ぐらいだったけれど。

あび ある意味、レベル100にして次の島に行ったみたいな感じですかね(笑)。

Kota ネクストステージ(笑)。

―― でも、1枚目から2枚目への飛躍がすごい。

ゆりえ でも、2年も経ってるしね。

―― 歌詞についても聞きたいんですけど、あびさんは自分を美化しすぎないし、その代わり他人も美化しすぎない。そういうところがすごく信頼できるし、ベランパレードが他のバンドと違うところだなと感じていて。

あび ああ、そうかもしれないです。

―― 例えば、普通は「君は大丈夫だよ」というところを、あびさんの歌に出てくる“君”は足りないところがあるし、変な歌を作るし。

あび そうですね、うんうん。

―― そういうところにとてもグッときます。

あび ああ、嬉しい。

―― それに、聴いていると“君”はもしかしてあびさん自身なのかな、とか、でも、リスナーはそれぞれ自分だと思うかもしれないし。君であって、自分であって、あびさんであって、みたいな。そうやって聴くと、またいろんな世界が感じられて、これはあびさんにしか書けない歌詞だな、と。

あび いやぁ、嬉しいな。そうですね。僕、歌詞を褒められるのが一番嬉しいんですよね。やっぱり、めちゃくちゃ歌詞を聴くんですよ。人のバンドとか演奏とかを見てて。で、予想するんですよ。1小節歌った後に、次何が来るんだろう?って。

―― 人の歌で?

あび そう。なんか、自然に予想するんですよ。で、次に僕が予想したやつが来たら、もう聴けなくなるんですよ。「ああ、予想する歌詞を書くのか……」って思ってしまって。僕だったらこう書こうじゃなくて、一般的な感覚でどういう歌詞が次に来るかなって思いながら聴いて、がっかりしちゃうんですよね。で、自分も美化しすぎないし他人も美化しすぎないっていう感覚って、信頼したいじゃないですか。好きな歌は信じたい。で、はじめは自分の歌も信用してないんですよね、たぶん基本的に。例えば歌詞を書こうと思ってノートを開いて書き始めると、「なんてクソつまらん男だ」ってなるんですよ。「こんなことしか書けないのか」って。そこからスタートするんです。

―― なるほど。

あび だからちゃんと曲になったものは、納得いった状態というか、これなら信頼できるっていう状態になったものなので。バンドマンの人、いろんなタイプの人がいると思うんですけど、僕は基本的に、書いて書いて「うわっ、僕ダメだー。こんなこと書いてるぐらいじゃダメだよー」って、そこから歌詞作りがスタートする感じ。だからいじわるになっちゃうんですよね、内容が。例えば「好きだよ」っていうフレーズを使うときに「君のことが好きだよ」とは言えなくて。けど、言いたいじゃないですか。好きだから好きだよって言いたい。けど「君のこと好きだよ」とは書き切れず、<悪口を言ってる顔が好きだよ>ってなっちゃうんです。これは3曲目の「ラブレターフロム」にあるフレーズですけど。もし「あびくんにしか書けない曲」って言ってもらえるんだったら、そういうところなのかな。好きだと言い切れないのは、そこがたぶん僕の弱さでもあるんですけど、味になってるのかなぁとは思いますね。

―― だからこそ、1曲目の<抱きしめたい>というフレーズにはやられました。

あび 本当にそうなんですよ。ひねくれてるけど、やっぱり眼差しはまっすぐでありたいみたいなところがあって。目では嘘つけないよなって思うし。十分にひねくれさせてきた中で歌う<抱きしめたい>という言葉の説得力に関しては、負けないんじゃないかと思いますね。

―― そう思いますね。巷にあふれる「愛してる」とか「抱きしめたい」とは比にならないグッとくる感じが。

あび そうですね。半泣き、みたいな感じなんですよ。<抱きしめたい(半泣)>みたいな。笑って言うんじゃなくて。言ってないんじゃなくて、言えない。けどもう、それでいいなって思っています。

―― すごくいいと思います。他の曲も聴きどころを紹介してもらえますか?

あび 全部そうなんですけど、とくに「BOYS」は歌詞をじっくり読みながら聴いて欲しい曲ですね。モテないけど強い気持ちがあるが故に、人にめっちゃ迷惑をかけてしまうような、好きな人に間違った愛情の注ぎ方をしてしまうような曲。そういう、最低で気持ち悪いところを、一番綺麗な形で肯定できたのが「BOYS」かなと思うんですね。サウンドも含めて。

Kota うん。そうだね。

あび アレンジとか細かいところもね。「モテないけど、俺はそれでいいんだ!」とかじゃなくて、しっかり、しっとりとモテないことを考えた、みたいな曲になってる気がします(笑)。

―― そこの境地に達したというのは、あびさんなりのポップソングの着地点ですよね。ファイトソングでもないし、メンヘラ的なメッセージでもない。

あび ないないない、ないんですよ。

―― そこで、どうポップに着地させるかをすごく考えてるから、それが今のベランパレードになってる感じはしますよね。

ゆりえ 最高ですね。嬉しいな。

あび なんか、強い感情があるからバンドもするし、人間て生きて行くと思うんですけど。でも誰しもそういう感情ってあるから。極端な言葉を使うことによって、ものすごく強い気持ちって、強い言葉で台無しになるときもあると思うんですよね。それがすごく嫌で。だから、なんてことない言葉を使って、強い気持ちを表現することに全力を注いでますね、歌詞に関しては。

―― それが言葉だけじゃなくて、周りのサウンドもそこに集約して爆発してるというか。

あび なんか、みんなが汲み取ってくれてるのを、めちゃ感じてます。

―― 「スクラップ イン マイ ルーム」というタイトルは、“イン マイ ヘッド”でもいいかもしれないですね。

あび うん。“イン マイ ハート”でもいい。

―― あらためてタイトルに込めた気持ちを、あびさんの言葉で聞かせてもらえますか。

あび 歌の基本というか、人が美しく生きるための基本って“わびさび”だと思うんです。本来価値のないようなものに価値を見いだす力って、人間特有のものというか。それを大事にして、例えば、汚いものとか全然価値のないものが、こういう風に光るよっていうところを見せたいというのが根本にあるんですよね。それを“スクラップ イン マイ ルーム”という言葉で描きました。それが一番大事なことだなと思うんですよね。ロックンロールを和訳すると“わびさび”でもいいぐらいだと思うんですよ、僕は。

―― なるほど! それはいいですね。あと今回は、アー写とMVの撮影をあびさんの弟さんが担当されたとか。

あび そうです。ポンタっていうんです。普通に会社員をしているんですけど、変わり者なんですよね。会話とかもあまりしないし物静かなんですけど、なんか爆発しそうというか。何かを蓄えて生きてる感じ。僕にとっては一緒に過ごしてきた家族なんで、僕のいい顔を撮ってくれそうだと思って、お願いしました。嬉しかったですよね、家族に撮られるって。……恥ずかしいですけど(笑)。メンバーとも仲良くなって、一生懸命やってくれました。

Kota めっちゃテキパキやってくれましたね。

あび カメラマンとして何かをしてるわけでもないので、「僕なんかでいいのかな」みたいなことは言ってたんですけど、その分、ものすごい必死にやってくれたんで、気持ちがこもってる感じになりましたね。

―― ジャケットもこれじゃなきゃダメだって感じですもんね。

あび 本当に、バチッとはまった感じがします。ジャケットは、僕が10代の頃からめちゃくちゃ読んでた漫画家の先生、古泉智浩さんに描いていただいて。なんかもう、モテない男を滑稽に、かつ切なく描く天才なんですよ。僕、この漫画でずっと自分を映し続けてきたんです。それで、『スクラップ イン マイ ルーム』っていうアルバムになった時点で、描いて欲しいと思ってお願いしたら快く描いていただけて。本当に嬉しいですね。

―― 今回のアルバムに自信があったからこそ、頼めたのでは?

あび それはそうだと思います。自分が憧れてた世界観みたいなのを自分が描けて、ジャケットもそこではまったっていうのが最高ですね。

―― ツアーでは、ついに東京初ワンマンもあります。

あび 嬉しいなあ。やっぱりワンマンライブって憧れというか、絶対バンドとして通らないといけない場所なんで。それを自分の住んでいない町でやるのって、ロック少年の夢だと思うんですよね。ギターしょってライブハウスに来て、タバコの匂いとかお酒の匂いとかして、かわいい女の子がいっぱいいて。大槻ケンヂの小説じゃないですけど、タバコを吸いながら知らない町の空を見て「俺はバンドでこの町に来たんだ」みたいなことをしみじみと感じるのって、バンドの夢だと思うんです。ひとつの到着点ですよね、ワンマンライブって。知らない町で自分たちの音楽が届いて、僕らのことだけを観に来る人たち。夢がありますね、うん。

―― そうですね。前は“宮崎の下北系”みたいな、わかるようなわからないような冠がついている時期もありましたが、今はもう、堂々と“宮崎のベランパレード”。

あび ありがとうございます(笑)。

―― 7曲入りでミニアルバムと言ってしまうのがもったないぐらいです。フルでもよかったんじゃないかっていう。

あび そうなんですよね。じゃあ、僕らがフルアルバム出すときは「フル」という言葉でも足りないくらいのアルバムを、フルアルバムとして出さないと(笑)。「グレイテストフルアルバム」みたいな(笑)。「グレイテストフルアルバム発売!」。超えていくのがロックバンドなんで。

―― これからへの期待がさらに高まりますね。

ゆりえ 頑張ります。

あび そうですね。期待していただきたいと思います。頑張ろう。

(取材・文/秋元美乃・森内淳)
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<STAFF> WEB DONUT 4/2018年11月1日発行/発行・編集・WEB制作=DONUT(秋元美乃/森内淳)/カバーデザイン=山﨑将弘/タイトル=三浦巌/編集協力=芳山香

INFORMATION



ベランパレード 『スクラップ イン マイ ルーム』
2018年9月19日Release
¥1,944(tax in)
収録曲: 1. スクラップ イン マイ ルーム 2. アイスクリーム 3. ラブレターフロム 4. わたしを海につれてって 5. 風邪のビリア 6. BOYS 7. パン

LIVE INFORMATION >>http://www.veranparade.com/schedule/

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